□219『岡山(備前・備中・美作)の今昔』岡山人(20世紀、小野竹喬)
小野竹喬(おのちっきょう、1889~1979)は、笠岡の生まれ。14歳で故郷を後にし、京都の画家・竹内せいふうに師事する。1922年に渡欧し、西洋絵画を学ぶ。かの地では、ポール・セザンヌの風景画に大いなる影響を受けたとか。そのセザンヌの「ジャ・ド・ブックファンのマロニエ」(1885~87)や「サント・ヴィクトワール山」(1885~87)などは、小野の初期作品の「七類」(1915)や「郷土風景」(1917)などに生かされているみたいだ。加えるに、やや変わった配置の「山」(1929)という作品には、南画の影響がみられると評され、確かに現実の山というよりは、半ば想像上のこんもり型のものとなっている。しかも、そこら辺、やんわりしているのが、ほのぼのさを感じさせる。
それからの息の長い画業において、身近な自然をこよなく愛したことで広く知られる。その大まかな流れに沿っての絵の特徴としては、風景画の中でも、大仰さは感じられない。雄大な自然の描写でないところが、なぜかほっとする。それでいて、観ていて長い時間が経過しても飽きないのは、温かい自然の息遣いが感じられるからではないだろうか。
作品群では、季節が移り替わりが鮮明に描写されたものが数多くあるようだ。例えば、「丘」(1972)や夕雲(1965)においては、茜色に染まる空を背景に落葉樹が描かれている場面では、なんとはなく哀愁が漂う。それでいて、寒々としていないところが、実にありがたい。冬場のものでは、「宿雪」(1966)であろうか、静かな樹々の生命力が伝わってくる。そして春から夏にかけては、「樹」(1961)や「池」(1967)などであろうか。いずれも、自分が選んだ映像をどこまで正確に伝えられるかを綿密に考えている風だ。
(続く)
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