「樹木に耳をつけると、樹液の流れる音がする」と聞いたことがある。
ウッソー!
試しに大木に手を回し、耳をつけてみた。
でも、音が聞こえたりはしなかったなー。
木の肌の思ったよりも温かいぬくもりに、
ほっかりした気持ちになったけど。
樹木はまるで物体のように身動きもせずにそこに立っている。
風が吹けば葉がざわめく。
台風のような大風では、幹が揺れる。
でもそれは外的な力が働くから。
樹木自身はただ静止してそこにあるだけ…
のような気がしていた。
しかし樹木にも、もちろんだけど、命がある。
命があるからには、動物と同じように血液が流れている?
『樹木たちの知られざる生活~森林管理者が聴いた森の声』によると、
樹木の内部では、生存の営みが日々活発に行われているらしい。
以下引用。
●樹木のなかを流れるもの
★樹木の内側ではいろいろな活動が行われている。
水分と養分、つまり〝木の血液〟は根から枝葉に向かって秒速一センチの速さで流れているのだ。
★ブナの成木の内部では、毎日五〇〇リットルを超える水が枝や葉を駆けめぐっている。
土壌に水分が十分にあるなら、その水を必要なだけ吸い上げる。
だが、暖かい時期、特に夏は土地が乾きやすく、雨がいくら降っても水分の補充が追いつかない。
だから森は冬のうちに水を蓄えておく。
冬にはほとんどの植物が活動を停止し、水の消費量をゼロまで落とす。
そのため、冬から春にかけてためこんだ水分で、夏の初めまでもちこたえることができる。
★木の内部の水圧がもっとも高くなるのは、春の芽が出る直前で、この時期には聴診器を使えば私たちにも聞こえるほどの勢いで、水が幹に流れ込んでいる。
実際、アメリカ北東部では、雪解けのころにサトウカエデに聴診器を当ててメープルシロップの収穫時期を決めているほどだ。
ということでした。
樹皮の内側では、秒速一センチで水と養分が流れている。
なるほどです。
樹木は生きている。
巨木であっても、
いやむしろ巨木のほうが活発な活動を繰り広げているのだ。
★(ある国際的な研究)チームは、すべての大陸で合わせておよそ七〇万本の樹木を調べ、驚きの事実を発見した。
木は年をとればとるほど成長が早くなるのである。
たとえば、幹の直径が一メートルの木は、五〇センチの木に比べておよそ三倍のバイオマスを生産する。
樹木の世界では年齢と弱さは比例しない。
それどころか年をとるごとに若々しく、力強くなる。
若い木よりも老木のほうがはるかに生産的であるということは、私たち人間が気候の変動に対抗するとき、本当に頼りになるのは年をとった木だということを示している。
樹木については知らないことばかり。
「へー」というマヌケな相槌を、ついつい打ってしまうのだ。