中京テレビの「ヒューマングルメンタリーオモウマい店」が面白い。何がいいのか考えちゃおうと思う。
いつも大盛りであったり、激安であったり、そんなお得なお店を紹介していて、出てくるお店の人が、面白い人たちだ。最近見た番組では、「お米では儲ける気はない」とかいうお店が出てきた。また、ちょっと乱暴な蕎麦屋が出てきて、実は蕎麦の達人で弟子が35人もいて、ADが勝手に弟子にされ、すごく上達してしまって、そのまま他店の取材に行って、学んだ蕎麦を作って絶賛されるという展開に、面白いという言葉では表現しきれない面白さがあった。
ネットで見ると、たまに批判的な言葉があって、「わかってないなあ」という感じというか、「いまの価値観だけで見てしまえば・・・」などと感じていた。例えば「衛生的には問題がある」とか、「食べきれない」とか、何とかである。「行かなきゃいいじゃん」それだけだ。なんだか経済評論家みたいのが、経済合理性を持ち出していて、馬鹿らしいとも思った。
僕がこの番組を見て、思い出すことがある。
僕は大学生になって、東京にやってきた。いまでは死語になってしまった苦学生という感じであった。もう30年以上前のことだ。ガスはめんどうくさくて契約さえしなかった。食事は学食、立ち食いそば、松屋、そんな感じだ。バイトをすぐはじめ、賄い付きだったので、晩飯はそこで。ちなみに賄い付のバイトを狙った。
ただ週1回の休みがあるので、その時晩飯は外食しなければならなかった。若い頃はどちらかというとよく食べるほうだったので、大盛りの飯が食べたかった。
アパートの近くに中華料理屋さんがあって、まあまあの金額である。麻婆豆腐が1000円ぐらいする、そんな感じだ。ところがひとつだけ安い肉野菜定食があった。確か650円である。これなら手が届く。ご飯の盛りもいい。
ということで、バイトが休みの時はその中華料理屋さんで肉野菜定食を食べていた。ご飯・肉野菜炒め(盛りがいい)・中華スープ・小鉢がセットである。毎週行くようになったので、店のマスターとなんとなく顔見知りになった。実は同じ北海道出身ということもわかって、なんだか嬉しそうにしてくれていたし、僕もそうだった。
ある時マスターが「なんでいつも同じものしか頼まないの?」と聞いてきた。僕は正直に「金がないから、申し訳ない」などと答えたんだと思う。そうしたら、小鉢を一品増やしてくれて、ご飯のお代わりしていいと行ってくれた。僕はご飯のお代わりをした。
次に行くと、小鉢が普通の皿の料理になっている。「頼んでないよ?」と僕がいうと、「いいから食べてよ」そんな感じだ。次に行くと、「何が食べたい?肉野菜定食の代金でいいから」と言ってくれた。僕はその言葉に甘えた。その店のメニューにない料理まで出してくれた。
同郷のよしみということなのだろうか、人情というやつだろうか、マスターの心遣いに感謝しかなかった。何もお返しもしていない。でもたまにそのことを思い出す。そのマスターの顔もおぼろげだが、目がウルウルしてしまう。
僕は「オモウマい店」を見るたび、当時を思い出してしまう。
(つづく)