彼女には好(す)きな男子(だんし)がいた。彼女は、その彼に親(した)しげに話しかけたり、微笑(ほほえ)みながら彼のこと見つめたりして、<好きだよ。好きなんだよ>ってアピールを繰(く)り返していた。それなのに…。彼は、まったくそのことに気づかない。どうしてよ? 普通(ふつう)、気づくでしょ。これだけしてるのに、気づかないなんて…変(へん)よ。
彼女は決意(けつい)した。「こうなったら、告白(こくはく)しかないわ。でも…、そんな恥(は)ずかしいこと。ハードルが高すぎて、あたしにはムリだわ」
しかし、彼女にはもう選択(せんたく)の余地(よち)はなさそうだ。だって、もうすぐ卒業(そつぎょう)だから。卒業したら、彼に会うことなんか…ないかもしれない。ここは、やるしかないわ。彼女は覚悟(かくご)を決めて学校(がっこう)へ向(む)かった。
学校の玄関(げんかん)近くで彼がいるのを見つけた。彼女は、彼に近づこうとして足を止めた。彼の前に、他のクラスの女子(じょし)がいたからだ。その女子は、彼に手紙(てがみ)を渡(わた)そうとしていた。これは、まさか…。彼女は悔(くや)しそうに呟(つぶや)いた。「そういう手があったのか…!」
彼が手紙を受(う)け取ると、女子は校舎(こうしゃ)に駆(か)け込んで行った。彼は手紙を鞄(かばん)に入れると、彼女がいることに気がついた。彼は彼女に手を上げて言った。
「おはよう。今日は早(はや)いじゃないか。どうしたんだよ?」
彼女の決意は鈍(にぶ)っていた。このタイミングで、告白するのは…。どうなのよ?
<つぶやき>ここでひるんでちゃダメですよ。さっさと告白して、スッキリしちゃおう。
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