本も映画も、英語のタイトルが日本語に置き換えられて、もともとタイトルにこめられていた想いやウイットが台無しになってること、多くないだろうか。
この映画のタイトルは、もともとは“SAVING MR.BANKS”
バンクスさんとは、『メアリー・ポピンズ』に出てくる父親である。
そして、「父親のバンクスさんを救う」ということであれば、直球のタイトルだ。映画をみてわかったことだけど、主題にぴったりなのだ。
「ウォルト・ディズニーの約束」とは、なんとも曖昧な落ち着かないタイトル。どうも主旨が少しぼかされている感じがする。
この映画は、P・L・トラヴァースが「メアリー・ポピンズ」の映画化に当たって、いかに主張を譲らず、ディズニーたちを困惑させたか、そして、いかに説得されてOKしたのかが描かれている。
トラヴァースについて少し調べていたので、「おやっ」と思って見に行った。
オーストラリアでの子ども時代の回想シーンがオーバーラップして映される。
父親が8歳でなくなったことは知っていたけれど、トラヴァースがそのことで傷つき、父親への想いを大事に抱えて生きてきたのだということは見過ごしていた。
アル中の父親を救えなかったという想いが、大人になったいまでもトラヴァースの心に巣食い、それが異様なまでの頑なさの原因になっているのではないか。
彼女の心を解きほぐすことができれば、映画も成功するのでは…。
ウォルト・ディズニー自身の父親への想いも重なって、“SAVING MR.BANKS”ということになる。
なんとも持って回ったような説明だが、詳細は映画で…。
ディズニー映画だからお子チャマ向きと侮るなかれ。
すっかり泣かされてしまう。
人の痛みについて、やさしくなれる映画。