なかなか面白い設定です。
半村良の『湯呑茶碗』
短編集の様ですが、登場人物が話を次の人に送ったり、相互に絡んだり
だから一応長編で良いのでしょうね。
それもこれも、そもそもの設定(話の舞台?)のせい。
所は5階建てマンションで、そこに住む人々の部屋番号が話の「見出し」になります。
いい話、ジンとくる話、怖い話、腹の立つ話、なるほどの話・・
でも、取り立ててこの本を話題にするのは、どうにも気になる事が有ってです。
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一度リタイヤしてから植木職人として復帰した老人を、羨まし気に見ているのが、
405号室の住人 本間洋一郎
読み進めると少しずつ素性が明らかになってくる。
本間洋一郎・・・元製紙工場長、北海道へ赴任、企業城下町、第15代工場長・・・・
これって、我が町のあの工場のことでは?
他にも傍証が多々有って、そうとしか考えられない。
はて、半村良と我が街との、または某大手製紙と関係が有ったのだろうか?
思いがけず出会った、私にも縁が有りそうな作品でした。
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次は、再再読した『敵』(筒井康隆)
言う人は、「老人文学の最高峰」と
そこまで言われるとチョット恥ずかしいのではないでしょうか。
最初に読んだ若い時には、ストーリーもドキドキもどんでん返しも何もない、「漬物みたいな」話だなと思った。
少し歳を食ってから読んだ2回目は、「そうなんだ、有るかも」と池上風に思った。
そして3回目の今回、これは深刻で身につまされる話だということが、よく分かる。
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引退し妻にも先立たれた男の日常が、食事や買い物、家や物置の中の様子など事細かに記述される。
そう、伝える書き方ではなくただただ「記述」する。読者度外視の記述
ただし、徐々に微妙に雰囲気が変わってくる。
いない筈の人が登場したり、現実か想像か夢か判然としなかったり、見えない敵に怯えたり。
自分のことを書いているようで、徐々にメタ認知に失敗し始める。
そして、ついには・・・これ以上はR75ということで。
ーー(蛇足)ーー
1 文章に読点は有っても「句点」はほとんどありません。でもすらすら読める。この作家はやはりすごい。
2 「動悸動悸」「戯羅痢」「輪あ輪あ」「鵜過鵜過」読めますか?
擬音語、擬態語、擬声語、擬情語の類はカタカナではなく、筒井康隆 独自の表記法です。
妙にピッタリだったり、もしや語源か?と思ったり、判読に一呼吸要したりと。
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