雄介(ゆうすけ)は窓(まど)を叩(たた)く音で目を覚(さ)ました。どうやら勉強(べんきょう)の途中(とちゅう)で寝(ね)てしまったようだ。また、窓を叩く音。雄介は首(くび)を傾(かし)げならがカーテンを開けてみる。すると、窓の外のベランダに女の子が一人。その女の子はにっこり笑(わら)うと、ここを開けてという仕草(しぐさ)。
雄介は驚(おどろ)いた。でも、ちょっと可愛(かわい)い子だったので、思わず窓を開けてしまった。これは、男の性(さが)というやつだ。女の子は部屋(へや)へ飛(と)び込むと言った。
「灯(あか)りが見えたから来ちゃった。ねえ、ここにいてもいい?」
雄介は一瞬(いっしゅん)言葉(ことば)を失った。何をどう言ったらいいのか思いつかない。女の子はベッドの上に飛び乗ると、楽しそうに飛びはねた。雄介は何とか彼女を落ち着かせると、
「君(きみ)はだれ? どうやって入ったんだよ。ここは、三階だぞ」
女の子は言った。「あたし、龍子(りょうこ)。しばらくお世話(せわ)になるわね。よろしく」
「いやいやいやいや、それはダメでしょ。そんなこと、家族(かぞく)にバレたら――」
「気をつかわなくてもいいのよ。あたし、寝る場所(ばしょ)があれば、それでいいんだから」
「ここで寝るの? いやいや、それはまずいしょ。母(かあ)さんに見つかったら――」
「いいじゃない。あたし、全然(ぜんぜん)平気(へいき)だから」龍子は雄介の顔をしげしげと見つめてから、満面(まんめん)の笑(え)みで言った。「人間とおしゃべりするなんて三百年ぶりよ。何か、楽しい!」
<つぶやき>彼女は何者(なにもの)なのでしょう? どうしてここに来たのか、想像(そうぞう)してみて下さい。
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