MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

若者よマルクスを読もう

2010年07月25日 22時19分58秒 | 映画
内田樹と石川康宏の共著「若者よマルクスを読もう」を読む。

この本のコンセプトは、マルクスの“マ”の字も知らない高校生達にもわかるようにマルクスの思想を分かりやすく解説することであるらしい。

本書で取り上げられているのは「共産党宣言」「ユダヤ人問題によせて」「経済学・哲学草稿」「ドイツ・イデオロギー」の4つの著作で、それぞれ、マルクスが29歳、25歳、26歳、28歳の時に著したものである。この若さですでに、これらの歴史的著作を残し得たという点のみをもってしても、マルクスがいかに非凡な才能に恵まれていたかが分かる。

さて、中身を読む。

一応本書は、石川、内田両氏の往復書簡という形式をとっており、具体的な本文内容の解説を石川が、一方、マルクスと出会うことで自らの生き方、考えかたがどう変わったか、ぶっちゃけていうと“マルクスの何が凄いのか”についてのざっくばらんな記述を内田が担当している。

内田氏の文章は(いつものことながら)エスプリがきいたエッセイ風で読みやすいが、石川氏の内容解説はかなり読みごたえがあるもので、一度読んだだけでは俄かには理解のできない箇所が多く、さすがにソファに寝そべりながらスラスラと読み進むというわけにはいかない。
全体、マルクス初心者の高校生に理解できる内容かというと、かなり厳しいのではないかという印象だ。

「これまでのあらゆる獲得の場合には、多数の個人がただひとつの生産用具に従属させられたままであったが、プロレタリアたちの獲得の場合には、多数の生産用具が各個人に、また、所有が万人に従属させられなければならない。現代の普遍的交通は、それが万人に従属させられることによる以外には、諸個人に従属させられることができない」「この段階ではじめて、自己活動が物質的生活と一致するのであり、そのことは、諸個人の総体的諸個人への発展といっさいの自然成長性の廃棄に照応する。そして、そのときには、労働の自己活動への転化と、これまでの制約された交通の、諸個人としての諸個人の交通への転化とは照応しあう。結合した諸個人による生産諸力総体の獲得とともに、私的所有は終わる」

なんだか、わかるような、わからないような、小難しい文章である。
一応、上記のごときマルクスの引用に引き続いて、石川氏の解説がつくのだが、この解説も、マルクスの文章を少し端折った程度のもので(?)、高校生どころか40歳もとうに過ぎた私のようなおっさんでも何度も読み返さないと何を言っているのか分からない。

しかし、この本を読み進むうちに、実のところ、本書のキモは、“マルクスが分かるかどうか”ではないのだな、ということが少しずつ分かってくる。
早い話が、この本の本当の趣旨は、“何か知らんが、とにかくマルクスは凄い”ということを再発見するところにあるのだ。

昨年亡くなった構造主義の祖レヴィ=ストロースは、“論文を書き始める前に、必ず書棚からマルクスの本をとりだして、ぱらぱらと任意の数頁を読”んだのだそうだ。レヴィ=ストロースいわく、“マルクスを何頁か読むと、頭の中の霧が晴れるような気がする”のだそうだ。

ことほど左様に、マルクスを読むという行為の真髄は、赤鉛筆を片手に彼の難解な文章を何度も読み返しながら、必死にその意味を理解せんと書物と格闘するところにある。
意味と格闘することで、やがて脳細胞が活性化し、自身の思考が研ぎ澄まされてゆくことを実感するところにある。
マルクスが若干二十歳にして資本主義社会と対峙し、その本質をとらえ尽くさんと、いかにもがき苦しんだかを、彼の書物を通じて追体験する行為こそが、“知”そのものなのだと言ってもいい。

この本が言いたかったのは、結局そういうことなのだと思う。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« この連休中 | トップ | ザ・コーヴ »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Z)
2010-07-26 16:16:02
exam
観てきました

心理戦を期待してましたが、ややがっかりでした。

オドロオドロしくない”ソウ”みたいでした。

なんか、落ちがイマイチ分からず、字幕の限界か、と感じてしまいました

もし、kazuさんが観たらオチは翻訳によるものか教えてください

確か、期間・劇場限定上映かと思います。渋谷です
返信する
Zさん (kazu-n)
2010-07-26 21:16:13
エグザム。

シアターN。

Zさんも、かなりディープな方向にいってますなー(笑)

ちなみに「ザ・ホード」はリストに入ってたんですけど、「エグザム」は僕の見たい映画リストには入ってませんでした。どこでお知りになったのですか?


結局、ダリオ・アルジェント“4匹の蝿”は見に行けずじまいでした。

残念。
返信する

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事