TBSで「わたし、定時で帰ります。」というドラマを放送している。見てもいないので、当てずっぽうだけれど、これまでの日本の労働慣習に問題があることを引き出した上での、ヒューマンドラマということのようだ。
昨今、政府が主導する働き方改革が注目されている。そのため、企業や団体では野放しといってよかった時間外労働の是正に取り組むようになってきたようだ。
そこで少しばかり、日本人の時間の観念について言及してみたい。
日本人は時間を守ることで有名である。なんといっても、電車が定刻通り到着発車する。この規則正しさは日本人の誇りのひとつとさえなっているようだ。
待ち合わせしても、時間通りである。中南米やアフリカ諸国の人々が待ち合わせしたりすれば、2時間ぐらい遅れるのが当然だとも聞く。なんせ約束の時間になって、やっと起きて、それからのんびり待ち合わせ場所に向かうというし。最近はスマホもあるし、融通はきくとは思うが、日本人なら待ち合わせの時間を守るのは当たり前だ。
こんな例は枚挙にいとわない。総じて、日本人は時間を守る人々だと思われていると思う。
そこで、カナダで経験した時間厳守の例を思い出した。
トロント空港で手荷物を預けるのに並んでいたときのことだ。カウンターは3箇所しか利用できず、時間がかかっているようだった。東京行きの便だったので、半数以上は日本人であった。
まだまだ時間がかかると感じていたとき、カウンタースタッフの1人が作業をやめてしまったのだ。しかも交代がいない。待ち時間が長くなってしまった。その瞬間、日本人旅行者の雰囲気は不満爆発寸前という感じであった。ただ外国なので、クレームをいうものはいない。
さらに、そのスタッフは手荷物預かりの場所から2〜3歩離れたところで、偶然通りかかった別スタッフと談笑をしはじめた。日本人旅行者の中には「あんなところで喋ってるんなら、作業したらいいのに」と不満を漏らす者もいた。
どうも休憩時間のようであった。そのスタッフからすれば、休憩時間をどのように使おうが彼女の勝手なので、そこで談笑しようが自由ということなのだと思う。
確かに人々は不満を持った。しかしながら、飛行機に乗り遅れる者はいなかったし、時間的には余裕があった。だから、彼女は規則通り休憩に入っただけで、彼女に不満を持つのはおかしな反応でしかないわけである。
仮に、飛行機に乗り遅れるような者が出たとしたら、それは彼女の責任だろうか?勤務のシフトやスケジュールを設定する者や経営者側の問題だろう。僕たちは短期的に物事を見るだけなので、そういう点にまではなかなか思いが至らないものである。
彼女は時間を守っている。だから、時間の観念をきっちり有している。ところが、それに不満を抱いた日本人旅行者は自分の都合だけしか見ていない。そうすると、僕たちは時間を守る国民性を有しているとはいえ、それは時と場合によっては、問題のない他者に対して、そのような規律を過剰に要求する事を当然とする意識に支配されている。
ところで、冒頭テレビドラマをあげたけれど、僕たちは残業を当たり前のようにしてきたし、サービス残業もしてきた。ここを取り上げれば、僕たちは時間の観念を後退させている。そこにあるのは、組織といった上位にある規律の維持であった。
今このような規律が崩れはじめてきた。そこには個人が待ち構えているようだが、できればその個人を含めた共同体こそが規律の源泉になったらと思う次第である。