ムーン・パレス

新しい作品を書いていて、行き詰まったり横道に逸れて行ってしまったりした時、
昔読んだ小説や映画が、今書いているものに重なるように浮かんでくることがある。
「ラヴィのいる部屋」というラジオドラマを書いていた時は、リチャードブローディガンの「愛のゆくえ」という小説で、「森蔭アパートメント」の時は「バグダットカフェ」という映画だった。
それでその本を読み直したりＤＶＤを見直したりして、あれ、こんなストーリーだったのかと記憶の違いに気が付くのだけど、それはそれでそこからまた別のイメージがわいてきて、書いている作品を新しい展開に導いてくれたりするのだ。

今、再来年に上演してもらう予定の作品を書いていて、「月」にこだわって書いているうちに浮かんできたのが、ポール・オースターの「ムーン・パレス」で、友人が、「きっと好きだろう」とくれた本だ。
読むのがめんどうになるような分厚い本で、もらった時は斜め読みをして「ああ、男の子の青春小説だな」と打ち捨ててしまったのだけど、「月」といえば、そんな小説があったっけと思いつき、本棚を探したけど見当たらず、改めて文庫版を買って読み直してみた。

端的にいってしまえば、親子三代における父親を知らない男たちの物語だ。
不思議な本で、そこここにストーリーと関係ないような与太話や挿話が入ってくるからめんどくさくなって飛ばし飛ばしに読んでいると突然核心に入っていたりする。
そんな都合のいいことってあり？と思うような偶然が人生を左右する出来事だったりするし、
そうなると、偶然だと思っていたものも必然であるようにもみえてくる。
そんなことの連続で、なんだかわからないうちに読み終わってしまったのだけど、
結果として、友人が私が好きだろうとくれた本は、やはり結構おもしろかった。

孤独な主人公にはいつも天啓のように救いがやってくる。
救われない最後も、空を見れば月が出ていて、読者にはそれがこれから開けていく主人公の未来のようにも思えてくる。
孤独でも、すべてを失っても、救いはきっとあるのだと思わせる「月」の存在…。
いろいろ考えているうちに今回の自分の作品の新しい展開もちょっと見えてきた。


好きな映画や小説には、あとになってよみがえってくる素敵なシーンが必ずある。
「ムーン・パレス」にもいくつか好きなシーンや挿話があった。
とりわけ好きだったのは、主人公と、のちに祖父だとわかる気難し屋の老人が、雲一つない春の宵に、ぼろぼろの傘をさして歩く黒人青年と出会うシーンだ。
三人は、空想の雨を楽しみながら、三者三様の上機嫌さでしばし連れだって歩いていくのだ。
死期を間近にした金持ちの車いすの老人と、それを押す貧乏な主人公と、見ず知らずの黒人青年。
もしかしたらこれがこの作者が言いたかった本質なのかもしれないなと思わせるほどに、切なく美しく心に残っている。

布が好き

小さな頃から布が好きだった。
押入れの奥から出てきた木綿のふろしき。ベージュとピンクのチェックで、何度も洗って色あせた感じが夕焼けのようで、本当にきれいな色だと思い、テーブルの上に広げたり、身にまとったりして遊んでいた。
小学校低学年の頃、祖父のコートを母が私のコートにリメイクしてくれたことがあった。
灰色っぽいミックスツイードで、色とざっくりした手触りが大好きで、身体が大きくなって、前のボタンが嵌められなくなっても妹に譲りたくなくて、未練がましくいつまでも着ていた。
麻やコットン、キュプラやベルベット、カシミヤやアルパカ、シルク、アンティークレース…。
お金がない場合は、新しい安物よりも、ぼろくても色と手触りを優先して上等の古着を買っている。

更紗模様が好きで集めたりしていた。
古渡更紗、ジャワ更紗。何千円もする小さな古い布の端キレを買ったこともあった。
でもコレクターというわけでもなくて、買ったらそれで満足してどこにいったかわからないということもある。

布好きから着物にも興味を持つようになった。
東寺の骨董市で、モスリンの帯を見つけた。
このねむたいむの一番最初（前にも引用したけど１３年も前に書いたものだ）、「骨董市でみつけたもの」という記事のなかで書いているモスリンの帯。秋の柄なので、春の朗読会には着れないなあ。

着物で外出するのは、ほんとはあまり好きではない。意識過剰で悪目立ちするような気がするのだ。
タクシーの運転手さんなんて、むちゃくちゃ褒めてくれたりする。恥ずかしい。
オトナの倶楽部活動を作って着物で外出するようになり、普段から着物を着ているえびちゃんやだんだんに着物熱が本格化してきたゆうこちゃんに感化されて少しは慣れてきたけど、まだまだ自分としては仮装して外に出るような感覚なのだ。それに、なんていうか、着るのがめんどくさい。

外では大抵無地感覚の着物に更紗の帯を合わせている。紬は布として大好き。志村ふくみとか機織りとか植物染とか、興味を持って本ばかり読むけど、実際にはやっぱりめんどくさくて出来そうもない。

外には着ていけないけど、アンテークの着物の柄やとろりとした手触りも好きだ。
こっそり楽しみむだけだったのだけど、今度の朗読会には自分や誰かの衣装としてお披露目できそうだ。

出演者の着物のコーディネートはえびちゃんにお任せだけど、私の衣装は私が決める。

4月の朗読会は、作品と同時に、衣装の方も楽しんでいただけたらいいなと思う。

「なつしろぎくのお茶」初顔合わせ

昨日、来年4月２０日（土）に予定している朗読会の朗読者全員が集まった。
それぞれの声、読み方、雰囲気を見て、どの人に何を読んでもらうか、何を書き足したらいいかを考えたかったので、ちょっと早めの顔合わせとなったのだ。
ひとつだけ完成していた作品を、私も含めた出演者6人で読んでみた。
来られなかったアコーディオン担当のみーちゃんに聞いてもらうため、部分的に録音も。
それぞれの個性や特徴が読み方に出ていて、なかなか楽しかった。
あの作品はこの人かな、あれはこの人だなと、画策中。

「星みずく」を立ち上げてからいくつかの作品をギャラリーやカフェで上演してきたけれど、
今回は星みずく主催ではなく、えびちゃんとゆうこちゃんと三人で作った「オトナの倶楽部活動」主催だ。
一昨年、私としてはそれまでで一番大きな公演となる「灯屋・うまの骨」という舞台のプロデュースして、そのことで、人にスムーズに動いてもらわなければならないプロデュースというものが、自分にはまったく向いてないのだということがはっきりとわかった。
白状すると本番前の数日は微熱が続き、呼吸困難になるほど心拍数が増え、安定剤や睡眠薬のお世話になってしまった。
計算に弱い。我慢弱い。打たれ弱い。甘やかされたい。ゆるゆるしたい。責任は取りたくない。そういう性格なのだ。

ということで、今回は制作はゆうこちゃん、衣装稽古スケジュールはえびちゃんにまかせて、私は書いて読めばいいだけと言うことになって、もうそれだけでうれしい。
ゲスト3人は、気心の知れたかばさんと、一度は出演してもらいたかったあやこさんと肉戸さん。
そしてアコーディオンを弾いてくれるみーちゃんは、いつも頼りにしている存在だ。
今回は全員女性。公演までに、またそれぞれおいおい紹介させてもらいます！

写真は向かって左から肉戸さん、えびちゃん、私、あやこさん、かばさん。
ゆうこちゃんは撮影者だったので別に１枚。変な角度から私を激写しようとしているゆうこちゃん。

そして会場となるのは、大阪茨木市にある玉屋・月心庵という和風喫茶。
表は結納と和雑貨のお店なのだけど、奥がピアノもあるカフェになっている。
ちょっとわかりにくい商店街の奥まった場所にあって、以前星みずくでも使わせてもらった。
これはその時の写真。

月心庵の経営者というか店長さんはシャンソン歌手でもあります。これはこの間ライブにお邪魔した時の店長さん。

言っておきますが、男性です。とても気さくで、私としてはちょっと苦手でちょっと好き(笑)。
4月の公演には、東京からゲストもお招きして、いろいろプラスで楽しいことも考え中。
こうご期待！

そんな盛り沢山で、お茶・お菓子も付いて、１０００円の予定。
まだチラシもチケットも作ってないのだけど、一日だけの、昼夜の二回公演で一回に入れるのは２５人程度なので、プラチナチケットになるはずです(^^♪。
ゆうこちゃんが予約フォームを作ると言ってますが、それぞれ出演者はいつでも受け付けますので、まだまだ先と言ってないで、その日、絶対に行く！という方は、ぜひ早めのご予約を❤。