MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

Grizzly Man

2006年04月01日 19時02分22秒 | 映画
とうとう4月。
うーむ、信じられません。早すぎる・・・。

というわけで、今日も最近観た映画の話をします。
先日、僕の敬愛するドイツの映画監督ヴェルナー・ヘルツォークのドキュメンタリー映画“Grizzly Man”を観ました。

この映画はグリズリーに魅せられた、ある男が主人公です。アル中で荒れた生活を送っていたティム・トレッドウェルというアメリカ人の男が、ある日、突如グリズリーに魅せられて、アラスカでグリズリーとともに生活を始めます。彼の目的は唯一つ“愚かな人間達の手からグリズリーを守る”ことでした。

彼は、13年もの間、夏季になるとアラスカ半島で野生のグリズリーとともに生活をし、グリズリーの生態と自らの生活の様子を膨大な量のビデオテープに記録していきました。
そして13年目の夏。彼は恋人と共に、グリズリーに食われて死ぬのです。

ご存知のとおり、グリズリーベアはアラスカに生息する世界最大・最強の熊です。非常に獰猛だそうで、あんなのに襲われたら人間などひとたまりもありません(そういえば昔“グリズリー”という人食い熊の映画もありましたなー)。

変わり果てた彼とその恋人の死体を、彼らを迎えに来たセスナ機のパイロットが発見したとき、熊はまだ、肉片と化した彼らの死体を貪り続けていたそうです。
そして、こともあろうにその傍らでは、彼らの遺したビデオカメラが回り続けていたのです。

ヘルツォークは、ティムの残した記録映像を再編集し、数人の関係者のインタビューを交えつつこのドキュメンタリーを完成させました。
(尚、彼らがグリズリーに襲われている模様は、実際にはビデオカメラのキャップが外れていなかったため音声しか残っていないそうですが、ヘルツォークは「聞くに堪えないし、また聞かせる必要もない」として、この音声を映画の中では一切使用していません。)

この映画の全編を通してヘルツォークの目は、このティム・トレッドウェルという、見えない力につき動かされて破滅に向かって突き進んだ、ある孤独な男に注がれています。
ヘルツォークの以前の作品をご覧になったことのある方ならお分かりのように、「人間の〈狂気〉と〈破滅〉」は、彼の作品を貫く大変重要なテーマの一つです。
ですから、このティムという一風変わった男の存在が、ヘルツォークの旺盛なる好奇心を思い切り揺さぶったであろうことは想像に難くありません。

従って、この映画は、巷で見かけたいくつかの的外れなレビューが指摘しているような、心優しき動物愛護活動家の波乱に満ちた人生を描いた感動物語でも、ましてや、社会のはみ出し者を嘲笑する映画でもないのです。
そこには、愚かな人の業を、あるときは暖かくそしてあるときは手厳しく見つめ続けるヘルツォークの眼差しだけが存在するのです。

ヴェルナー・ヘルツォーク。この人は本当にいい映画を撮る人だと思います。

ということで“Grizzly Man”。機会があったら皆さんも是非ご覧になってみてください。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ダーウィンの悪夢 (kazu-n)
2006-04-05 00:19:28
(ノ ̄∀ ̄)ノオオォォ送ってくだされ。



しかし、よく手に入ったねー。

すげー・・・

権利もっているところから買ったの?

それとも知り合いの人が録画して持ってたの?

ちなみに、それって日本語字幕かな?

そうじゃなければせめて英語字幕は欲しい。。

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ダーウィンの悪夢 (おさぼりフロイト)
2006-04-04 18:10:03
( ̄ー ̄)ゞコピーしたよ。

前、後編ある。

それぞれ49分

ちょっと実際のものを編集してあるかもしれません。
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