マレさんの休日2

北国のアウトドアー&インドアー

三度目はR75ということで

2021年03月11日 | 読書

なかなか面白い設定です。

半村良の『湯呑茶碗』

短編集の様ですが、登場人物が話を次の人に送ったり、相互に絡んだり

だから一応長編で良いのでしょうね。

それもこれも、そもそもの設定(話の舞台?)のせい。

所は5階建てマンションで、そこに住む人々の部屋番号が話の「見出し」になります。

いい話、ジンとくる話、怖い話、腹の立つ話、なるほどの話・・

でも、取り立ててこの本を話題にするのは、どうにも気になる事が有ってです。

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一度リタイヤしてから植木職人として復帰した老人を、羨まし気に見ているのが、

405号室の住人 本間洋一郎

読み進めると少しずつ素性が明らかになってくる。

本間洋一郎・・・元製紙工場長、北海道へ赴任、企業城下町、第15代工場長・・・・

これって、我が町のあの工場のことでは?

他にも傍証が多々有って、そうとしか考えられない。

はて、半村良と我が街との、または某大手製紙と関係が有ったのだろうか?

思いがけず出会った、私にも縁が有りそうな作品でした。

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次は、再再読した『敵』(筒井康隆)

言う人は、「老人文学の最高峰」と

そこまで言われるとチョット恥ずかしいのではないでしょうか。

最初に読んだ若い時には、ストーリーもドキドキもどんでん返しも何もない、「漬物みたいな」話だなと思った。

少し歳を食ってから読んだ2回目は、「そうなんだ、有るかも」と池上風に思った。

そして3回目の今回、これは深刻で身につまされる話だということが、よく分かる。

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引退し妻にも先立たれた男の日常が、食事や買い物、家や物置の中の様子など事細かに記述される。

そう、伝える書き方ではなくただただ「記述」する。読者度外視の記述

ただし、徐々に微妙に雰囲気が変わってくる。

いない筈の人が登場したり、現実か想像か夢か判然としなかったり、見えない敵に怯えたり。

自分のことを書いているようで、徐々にメタ認知に失敗し始める。

そして、ついには・・・これ以上はR75ということで。

ーー(蛇足)ーー

1 文章に読点は有っても「句点」はほとんどありません。でもすらすら読める。この作家はやはりすごい。

2 「動悸動悸」「戯羅痢」「輪あ輪あ」「鵜過鵜過」読めますか?

擬音語、擬態語、擬声語、擬情語の類はカタカナではなく、筒井康隆 独自の表記法です。

妙にピッタリだったり、もしや語源か?と思ったり、判読に一呼吸要したりと。        


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