みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0054「妖怪樹」

2017-07-23 19:25:14 | ブログ短編

 森(もり)に囲(かこ)まれた小さな庵(いおり)。ここには風変(ふうが)わりな占(うらな)い師(し)が住んでいた。仕事(しごと)に行き詰(づ)まった男が、この場所(ばしょ)に引きつけられるようにやって来た。
「ほんとうに、こんなことで仕事がうまくいくんですか?」
「これはヤルキの種(たね)です。これを身体(からだ)に付(つ)ければ勢力(せいりょく)がみなぎり、仕事で成功(せいこう)すること間違(まちが)いなし。ただし、使用期間(しようきかん)は半年間です。半年後には、必(かなら)ずはずしに来て下さい」
 占い師は男の腕(うで)に種を押(お)しつけた。すると、種はホクロのように腕に張(は)り付き取れなくなった。男はこの日を境(さかい)に、精力的(せいりょくてき)に仕事をこなすようになった。成果(せいか)はみるみる上がり、平社員(ひらしゃいん)から部長へと異例(いれい)の昇進(しょうしん)をとげてしまった。
 半年たったある日、男のもとに一通(いっつう)のはがきが舞(ま)い込んだ。それはあの占い師からの警告(けいこく)の手紙(てがみ)で、種をはずしに来るようにと書かれていた。男は気にもとめずに、ゴミ箱に投(な)げ捨(す)てた。男は金(かね)も地位(ちい)も手に入れて、有頂天(うちょうてん)になっていたのだ。
 数日後、男は身体に異変(いへん)を感じた。頭(あたま)の上に小さなこぶが突(つ)き出て、それが日に日に大きくなっているようなのだ。男は慌(あわ)てて、あの占い師の庵を訪(おとず)れた。
「警告したはずですよ」占い師はそう言うと、「まあ、多少不便(たしょうふべん)なことはあるかもしれませんが、寿命(じゅみょう)も数百年は延(の)びましたし、この森にはお仲間(なかま)も大勢(おおぜい)いますから安心して下さい」
 男は頭がむずがゆくなってきたので手をやると、そこには小さな芽(め)が出始めていた。
<つぶやき>あまり欲張(よくば)りすぎるのはやめましょう。ほどほどが、ちょうどいいかも…。
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