好きなのは柔らかな皮だ。小学校の一年生の時に、赤い皮のペンケースを買ってもらった。それが気に入って、ファスナーが壊れて使いものならなくなるまで10年以上も使っていた。戯曲で賞金を手にしたとき、アニエスベーの皮のコートが欲しいと思った。羊皮のSサイズの20万もする皮のコート。店員さんが宝物を扱うような手つきで着せてくれた。なんて柔らかな皮!それにぴったり。でもやはり20万のコートは分不相応だと思ってやめた。かわりにBindexの赤い皮の手帳を買った。B5版のルーズリーフ式のものだ。以後、その手帳に、思いついたことを書きつけたり、ファイルしたりしている。作品の構想、好きな本や映画のこと、印象に残ったことばの断片、想い出の写真やチケット…。時々ぱらぱらとページをめくる。書きつけたまま忘れていた1行から、新しい作品が生まれることがある。しなやかな皮の手帳の手触りは、子供の頃好きだったペンケースを思い出させる。
ところで、買うのをやめた皮のコート。あのあと、偶然古着屋で同じアニエスベーの小さなサイズの皮のジャケットをみつけて格安で買った。でも、しっくりこなくて、あまり着ていない。いまだに欲しかったコートのことを、思い続けている。
ところで、買うのをやめた皮のコート。あのあと、偶然古着屋で同じアニエスベーの小さなサイズの皮のジャケットをみつけて格安で買った。でも、しっくりこなくて、あまり着ていない。いまだに欲しかったコートのことを、思い続けている。