〇551の3『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシックインカム(BI)(そのデメリット)

2019-02-24 21:26:07 | Weblog

551の3『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシックインカム(BI)(そのデメリット)

 これに対し、多様な立場から反対論が色々と出されているようだ。一つは、財政負担が大きく、賄いきれないという。「財政危機が叫ばれて久しいのに」である。「財源不安説」といってもよかろう。

 

二つ目には、お金の「ばらまき」になるともいう。乱暴な話だというのであろうか。その分が助けとなって、なにがしかの消費財を買う、そのことで景気回復なりに役立つだろうか、それはわからない。

 なぜなら、そのカネが市場にとうじられたとして、ために世の中がインフレになったらどうするか。カネの価値はその分減じていくだろう。あるいは、そのカネが人々の浪費とか、債権者たちの取り立てをくらうとか、その他喜ばしくないことを引き起こすこともあるうる話ではある。

 三つめとしては、すべての成人に対し一律の額にて支給されることから、そのままにては「貧富の差の拡大」の是正につながらない」との声がある。その並びで、富裕層に対する支給は、格差をいっそう広げるという。

 四つめには、働かなくても最低限の生活ができるのなら、働く意欲を削がれる人も出てくるという。勤労意欲というか、勤労の美徳というか、それらの放棄につながるのではないかという。

 

 そして五つめは、現行の社会保障制度が影響を受けて、改悪されることにもなるだろうという。その並びで、個人に対して責任を高く負わせることになり、その分福祉水準の低下や廃止へとつながっていくという。

 さらに六つめは、資本と労働との力関係を労働者の不利に導くという。現にある労働・賃金との関連では、「賃金の引き下げにつながりかねない」とか、「Society5.0での人減らし合理化をたやすくする」「社会的に失業が問題視されなくなって、失業者が放置される傾向が増す」との警戒論も出されている。

 もっと生々しく言うならば、「それだけもらっているのなら、会社をやめてもやっていけるのでは」とか、「賃金が下がっても、それがあるからやっていけるかな」などと、圧力がかけられることにもなるだろうと。

 これらの理由付けのうち、21世紀を物語るのが、ロボットなどに労働者の仕事が駆逐される危険が増しつつある、というのであって、これを現時点で評価するのは誠に難しい。

 それから、狭い意味での反対論ではないが、「市場機構を通じての配分のメカニズムをそのままにしておいて、所得保障を通じて解決しようという場合」の危うさを指摘する向きもある。それに、「社会実験している例はあるが、導入した国はまだなく、うまくいくかどうかわからない」との声も聴かれる。

(続く)

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○〇551の4『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシックインカム(BI)(制度設計は可能か、社会保障給付を問う)

2019-02-24 21:23:01 | Weblog

551の4『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシックインカム(BI)(制度設計は可能か、社会保障給付を問う)

 前段でみたように、BIに対し狭い意味での反対論ではないが、「社会実験している例はあるものの、導入した国はまだなく、うまくいくかどうかわからない」との声も聴かれる。「それならやめよう」ないし「当面は模様眺め」とするのでなければ、その場合は具体的な検討を行う人が出てきて然るべきだろう。

 とはいえ、この制度をわが国で導入するには、既存の制度との調整が必要だろう。一説には、世の中の大方の人たちは、ゆくゆくは年金や生活保護などを一本化して、この中に社会保障関係を統合していくというプランを掲げる。そうなると、現在の社会保障関係費が丸ごとBIに集約されることになるのであろうか。

 この点については、「小さな政府」論者なども興味を示しているようだ。そこで、話を分かりやすくするために、以下に我が国の社会保障関係費の現況のあらましを紹介しておこう。

 試しに、2019年2月時点で明らかになっている2017年度(平成29年度)の社会保障給付の総額は、120.4兆円だという、その内訳だが、「介護・福祉その他」に24.8兆円、そのうち介護には10.6兆円。「医療」に38.9兆円。年金に56.7兆円となっているという

 これに対する財源としては、114.9兆円プラス資産収入の5.5兆円の合計が120.4兆円だという。そして、かかる114.9兆円のうち公費で賄うのが46.3兆円であり、その内訳は地方税等負担での13.6兆円と、政府サイドの負担での32.7兆円(国債発行での13.6兆円と国の税収19.1兆円との合計)だ。それに、保険料として68.6兆円が加わる(以上、端数が一致しない場合もある)。

(続く)


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〇551の2『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシックインカム(BI)(そのメリット)

2019-02-24 21:08:56 | Weblog

551の2『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシックインカム(BI)(そのメリット)

 そこで、現下の賛成論から紹介しよう。

 一つめは、原則論でいうならば、個々人の収入、資産などを調べる必要がなく、各人による申請に基づく審査も原則的には必要でない。したがって、行政コストが大幅に減らせるという。この考えでは、裕福な者に対しても、そうでない者と同様一律な支給をするというのは、「おかしい」とはならないらしい。受け手としても、審査で選別されるのでないから、気が楽ではないか。受けて同士で話もしやすい。

 二つめは、直接にカネが渡されることから、可処分所得が増えるので消費拡大が可能になろう、ひいては景気回復に力となろうという。

 三つめは、無収入になる不安がないことから、暮らし方、働き方の選択肢が広がるのではないか、ひいては、例えば非正規雇用問題の緩和に役立つのかもしれないという。

 四つめは、当座のカネがあることになるので、慌てて次の仕事を探さないでもよかろう。慌てると、いい加減な仕事にしかつけない。

 五つめは、失職を恐れて無理をして働かなくてもよいので、その分、心と体が楽だ。

 六つ目は、消費税の逆進性への防波堤になりうるのではないかと。

 七つ目は、貧困対策に役立とう。

 八つ目は、これをもって社会保障制度の簡素化につながるであろうし、さらにまた、こういう制度でもって従来策を束ねることでを、行政の簡素化、コストの低廉化につながるだろうという。

 九つ目は、現行の社会保障制度のうち、例えば生活保護制度の申請ができるのは、親族内で生活援助できないという証明か必要になるとかで、各自治体によりかなりの差がある。

 十番目としては、「完全BI」といって、ゆくゆくは年金や生活保護などを一本化して、この中に社会保障関係を統合していくというプランを掲げる。そうなれば、かえって社会保障制度としてのまとまりが出て、憲法条項との整合性が、とれるのてはないか。 いずれにせよ、「健康で文化的な最低限度の生活費」の水準をどのようにして認識するかが、問題となろう。

 十一番目は、今回の新型コロナ下で、国民への一斉給付が行われている。ベーシックな給付の下地ができているなら、安心だ。生体認証のあるカードを持っているなら、安全が迅速に個々人にちゃんと現金ねりが届くのでは、ないか。



(続く)

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○〇551の1の1『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシックインカム(BI)(そのあらまし、発端)

2019-02-24 21:07:26 | Weblog

551の1の1『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシックインカム(BI)(そのあらまし、発端


 日本の憲法は、全ての国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障しているかのように見える。ところが、従来の国の解釈では、これは努力目標であって、実際的に個々の国民の生活を一律に保障するものではないことになっている。

ところが、最近ベーシックインカムという言葉が世の中に広く知られるようになった。そもそもの出所は、旧くはトーマス・モアの「ユートピア」あたりにあって、西洋諸国では人々にかなりの知遇を得ているという。

 その特徴としては、これまでの最低生活保障制度という範疇ながら、雇用の状況や収入、資産の如何にかかわらず、政府が全ての国民を対象に、最低限の生活に必要なお金を無償で与えるというものだ。

 最初に、現代風なベーシックインカムの起源は二つあるという。一つは、『社会信用論』を著したC.H.ダグラスが提唱したものだ。これは、貨幣発行益を財源とし、「国民配当」という形で政府が発行紙幣を国民全員に配るというもの。

  もう一つは、経済学者のミルトン・フリードマンが提示した構想で、「負の所得税」と呼ばれる。これは、「一定の額に所得が達しない人は、むしろお金がもらえる」という。例えば、所得税税率を一律25%、社会的合意で最低保証する所得を100万円としよう。すると、「所得×0.25-100万円」が個々人の収める税金になる。この場合、所得が400万円以上の人は納税を免れない。けれども、400万円未満の人は税額がマイナスになってしまう。例えば所得が240万円の人は、「240万円×0.25-100円=-40万円」であることから40万円の給付が受けられよう。それを元の所得に足しての再分配後の所得は、280万円に上がるだろう。所得が全然ない人にいたっては、丸ごと100万円の給付が受けられることになるだろう。

  この「負の所得税」構想とベーシックインカムとの違いは、ベーシックインカムは税金を払った後に一定額が自分のところに返ってくるのに対し、「負の所得税」は、その差し引きを最初にしてしまうということであって、損得では変わらない。

(続く)


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