流川の桜並木を後にして、野倉へ向かう途中、無性に腹が減ってきた。
気付けば、正午をとっくに過ぎている。
空きっ腹のままハンドルを握っていると、≪かつ丼≫の三文字が飛び込んできた。
「何だか、カツ丼食いたくなった。ここでよか。ここに入るぞ。」
空腹のあまり、当てもなく飛び込んだのは、豚カツ専門店のようだ。
見知らぬ店。果たして、吉と出るか凶と出るか。
オーダーしたのは、
家内は、王道のロースカツ定食。
私はと言えば、
「カツ丼にしようかな。」
「当店のカツ丼は玉子でとじてなくて、醤油ダレで食べるカツ丼ですよ。」
「ふーん。面白そう。それ下さい。」
「お待たせしました。ロースカツ定食でーす。」
まあ、見た目普通だね。
「ロースカツ丼でーす。」
こちらは、尋常ではない。
店員の言う通りだ。
玉子の衣の代わりに、大根おろしを身に纏っただけの、あられもない姿で横たわっている。
まあ、
早い話が、ソースカツ丼の醤油版である。
ちゃんとキャベツと味噌汁も付く。
キャベツは大盛無料だ。
大根おろしをたっぷり乗せて、
あーん、
パク
お!!
こりゃ…
目の前の家内も、目を丸くしている。
「これ、柔らかくて、」(家内)
「ジュシー! 旨かぞ、ここ。」(私)
醤油ダレは、豚カツに相性ピッタリ。
ご飯に敷き詰められた、鰹節と大葉もいい仕事をしてる。
このカツ丼……ありだ。
飛び込み、
大正解!