集英社文庫
2019年5月 第1刷
2019年6月 第4刷
解説・斎藤美奈子
254頁
第155回直木賞受賞
家族の物語を6編収録
「海の見える理髪店」
結婚式を控え、理髪店の評判を聞きつけ遥々都会からやってきた青年
店主の独り語りで進む物語です
店主の過去に驚かされ、また最終盤にそうきましたか!
「いつか来た道」
折り合いの悪い母を13年ぶりに訪ねた娘
元美術教師で今は認知症が疑われる母が抽象画に込めた意味を知り、長く母の呪縛に囚われてきた娘が解放され、少女時代の自分と決別するラストが印象的です
「遠くから来た手紙」
結婚して3年
義母とマザコン気味の夫に辟易し幼い娘を連れて実家に戻ってきた女性
ある夜、突然携帯に届いた謎のメールと前後して見つけた若かりし頃今の夫と交わした手紙の束を読み返すことで、忘れていたあの頃の気持ちを思い出します
自分は結婚して3年どころか40年近くになりますが身につまされるところもあって反省しきりでした
「空は今日もスカイ」
アンソロジー「短編少女」に収録されていて既読です
わざわざ再読することは無いだろう短編
こういう機会に再発見があったりして面白いものです
初回より主人公の少女の心の動きがよくわかって切なかったですが彼女の未来に希望を感じました
「時のない時計」
父の唯一の形見の時計を修理に持ち込んだ男性
昭和生まれの父と息子の微妙な関係が時計屋さんの最後の言葉により「あらまぁ」
息子さん、気の毒でした
父親が生きているうちにもっと会話をしておけば良かったですね
「成人式」
15歳で事故死した娘のいた日々が忘れられずにいる夫婦
娘宛に届いた成人式のカタログに触発され、母親が“替え玉”として成人式に出席するというとんでもない計画をたてます
現実にはどうかという展開ですが娘の同級生たちのノリの良さに救われました
荻原さんのたくさんの引き出しから選りすぐりを集めた短編集
斎藤さんが解説で書かれています
これらの短編が書かれた2010年代は下り坂感の強い時代だった
各編の主人公がみなどこかで元気を失っているのも偶然ではないだろう
それでも過去に淫せず前を向け、とこの短編集は読者に促す
考え過ぎかなぁ。
ttp://todo23.g1.xrea.com/book/param.html?ttl=海の見える理髪店&auth=&gnr=&evl=
(頭にhを足してください)
荻原さんのことより門井慶喜「家康、江戸を建てる」が受賞を逃した理由に大きく肯いたのでした(;´∀`)