551の3『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシックインカム(BI)(そのデメリット)
これに対し、多様な立場から反対論が色々と出されているようだ。一つは、財政負担が大きく、賄いきれないという。「財政危機が叫ばれて久しいのに」である。「財源不安説」といってもよかろう。
二つ目には、お金の「ばらまき」になるともいう。乱暴な話だというのであろうか。その分が助けとなって、なにがしかの消費財を買う、そのことで景気回復なりに役立つだろうか、それはわからない。
なぜなら、そのカネが市場にとうじられたとして、ために世の中がインフレになったらどうするか。カネの価値はその分減じていくだろう。あるいは、そのカネが人々の浪費とか、債権者たちの取り立てをくらうとか、その他喜ばしくないことを引き起こすこともあるうる話ではある。
三つめとしては、すべての成人に対し一律の額にて支給されることから、そのままにては「貧富の差の拡大」の是正につながらない」との声がある。その並びで、富裕層に対する支給は、格差をいっそう広げるという。
四つめには、働かなくても最低限の生活ができるのなら、働く意欲を削がれる人も出てくるという。勤労意欲というか、勤労の美徳というか、それらの放棄につながるのではないかという。
そして五つめは、現行の社会保障制度が影響を受けて、改悪されることにもなるだろうという。その並びで、個人に対して責任を高く負わせることになり、その分福祉水準の低下や廃止へとつながっていくという。
さらに六つめは、資本と労働との力関係を労働者の不利に導くという。現にある労働・賃金との関連では、「賃金の引き下げにつながりかねない」とか、「Society5.0での人減らし合理化をたやすくする」「社会的に失業が問題視されなくなって、失業者が放置される傾向が増す」との警戒論も出されている。
もっと生々しく言うならば、「それだけもらっているのなら、会社をやめてもやっていけるのでは」とか、「賃金が下がっても、それがあるからやっていけるかな」などと、圧力がかけられることにもなるだろうと。
これらの理由付けのうち、21世紀を物語るのが、ロボットなどに労働者の仕事が駆逐される危険が増しつつある、というのであって、これを現時点で評価するのは誠に難しい。
それから、狭い意味での反対論ではないが、「市場機構を通じての配分のメカニズムをそのままにしておいて、所得保障を通じて解決しようという場合」の危うさを指摘する向きもある。それに、「社会実験している例はあるが、導入した国はまだなく、うまくいくかどうかわからない」との声も聴かれる。
(続く)
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