このあいだ、TOWER RECORDでジョージ・ロイ・ヒルの“スローターハウス 5”を見つけたので即買いした。
はるか大昔に、友達の家で字幕なしのVHS版を意味も分からず観たときのことを思い出す。
カート・ヴォネガットJr.の原作も何度か読んだがどちらもとても素晴らしかった。
ジョージ・ロイ・ヒルは僕の大好きな監督の一人だ。
寡作な監督ではあるがどれも名作揃いだ。
なかでも“ガープの世界”と、この“スローターハウス5”がいい。
(普通は“スティング”とか“明日に向かって撃て”なんだろうけど、、、)
なにも映画に限らない話だが、観る者にとっての“良いもの”の評価は、あくまで自分本位な判断のもとに通常下されるものである。従って己の評価と世間一般の評価とが一致しないということは往々にしてありうる。例えば作品に出会ったときの年齢や心理状態によっても受け取り方は随分違うし、監督の持つ世界観に共感できるかどうかどうかという要素も大きい。
その点では、僕とヒルのこの2作品とは極めて相性がいいといえるかもしれない。
“スローターハウス5”における主人公ピルグリムは、自分の意志とは関係なく人生のあらゆる時間を行ったり来たりする、いわゆるタイムトラベラーだ。
唐突に挿入される映画のカット割のように、彼の人生は脈絡なく細切れに進行し、そのたどり着いた先々で彼は様々な死の場面に直面する。
しかし、生死を分かつ危機的状況の中でも彼はなぜかいつも生き残ってしまう。
第二次大戦末期、彼は捕虜として古都ドレスデンに移送され、あの忌まわしきイギリス軍による無差別爆撃に遭遇する。
一晩のうちにドレスデンの街は廃墟と化し、しかしそこでも彼は生き残ってしまうのである。
そして、運命づけられたように唐突に訪れる本当の“死”
ヒルは、人間の生態観察をする宇宙人や、滑稽ささえ伴うさまざまな死を描くことで、人間の罪深い業を暗示しようとしているように僕には感じられる。
この映画のキーワードは“ドレスデン”だ。
ヨーロッパにおける、広島、長崎であると言う人もいる。
ドレスデンという街の悲劇がヨーロッパの人々の心に残した傷は大きく、深い。
僕はこの映画をアメリカ人であるヒルが撮ったことの意味を考えるにつけ、何とも言えず複雑な感覚にとらわれる(ヴォネガットがこの小説を書いたことの意味でもいいが)。
大量殺戮の時代。
二度にわたる世界大戦を通じての全犠牲者のうち実に約4割は一般市民であったという。
この映画を観ていると、僕達がまるでスローターハウス(場)というタイトルどおりの世界に生きているような、そんな錯覚に陥ってしまう。
*日本語DVDは入手不能と思いますが、早川から出ている原作も素晴らしいのでもし初めての方は是非ご一読を!
はるか大昔に、友達の家で字幕なしのVHS版を意味も分からず観たときのことを思い出す。
カート・ヴォネガットJr.の原作も何度か読んだがどちらもとても素晴らしかった。
ジョージ・ロイ・ヒルは僕の大好きな監督の一人だ。
寡作な監督ではあるがどれも名作揃いだ。
なかでも“ガープの世界”と、この“スローターハウス5”がいい。
(普通は“スティング”とか“明日に向かって撃て”なんだろうけど、、、)
なにも映画に限らない話だが、観る者にとっての“良いもの”の評価は、あくまで自分本位な判断のもとに通常下されるものである。従って己の評価と世間一般の評価とが一致しないということは往々にしてありうる。例えば作品に出会ったときの年齢や心理状態によっても受け取り方は随分違うし、監督の持つ世界観に共感できるかどうかどうかという要素も大きい。
その点では、僕とヒルのこの2作品とは極めて相性がいいといえるかもしれない。
“スローターハウス5”における主人公ピルグリムは、自分の意志とは関係なく人生のあらゆる時間を行ったり来たりする、いわゆるタイムトラベラーだ。
唐突に挿入される映画のカット割のように、彼の人生は脈絡なく細切れに進行し、そのたどり着いた先々で彼は様々な死の場面に直面する。
しかし、生死を分かつ危機的状況の中でも彼はなぜかいつも生き残ってしまう。
第二次大戦末期、彼は捕虜として古都ドレスデンに移送され、あの忌まわしきイギリス軍による無差別爆撃に遭遇する。
一晩のうちにドレスデンの街は廃墟と化し、しかしそこでも彼は生き残ってしまうのである。
そして、運命づけられたように唐突に訪れる本当の“死”
ヒルは、人間の生態観察をする宇宙人や、滑稽ささえ伴うさまざまな死を描くことで、人間の罪深い業を暗示しようとしているように僕には感じられる。
この映画のキーワードは“ドレスデン”だ。
ヨーロッパにおける、広島、長崎であると言う人もいる。
ドレスデンという街の悲劇がヨーロッパの人々の心に残した傷は大きく、深い。
僕はこの映画をアメリカ人であるヒルが撮ったことの意味を考えるにつけ、何とも言えず複雑な感覚にとらわれる(ヴォネガットがこの小説を書いたことの意味でもいいが)。
大量殺戮の時代。
二度にわたる世界大戦を通じての全犠牲者のうち実に約4割は一般市民であったという。
この映画を観ていると、僕達がまるでスローターハウス(場)というタイトルどおりの世界に生きているような、そんな錯覚に陥ってしまう。
*日本語DVDは入手不能と思いますが、早川から出ている原作も素晴らしいのでもし初めての方は是非ご一読を!
コメントありがとうございます。
(ちなみに、華氏911にコメントくれたあきさんと同一人物ですか?)
いやー趣味が合いますね。
この2本はほんとに大好きなんですよ。
リトルドラマーガール以降ずいぶん御無沙汰だなーと思ってはいたんですが、昨年ぐらいにネットでヒルを検索していて初めて死んでいたということを知りました。まあ、結構いい年でしたからね。合掌。
ということで、これからもいろいろ映画の話題も書いてゆこうと思いますので、またコメントよろしくお願いします。
ところで、あきあきさんのベストムービーはなんですか?
あんないい監督が亡くなってしまうなんて残念だよね
h-nkmrさんなら食いついてくるんじゃないかなーなどと思っておりました。
ちなみに僕のもってる文庫も和田誠ですね、確か。
それからDVDですが、いざとなればアメリカのアマゾンで購入できます。字幕は英語、フランス語、スペイン語が選択できます。僕個人は英語字幕を入れながらであればなんとかついていけるかなーといったところです。
あっ!でも日本だとregional codeがひっかかっちゃうからダメかな?
僕のはregion free DVD playerなので日本版もアメリカ版も関係なく再生できるんですよー。