明海大学大学院応用言語学研究科

Meikai Graduate School of Applied Linguistics

Don't be a Hypocrite!

2013年09月12日 | 英語

 Hypocriteという英語がありますが、どの英和辞書で調べても「偽善者」という日本語しか返ってきません。「Hypocrite」はアメリカでは日常会話から政治的議論まで、あらゆる場面で飛び交う、罵るための語です。何を指すかというと、発言と行為に矛盾がある人です。日常的な例をあげると、何気なくよく寝坊してしまうのに、他人に寝坊しないことの良さを説くような人です。COCAから例文を引用します。

 

              "He says you're a hypocrite because you believe government should stay out of people's business, but when it comes to gay marriage, abortion, drug use, you want government involved so we debate the social issues next."

 

 一方では政府に関与してほしくないと言っているのに、都合にいい時だけその関与を求めることから、“Hypocrite”と罵られているわけです。

一方、広辞苑第6版で『偽善』を引くと

 

              「本心からでなく、みせかけにする善事」

 

 まるで別のことを察しているようです。言語間になぜこのような違いが出きるのか。そして、なぜこのような誤解がいつまでも気づかれないままなのか。言語と文化と社会について色々と考えさせられる違いだと思いませんか。【Joe Tabolt M1


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (大塚孝一)
2013-09-13 17:31:46
Joeさん
 なるほど。今回も非常に興味深い指摘ですね。確かにあのコーパス例文においては、「偽善者」とは訳せません。
 Joeさんが書いたhypocriteの定義を私が日本語にするのであれば、「有言不実行な人」と訳すでしょう。本来は「不言実行」という言葉ですが、そこから「有言実行」が生まれ、それに“不”を付けた、若干造語的な表現です。言動に矛盾が見られる人を指します。
 ちなみに、「偽善」と言えば、私は「チャリティー」なんかを直ぐに思い浮かべます。実際のチャリティーが偽善かどうかは調べる必要がありますが、「チャリティー」という語と「偽善」という語は比較的共に用いられることが多いと思います。
返信する
Unknown (Joe)
2013-09-14 09:20:51
大塚さん
その単語は思い浮かびませんでした!でも意味として、言うことを行動に移さないということですよね?
Hypocriteはそうじゃなく、やっていないのではなく、やっていることは言っていることと食い違っているところことを指す。
断りをいれますが、Hypocriteの意味は日常使用によって進化しているように思います。英英の辞書でも定義はコーパスの多くの例文とぴったり合わない状態です。
「偽善」の解釈をありがとうございます。勉強になりました。逆にみれば、偽善者に合う英語もないかもしれません。Fakeしか思い浮かびませんが、それでは日本語より意味が大分広くなってしまいます。
返信する

コメントを投稿