朗読会って、ただ本を読んでいる人を観てるだけで眠たいしあまり面白くないと、誰かが言ってた。
正直、私も、ちょっと思う。
知り合いが出ていて、作品が面白そうで、時間に余裕があって、チケット代もお安くて、と、いろんな条件をクリアしてやっと、じゃあまあ観に行こうかとなる。
そんな朗読公演を、京都のPアクト文庫は、毎月開催している。そして、50回を迎えたそうだ。
50回というと、4年以上続いていることになる。
一回の出演者は三人。照明も音楽もない手作りの空間で、これはすごいことだと思う。
そのすごいの一番が、毎回違う作品を引っさげて出演してきた女優の飛鳥井かゞりさんだ。
飛鳥井さんの朗読が聴きたくて通ってくるお客さんがいて、Pアクト文庫は50回も続いたんだと、私は思う。
飛鳥井さんの素敵な朗読が聴けるのだから、ほかに知り合いが出てなくても、作品が何かわからなくても、時間をちょっと無理しても、チケット代はお安いし、じゃあ、行こうか!となるだろう。
私も10回以上は観に行ったと思う。出演も三回させてもらった。
先日の50回記念公演で、飛鳥井さんは、今まで読んだ中でリクエストの多かった芥川龍之介の「雛」を読むというので、これはぜひ聴かなくちゃ!と、行ってきた。
Pアクトで飛鳥井さんが読んだ作品のなかで、私も一番印象的だったのが、この作品だったのだ。
物語は、老婆が語る子供の頃の思い出だ。
昔は裕福な家柄だったが、明治以降没落し、お金に困って大切にしていた雛人形を外国人に売ることになる。子供だった老婆は、せめて売り渡す前に一目見たいと父に頼むが、手付けを貰った以上、他人のものだと断られる。何度頼んでも父は聞き入れてくれない。
だが、引き渡す前の日の夜、ふと目を覚ますと、寝巻のままの父が枕もとで雛人形を出して飾っていた。行灯のほのかな明かりに照らし出された雛人形と父の横顔…。
冒頭、「これはある老女の話である」と飛鳥井さんが静かに語りだすと、もう物語の世界だ。
土間の暗がりや行燈の仄暗いあかり。少女の、父の、母の、兄の、それぞれの悲しみ、せつなさ、やさしさ…。いろんな伏線が絡まって、どんどん引き込まれていく。
最後の父がお雛様を次々と並べていく場面では、もう涙が止まらない。
芥川、作品構成、憎い、あざとい、上手すぎるぞ(笑)。
私は耳からの読解力がなくて、聴いただけでは意味がわからないことがほとんどだ。
あとで本を読んでああそういうことかと理解する。
でもこの「雛」だけは、飛鳥井さんの声で完成してしまった。
ああ、飛鳥井さんの朗読は別格だ、いいなあ。
これに、内田百閒の「冥途」が付いて(森嶋さん、おまけあつかいでスミマセン。百閒の不思議世界、私も大好きです)、500円。満足の朗読会だった。
Pアクトブログ
正直、私も、ちょっと思う。
知り合いが出ていて、作品が面白そうで、時間に余裕があって、チケット代もお安くて、と、いろんな条件をクリアしてやっと、じゃあまあ観に行こうかとなる。
そんな朗読公演を、京都のPアクト文庫は、毎月開催している。そして、50回を迎えたそうだ。
50回というと、4年以上続いていることになる。
一回の出演者は三人。照明も音楽もない手作りの空間で、これはすごいことだと思う。
そのすごいの一番が、毎回違う作品を引っさげて出演してきた女優の飛鳥井かゞりさんだ。
飛鳥井さんの朗読が聴きたくて通ってくるお客さんがいて、Pアクト文庫は50回も続いたんだと、私は思う。
飛鳥井さんの素敵な朗読が聴けるのだから、ほかに知り合いが出てなくても、作品が何かわからなくても、時間をちょっと無理しても、チケット代はお安いし、じゃあ、行こうか!となるだろう。
私も10回以上は観に行ったと思う。出演も三回させてもらった。
先日の50回記念公演で、飛鳥井さんは、今まで読んだ中でリクエストの多かった芥川龍之介の「雛」を読むというので、これはぜひ聴かなくちゃ!と、行ってきた。
Pアクトで飛鳥井さんが読んだ作品のなかで、私も一番印象的だったのが、この作品だったのだ。
物語は、老婆が語る子供の頃の思い出だ。
昔は裕福な家柄だったが、明治以降没落し、お金に困って大切にしていた雛人形を外国人に売ることになる。子供だった老婆は、せめて売り渡す前に一目見たいと父に頼むが、手付けを貰った以上、他人のものだと断られる。何度頼んでも父は聞き入れてくれない。
だが、引き渡す前の日の夜、ふと目を覚ますと、寝巻のままの父が枕もとで雛人形を出して飾っていた。行灯のほのかな明かりに照らし出された雛人形と父の横顔…。
冒頭、「これはある老女の話である」と飛鳥井さんが静かに語りだすと、もう物語の世界だ。
土間の暗がりや行燈の仄暗いあかり。少女の、父の、母の、兄の、それぞれの悲しみ、せつなさ、やさしさ…。いろんな伏線が絡まって、どんどん引き込まれていく。
最後の父がお雛様を次々と並べていく場面では、もう涙が止まらない。
芥川、作品構成、憎い、あざとい、上手すぎるぞ(笑)。
私は耳からの読解力がなくて、聴いただけでは意味がわからないことがほとんどだ。
あとで本を読んでああそういうことかと理解する。
でもこの「雛」だけは、飛鳥井さんの声で完成してしまった。
ああ、飛鳥井さんの朗読は別格だ、いいなあ。
これに、内田百閒の「冥途」が付いて(森嶋さん、おまけあつかいでスミマセン。百閒の不思議世界、私も大好きです)、500円。満足の朗読会だった。
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