妻が抗菌の目薬が欲しいということで、病院に向かった。
1年以上経っていると、再診用の受付機では対応できないようで、正規の受付に並ぶことになった。僕の前には、50台半ばの夫婦がいた。なんかイライラしているように思った。
窓口のスタッフが普通に対応していたのだが、なんだか不穏な空気が流れている。思わず繁々と見てしまった。
僕なりの理解では、こんなやりとりがなされていた。
受付「何科を希望されているのでしょうか?」
患者「何科に行けばいいの?」「そちらの健診で引っかかったのよ」
受付「健診の結果で、どこが悪かったのですか?」
患者「それをこっちが聞いてるのよ」
受付「でしたら、検診結果の案内をお見せいただけますか。その検診結果という紙ですが」
ここで受付のスタッフが、その用紙を目で読みはじめた。それほどの時間はかかっていなかったと感じていたのだが、この夫婦、こんなことを二人で話していた。
患者妻「どうなっているの」
患者夫「どうせ派遣だから、わからないんだろう」
なんて差別的なものの見方だろう。僕は後ろで聞こえてしまい、腹が立っていた。コロナ渦で「医療従事者に感謝」などと言われているというのに。ということで、僕は妻に「医療従事者には感謝だな」と言ったりしてみた。もちろん妻ではなく、気持ちの上では、目の前のマウント夫婦に向かってだったのだが。
「どうせ派遣だから」って、社会は、このような医療事務は、派遣や請負が多いのだろうが、社会的に有意義な仕事をこなしているではないか。彼もまたコロナ禍でコロナに直面しながら、仕事をしてきたのではないか。
受付の男性に聞こえるように言ってさえいる。何をもって、見下しているのだろう。しかし、その男性スタッフは普通に対応していた。まあ、とにかく受付して僕の前から消えて行ってくれた。
で、僕の番だ。スムーズに受付してくれ、去り際に僕は「ありがとうございます」とだけ。ただ心の中では「大谷翔平が国民栄誉賞辞退したけど、みなさんが受賞だよ」と。
あんな態度を取られることも多いのだろう。抑圧された、差別的な眼差しや言動に晒されていけば、精神的におかしくもなってしまうのは必然だ。僕はどうにか「ありがとうございます」と発する程度しかできないと自戒してしまう。