楽しむことが最優先

庭で花や野菜を育てて楽しむ北海道民です。
趣味関連を中心に日々のあれこれを、
マイペースに綴って行くつもりです。

ベストを尽くすのは今じゃない

2023-09-28 17:30:00 | 日記
本日は早く仕事が終わりました。

庭の果実も色づき始めたし、
今月末は秋の収穫祭かな。



まだ午前中。
天気は悪く、少し肌寒い。

……部屋着用の、
長袖のTシャツとか欲しいかも。



そんなわけで買い物に来ました。

今秋の流行はニットのタートルと、
長めのジレベストのようです。

とは言え、今日の目的は部屋着。

どうせならロングTシャツにしようか。
これなら膝までポカポカ暖かそう。

のんびりと買い物を楽しんでいると、
フードコートから手を振る二人組の姿が。


「おーい、ミルくんじゃない?」

どうやら知り合いのようです。
しかし、誰だかわからない……

お願い
サングラスを外して

秋とはいえ、まだ日差しも強いからね。
サングラスをかけたい気持ちもわかります。

でも

顔がわからねぇ……


サングラスを外してもらって、ようやく理解。

創作サークルで一緒だった仲良し夫婦。
確か服飾関係で参加していたはず。

相変わらず仲が良いみたいで、
今日も似たような服装で買い物のようです。


「もうすぐハマショーのライブがあってね
 今日はそのための服を見に来たの」

「へえ……
 気合いが入ってますね」

「そうなの‼︎
 今から待ちきれなくて、
 2人で、にわかハマショーやってるの‼︎」

そのサングラス、コスプレかよ


「私はライブの度に下着を新調するの
 いわゆる勝負下着ってやつね
 派手めな下着で気分を盛り上げるのよ」
 
「楽しそうで何よりです
 そういえば自分も、もうすぐライブです」

「まあステキ‼︎」

「自分の場合は仕事の付き合いで、
 普段はあまり縁のないジャンルの
 ゴスロリバンドに行くのですが……」

「だったら無理にでも、
 テンション上げなきゃね‼︎
 はいこれ、プレゼントしちゃう‼︎」

「えっと、これは──……」

「私の勝負下着」

絶対にいらない


「大丈夫よ、たくさん買ったから」

「いや、そういう心配ではなくて……」

「フリーサイズよ」

サイズの心配でもねぇ


「あのね、ミルくん
 これは大切な話だから、
 しっかりと聞いて欲しいの」

「は、はい?」

「ゴシックもロリータも、
 基本的に肌の露出はしないものよ
 人形のように着飾って、
 人間の肌の部分は極力隠すのよ」

「へえ……」

「ただし、ひとつ例外があるの」

「え」

「絶対領域は全てを凌駕する」

真顔で力説するな




「ミルくんも、にわかとはいえ、
 ゴスロリの世界に入るなら心得て」

「え、えっと……」

「ミルくんなら大丈夫、ノリもいいし
 このガーターベルトも似合うわ」

袋の中身、ガーターベルトかい


「ミルくんもひとつくらい持ってないと
 それが紳士の嗜みだからね」

どんな紳士だよ

それ、自分が知っている紳士と違う。


「ところでゴスロリの衣装は万全なの?」

「黒いタートルと黒いズボンの上から、
 黒い着物を羽織ろうかと思います
 アクセサリーはハロウィン用の、
 コウモリのやつを付けようかと──……」

「甘い‼︎」

「⁉︎」

「甘いよ、甘すぎる‼︎
 どうせメイクだって黒いアイライナーを、
 ちょっと太めに引いておけば大丈夫、
 とか適当なこと思ってるでしょ?」


まさにその通りです

え……

何で?
何で見透かされてるの?

アイライナー買ったところまでバレてる。


「全然なってないね‼︎
 コスプレ歴30年の私たちから見れば、
 そんなの園児のお遊戯以下だね‼︎
 そもそもゴシックやロリータは、
 コスプレではなく──……

「え、あの」

どこから突っ込めば


「そうと決まれば行くよアンタ‼︎
 ミルくんに叩き込むことが山ほどある‼︎」

「ちょっ……⁉︎」

「ゴメンねミルくん
 俺たち今、ライブ前だからさ
 テンションが妙な方に上がってて」


本日のハイライト

にわかハマショーから、
ガーターベルトを贈られる

そして

そのまま連行される




「今はもう使わないアイテム持ってきたし、
 手持ちのアクセサリーと合わせましょう」

「帯の代わりにベルトにしてみない?
 この組み合わせなら、
 トップスは白がいいかもね」


当日使う予定の衣類を前に、
熱く議論を交わす、にわかハマショー夫妻。

どうしよう
どんどん派手になる


これ着るの?
本当に着るの?

自分、あまり目立つこと、
得意じゃないんだけど──……

やや震える手で、お茶の準備

そうだ
料理をして気持ちを落ち着けよう……




家にあるリンゴを使って──……



ひとくちサイズに切ったリンゴを、
砂糖とシナモン、レモン汁で煮込む。

目指すはトロッとした中にも、
サクサク感が残る絶妙なバランス。

カスタードクリームとレーズンを、
軽く和えたら中身は完成、あとは焼くだけ。





「アップルパイ焼きましたんで、
 一休みして、お茶にしませんか?」

「あら助かるわ
 甘いものが欲しい気分だったの」

パイを齧りながらも、彼らの論議は続く。


「今、ミルくんに似合いそうな、
 メイクについて話していたのだけれど」

「あ、はい」

「ファンデはこれ、シャドウはこっちね
 リップと付けまつ毛は──……」

用意が良すぎる

話だけじゃないんですか
もう、物理的に用意済みなんですね


「基本は黒と赤を使うんだけど──……
 ミルくんは目の色に合わせて、
 ブラウン系でぼかそうかなって
 差し色は暗めのくすみ系ピンクかな」

「マスクをするなら、
 色は絶対に黒にしてね」

自分の周囲には社長を始めとして、
スタイリストキャラが多すぎる。


「見て、ミニハットに力を入れたの
 少し斜めにつけるのがポイントよ」

ミニ感を感じさせぬ質量





ちょっ……

力を入れすぎて、
こっちが本体って言われるやつ


「チョーカーはコレね
 追いレースで奮発したから、
 これひとつで十分盛れるわ」

手加減してください

レースが多すぎて、
トップスの大半が隠れます……





「まぁ……贅沢を言えば、
 白系の総レーストップスを来て欲しい」

贅沢言うんじゃありません

「意外と着こなせると思うよ?
 黙っていればクールに見えるし
 喋ったらアウトだけど

「そうよ‼︎
 ライブは初対面ばかりなんでしょ?
 ミルくんの中身なんて、
 話さない限りわからないんだから
 黙っていれば大丈夫‼︎

どういう意味だ


「カメオ風リングとバラのピアスもあるよ
 黒バラのロングネックレスは、
 腰に巻いても格好良いかもしれない」

「あ、はい」

「ふふ……
 お互い、当日が楽しみね」

「ははは……おかげさまで……」





どうしよう

社長と話した時よりも、
遥かに進化を遂げてしまった……

ここまでガチになる予定、なかったのに

社長、驚くだろうな……


いや、むしろ
この際だから

全力で驚かせに行くか