明海大学大学院応用言語学研究科

Meikai Graduate School of Applied Linguistics

語用論学会参会記

2013年12月12日 | 学会、セミナー、講座の参会記

 2013年の語用論学会は12月8日、9日の二日間にわたって行われました。実に様々な方々が集う大規模学会です。中国、スイス、イスラエル、アメリカからの研究者がいらっしゃった国際的な学会でした。

 今回の主要テーマは語用論と意味論の境にあるimplicature(含意)でした。Tel Aviv大学から招かれた基調講演者のMira Ariel教授は、一定の発言がどの類の「含意」であるかはは不明瞭な場合が多くても、その区別は不用だということにならないということを主張なさり、ご自分のカテゴリー「truth-based implicature」を提案なさいました。これは、「含意」に話し手の意図が届いていないのに含意されるもののことです。例えば「私を手伝ってくれたのは父だけでした。」という文において、手伝ってくれたのは男だということは「父」に含意されますが、話し手にとってそれは肝心でないことであり、聞き手がそれをどうとろうか全く考えていません。このように、多種と認知的な差が認められればその種の区別が必要であるというご主張だったように理解しました。

 他にも様々な興味深い発表がありました。四つの会場にて同時に4つの講演が行われたので全部拝聴することは不可能ですが、私が行ったものの中で、法性動詞・副詞、EFL英語学習者の語用論的発達、会話分析から見たアイデンティティ・シフト、疑問文の語用論、ポライトネス理論における自己フェイス、“tone of voice”の構造素、婉曲語法の音声的要素、自己中心によるミスコミュニケーション、epistemic vigilance(認識に対する用心)から見た児童のアイロニー理解能力、メタファーの帰納法など、勉強になる内容の詰まったものばかりでした。

 そして、あるいは新しい知識よりも大事なことかと思っているのですが、日本や世界の様々な研究者と知り合いになり、語り合う大変良い機会でした。駆け出しの私がお世話になるばかりでしたが、非常に多くの方と触れ合えて、様々なことについて勉強させていただけて、研究仲間がたくさんできました。(只今名刺の有り難さに感動しているところです。)

 最後に、大変勉強になるような発表をしてくれた発表者の皆様を始め、会場を提供して学会の運営に携わった慶應大学の方々と、この学会を作った応用言語学学会の方々に深くお礼を申し上げます。【Joe Tabolt M1】

 (ちなみに発表の内容に興味がありましたら、資料は取ってありますので声をかけてください。)

 


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