MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

侯孝賢氏のトークショーに行く・その2

2011年03月11日 00時40分21秒 | 映画
第二部は侯孝賢監督と蓮實重彦氏の登場である。
まず、二人が登壇する前に、会場が暗くなり、正面のスクリーンに「百年恋歌」のオープニングシーン(男女がビリヤードをするシーン)が流れる。
そのシーンの後、二人が登壇し、まず蓮實氏がマイクを取ってあいさつをする。

「こんにちは、蓮實でございます。私は、世界中の人々を2種類に分けるのは非常に簡単なことだと思っております。つまり、今ご覧になったシーンを見て、泣ける人間か、泣けない人間かであります。いうまでもありませんが、私は後者の人間たちと金輪際話をするつもりはありません」
いきなりの蓮實節の炸裂である。
「とはいえ」と蓮實氏は続ける。
「こんなことばかり言っていても始まりませんので、今日はその後者の方々にも、侯孝賢監督の素晴らしさを分かってお帰りいただきたいと思います。私は、このシーンを見ると必ず泣いてしまうのですが、こんな私を監督は許してくださいますか?」

その後は蓮實氏が、時折、映画のワンシーンを見せながら、侯孝賢監督に質問をし、監督がこれに答えるという形式で進められた。

「えー、今、『百年恋歌』の最初の場面を見ていただいたわけですが、みなさんお気づきになられましたか?冒頭のこの、男女が何気なくビリヤードをやっているシーン。この男女こそ、あのエドワード・ヤン監督の『クーリンチェ少年殺人事件』に出演していた2人に相違ないわけであります。私は、侯孝賢監督が、この『百年恋歌』の冒頭のシーンで、エドワード・ヤン監督に対する追悼のメッセージを送っておられるような気がするのですが、いかがですか?」

すると、侯監督はニヤニヤしながら
「いやー、それは知りませんでしたねー。まあ偶然ですね。」と、人を食ったような答え。

蓮實氏は一瞬絶句するも、気を取り直して
「侯孝賢監督は、『フラワーズ・オブ・シャンハイ』以降、従来のスタイルを変え、カメラを動かすようになりました。この『百年恋歌』のシーンもフィックスではなく、非常によく計算されてカメラをパンしていらっしゃいますね。」と。

これに対しては「そうですね、確かに『フラワーズ・オブ・シャンハイ』以降、撮り方を少し変えました。ですが、撮り方は基本的にキャメラマンに任せています。私はあまり細かいことは言わないのです。せいぜい、『ボールを撮ってください』とか、『声のする方へカメラを振ってください』と指示を出すだけです」みたいな答え。

「なるほど、では、移動ショットはどうですか?あまり移動ショットをお撮りにならないようですが。。」

「一応、レールは敷いています。分かりにくいかもしれませんが、少しは移動しているのです」

ちなみに、びっくりしたのは、侯監督の映画には基本的に台本がないのだそうだ。
出演者たちをカメラの前に配置して「はい、ではここでご飯を食べながら談笑してください」とか、「ここで、お母さんに妊娠を告白してください」と指示するだけなのだそうな。
あとは、出演者たちが、思い思いに演じ、会話を交わしているところを自由にキャメラマンに撮らせるのだという。
そんな適当な(?)撮り方であんなに緊張感のある画が撮れてしまうのだから、やはりこの人は天才なのかもしれない。

などなど、まだまだ話は尽きないのだが、長くなってきたので本日はこの辺にしておく。


最後に、印象に残った蓮實氏の発言でしめくくろうと思う。



「世界でもっとも美しい映画のタイトルは何か。それは『恋恋風塵』です」





*ちなみに、このトークショーの模様を詳しくレポートしているブログがありました。
気になる方はそちらをお読みいただければと思います。
http://green.ap.teacup.com/nanbaincidents/1048.html
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