それから間(ま)もなく、結衣(ゆい)は息(いき)を引き取った。あまりにも突然(とつぜん)のことで、吉乃(よしの)は何もやる気になれなくなった。葬儀(そうぎ)が終わると、結衣の家族(かぞく)は引っ越して行った。
しばらく学校を休んでいた小木(おぎ)君が登校(とうこう)してくる。吉乃は彼のことが気になって、何かにつけておしゃべりなどするようになった。心に空(あ)いた穴(あな)を埋(う)め合っていたのかもしれない。二人の距離(きょり)はおのずと近づいて、付き合うようになっていった。
そんな時、急に小木君の態度(たいど)が変わってしまった。吉乃がいくら誘(さそ)っても、一緒(いっしょ)に帰らなくなったのだ。そして、日がたつほどに小木君は体調(たいちょう)を崩(くず)していった。悪(わる)い病気(びょうき)になってしまったのか、吉乃は不安(ふあん)になった。
放課後(ほうかご)、吉乃は気になって小木君の後をつけてみた。下校(げこう)時間になると、小木君は教室(きょうしつ)を出て行った。そして、帰らずに誰(だれ)もいない美術室(びじゅつしつ)へ入って行く。吉乃はそっと美術室を覗(のぞ)いてみた。すると、そこには女の子が待っていた。背(せ)を向けていたので、吉乃にはそれが誰なのか分からなかった。小木君は、女の子に声をかけ近寄(ちかよ)って行く。
吉乃はため息(いき)をついて呟(つぶや)いた。「やっぱり…私じゃ…」
吉乃がまた覗いてみると、女の子が振(ふ)り返った。その顔を見て、吉乃は思わず息を呑(の)んだ。それは、死んだはずの結衣だった。小木君は結衣と抱(だ)き合い、口づけを交(か)わした。
<つぶやき>彼への思いが強すぎて、幽霊(ゆうれい)になってしまったのか…。これは、怪談(かいだん)なの?
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