彼は出社(しゅっしゃ)すると自分(じぶん)のデスクに着いた。さて、仕事(しごと)に取りかかろうとしたとき、どういうわけか急に眠気(ねむけ)が襲(おそ)ってきた。彼は眠気を吹(ふ)き飛ばそうと、コーヒーを飲んでみたり、身体(からだ)を動かしてもみた。しかし、それでも眠気がさめない。
何でこんなに眠たいのか…。彼は考えてみた。昨夜(ゆうべ)は遅(おそ)くまで起きていたわけでもないし、毎日(まいにち)ぐっすり眠っているはずだ。妻(つま)に言わせれば、<よくそんなに眠れるわね>と嫌味(いやみ)を言われるほどだ。それなのに、何で今日はこんなに眠たいのか?
会社で居眠(いねむ)りをするなんて、これはあり得(え)ないことだ。そんなところを上司(じょうし)に見つかったら、査定(さてい)にどれだけ影響(えいきょう)するか分からない。彼は必死(ひっし)になっていた。せめて、昼休(ひるやす)みまでは何とか起(お)きていないと――。
どうやら彼は、いつの間(ま)にか眠ってしまったようだ。時計(とけい)を見ると、もう夕方(ゆうがた)になっている。周(まわ)りを見回すと、他の社員(しゃいん)はいつものように働(はたら)いていた。彼は思った。
どうして、誰(だれ)も起こしてくれなかったんだ?
目の前にあるパソコンのモニターには、いくつも付箋(ふせん)が貼(は)りつけてあった。彼はハッとした。そういえば、午後(ごご)から大事(だいじ)な会議(かいぎ)の予定(よてい)が入っていたはずだ。彼は立ち上がると、必要(ひつよう)な資料(しりょう)をかかえて会議室へ向かった。だが、会議室にはもう誰もいなかった。どうして、誰も彼を呼(よ)びに行かなかったのか? まさか、彼がいないことに気づかなかった?
<つぶやき>これは、何かの陰謀(いんぼう)なのかも知れませんね。彼を会議から排除(はいじょ)しようと…。
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