東京スポーツ制定の2018年プロレス大賞で、MVPは棚橋弘至、年間最高試合賞は6・9大阪城ホールのオカダカズチカVSケニー・オメガの60分越えの試合であった。
そこで僕なりの2018年最高試合賞を決定したい。
9・30ロサンジェルスWALTER PYRAMID大会第0試合ロス道場生デビュー戦
アレックス・コフリンVSクラーク・コナーズ (勝者アレックス 7〜8分程度 逆エビ固め)
僕の好みはレスリングの技術が中心となる試合である。その意味で、この試合はチョップやエルボーが一度も使われず、レスリングの基本的な技術のみで構成された試合であった。単なる競技(コンテスト)としてのレスリングということではなく、競技性に加えて、文化の根源たる遊びの部分があるため、自由度も高い試合であった。
どういうことかというと、ガチガチの競技になると、勝敗のみを目標とするため、勝利に向かうための技術のみで構成され、人間が身体をもって、その身体を動かす自由さや楽しさが損なわれる。プロレスは2人で行う身体運動の中で生じる自由さや楽しさを排除することのないレスリングである。しかしながら、自由さと楽しさにのみ走ると、競技性が失われ、真剣性が失われる。僕はこの両者のバランスがプロレスをプロレスならしめると考えている。
この試合では、間をおくことなくロックアップをして、そこで身体が触れ合ったところからレスリングの動きで相手を先んじようとする。こういう攻防だけで試合が成立するし、十分見応えもあるわけだ。実際、十分な見応えがあった。
加えて、打撃がないところが良かった。レスリングにもともと打撃がなかったとは断言できないが、フォールするために相手を制することが目的になるのであって、打撃はレスリングの本質ではない。それだけでレスリングであるし、真剣度と遊び(この遊びは真剣でもある)両方を兼ね備えているのだから、見事なプロレスである。
東京スポーツ制定の最高試合はそれはそれでいいのだが、僕好みではない。エルボーやチョップの打ち合い、大技が決まった後のダウン状態の長さ。あるいはハイスポット(見せ場)のお決まり感。これをこなしたら仕事をしました感とでもいうのだろうか。確かに限界まで行っているし、アスリートとしても申し分ない力量であることは事実だ。
プロレスラーはプロのレスラーである。古いと言われようが、ゆえにレスリングの攻防こそが試合の中にあるべきだと思っている。机上にダイブしてもいいが、スタントマンではなく、プロレスラーなのだから。
ロス道場の2人はデビュー戦だというのに、すでに個性が現れていた。またフィニッシュの逆エビは新日本プロレスのヤングライオンの象徴的な技であるが、逆エビしながらも、ブリッジを効かせるという新しさまであって、説得力十分であった。
日本のヤングライオンはプロレス的な動き、つまりそれはスポットやセール(やられ方)だが、そちらの方に目が行っている。早く、オメガのようになりたいのだろう。またエルボーばかりだ。実に個性を感じられない。北村は別腹だ。
現時点ではロス道場のヤングライオンの試合の方が断然上である。たった1試合しかしていないから拙速といえば拙速な評価だが。
両者の対抗戦を望むところだ。
加えて、1・4東京ドームで棚橋がスタントマンのプロレスではないプロレスをすることを期待している。