浮羽で買い物などを済ませ、国道を久留米方面に走っていると、
「ほら、ここ。前から気になっとるたい。昼飯ここにすっぞ。」
『肉屋一ノ剱』
やたらと漢字変換に手間取る店名である。
店内に入ると満席状態だ。
(仕方ない。待つしか無いか)
「すんまっしぇーん。カウンター席でよろしければ・・・」
「よろしけりますです。」
案内されたカウンターには、由緒正しげな包丁が置かれている。
とうやらここが、焼き上がった肉を切り、盛り付けをする場所らしい。
この店の見せ場と言い換えてもいい。
まことに眺めが良い席である。
さて、初めての店だ。
何を選ぶべきか。
メニューを開きながら、しばらく厨房を窺っていると、どうやらステーキ丼が人気のようだ。
「和牛ステーキ丼、普通盛りで。」
「ハーイ。」
ステーキが焼き上がると、店長らしき人物が目の前の高級包丁をつかみ、そぎ切りしていく。
女の子がそれを丼に手際よく並べ、最後に卵黄を乗せて、
「和牛ステーキ丼でーす。」
ワオ!
何たる美しさ。
これはもう一幅の絵画である。
さてと、
眺めるだけじゃ、腹は満たされぬ。
黄身潰しの儀式を済ませ、
肉でご飯を巻いて
もぐ
どうにもこうにも、
うめえのなんのって。