『赤毛のアン』の三つめのキーワードは石盤でしたね。
アンがアヴォンリーの学校に行き始めて三週間がたったときのこと。
季節は九月。
夏じゅうずっとニュー・ブランズウィックのいとこのところにいっていたギルバート・プライスが、学校に登校してきました。
ギルバートはハンサムだけど、いたずら好き。女の子をやたらからかいます。ダイアナにいわせると、「命からがらの目にあわせる」のだそうです。
アンをはじめて見るギルバートは、アンの注意を引こうと、いろいろ試みますが、アンのほうは空想の世界に没頭していて、ちっとも気がつきません。
「…ギルバート・プライスは女の子を自分のほうに向かせることで苦労したこともなかったし、いわんや失敗したことなんかなかった。
どうしてもこっちに向かせてやるぞ。
あの小さな、とがった顎をして、学校じゅうのどの女の子も持っていないような大きい目をしている、赤毛のアン・シャーリーという子を」(新調文庫・『赤毛のアン』より抜粋)
そう思ったギルバートは、通路越しに手を伸ばして、アンの赤毛のお下げを引っ張りました。
低い声ではっきり聞こえるように、こう言いながら。
「にんじん、にんじん」
おお、アンの怒ったこと。
「なんていやなやつ」「卑怯者」と叫ぶと、自分の石盤をギルバートの頭に打ち下ろして、真っ二つに砕いてしまいました。
先生がやってきて、アンにわけを聞きますが、アンは口が裂けてもみんなの前で、自分が「にんじん」と呼ばれたなんていえません。
ギルバートは男らしく「ぼくが悪かったんです。先生、ぼくがいじめたんです」と言いますか、先生は聞き入れず、アンを午後じゅう教壇の前に立たせる罰を与えました。
それだけでも屈辱なのに、翌日にはさらに事件が起こり、とうとうアンは、学校に行くのをやめてしまいます。
アンの物語は、まったく、事件が次々におこるのですねー。
ギルバートはアンに謝りますが、アンは許そうとはしません。
そして、なんと、この物語の終わりのところまで、アンはギルバートと関わりをもとうとしませんでした。
この二人の喧嘩が、物語を大きく引っ張っていきます。
はたして、アンは最後にはギルバートと仲直りするのでしょうか?
それにしても、アンはほんとに癇癪もちです。
続編の「アンの青春」では、癇癪もちではなくなるのだから、この癇癪もちの性癖は、両親の顔も知らず、他人に育てられ、孤児院に引き取られたという、育った環境のせいでしょうか?
ちょっとそこのところが、興味深いところ。
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まーち
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