喫茶店(きっさてん)で、珈琲(コーヒー)を飲みならが時間を気にしている男がいた。そこへ、慌(あわ)ててやって来た別の男。どうやら、待ち合わせに遅(おく)れたようだ。席(せき)に着くなり遅れた男が言った。
「わるいな。すっかり約束(やくそく)を忘(わす)れてたんだ。ずいぶん待(ま)たせてしまって…」
「かまわないさ。こっちは暇(ひま)を持て余(あま)してるんだから。お前の方は忙(いそが)しそうだな」
「まあなぁ。やることが多すぎて…。どうでもいいようなことは頭から飛(と)んでしまうんだ」
「それはすまなかったなぁ。どうでもいいことに付き合わせて…」
「皮肉(ひにく)を言うなよ。ここは、俺(おれ)がおごるから…。で、何か話しでもあるのか?」
「別にたいしたことじゃないんだ。久(ひさ)しぶりにこっちへ来たんで、お前の顔でも見とこうと思ってなぁ。元気(げんき)そうで安心(あんしん)したよ」
「それは、どうも。お前も相変(あいか)わらずか? 仕事(しごと)は、どうなんだ?」
「まぁ、ぼちぼちさ。お前…、同期(どうき)だった斉藤(さいとう)のこと、覚(おぼ)えてるか?」
「ああ、何年か一緒(いっしょ)だったからなぁ。確(たし)か、名古屋(なごや)に転勤(てんきん)になったって聞いたけど…」
「あいつ、先月、亡(な)くなったよ。心筋梗塞(しんきんこうそく)だったらしい」
「ウソだろ…。あんな元気だったヤツが…。信(しん)じられないなぁ」
「働(はたら)き過(す)ぎだったんじゃないのかなぁ。それが原因(げんいん)で…。お前も気をつけろよ」
「ああ、そうだな。でも、分かってるんだけど、こればっかりは――」
<つぶやき>人生(じんせい)でいちばん大切(たいせつ)なもの、何ですか? いつも心の片隅(かたすみ)においておこう。
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