その出会(であ)いは運命(うんめい)だったのか…。まさか、こんな気持(きも)ちになるなんて思ってもいなかった。彼女は美人(びじん)じゃないかもしれない。でも、僕(ぼく)にとっては――。
それは、とあるパーティーに出席(しゅっせき)したときのことだった。着飾(きかざ)った女性が大勢(おおぜい)いる中で、ひとりだけ目に止まった女性がいた。彼女は地味(じみ)な服装(ふくそう)で、攻(せ)め感(かん)がまったくなかった。お相手(あいて)を探(さが)しにきてる人もいるのに…。僕はその人のことが気になって、ついつい目で追(お)ってしまった。彼女は、何となく落ち着かない様子(ようす)だ。場慣(ばな)れしていないことはすぐに分かった。彼女が会場(かいじょう)の隅(すみ)に座(すわ)ると、僕はさり気なく彼女に近づいて話しかけてみた。
彼女は驚(おどろ)いた顔をして僕を見つめる。でも、すぐに目をそらして俯(うつむ)いてしまった。
僕は彼女にささやいた。「ひとりで来たの? よかったら僕と話しませんか?」
彼女はか細(ぼそ)い声で、「いや…、それは…。あの……」
彼女はどうやら僕を避(さ)けているようだ。こういう感じの女性は始めてた。僕の知ってる女性は、ぐいぐいと迫(せま)ってくる人ばかりだったから。僕は優(やさ)しく声をかける。
「いいじゃない。僕もひとりなんだ。僕、山本(やまもと)といいます。あなたは?」
「あの…、あたしは…。そういうのは、ちょっと…」
「えっと…。僕は別(べつ)に、ナンパとか、そういうのじゃないから。安心(あんしん)して」
彼女は怯(おび)えた目をして立ち上がると、僕の前から逃(に)げ出してしまった。
僕は彼女のことが頭から離(はな)れなくなって…。彼女のことを見つけようと、捜(さが)し始めた。
<つぶやき>見つけて、どうするのよ。これが運命の出会いなのか…。それは分かんない。
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