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Tシャツとサンダルの候

目くるめく誘惑

東与賀干潟で野鳥を見た帰り、一箇所、立ち寄りたい場所がある。


帯隈山

エヒメアヤメの自生地である。

一般公開されるのは、今年はこの日が最後との事。



最盛期は過ぎてしまったようだが、まだまだ沢山の株で、私達の目を楽しませてくれた。





帯隈山を後にして、車を走らせていると、衝撃的な文言が目に飛び込んできた。


ひ、人妻???

人妻プリンですと?


「は、入ってみるぞ。」


目くるめく誘惑に、フラフラと駐車場に入り込む私。



車を降りるとそこには、妖艶な微笑みを浮かべる人妻の写真と共に、インターホーンが。

ドライブスルーのシステムのようだ。

何だこの、『私を見てお話し下さい』とは。

怪しすぎる。

呆然と立ち尽くす私に、


「お店に入ってみればいいじゃん。」(家内)

「なるほど。」(私)



表に回ると、どこから見ても健全なお寿司屋さんである。

するってえと、、、寿司屋で人妻で、えーっと、私を見ての???

とにかく入ってみよう。


「ごめん下さーい。」



うむ、寿司屋である。

付け加えると、あの写真の人物ではなく、私と同年配のご婦人がレジにいるだけである。


「いらっしゃいませ。食事ですか?」

「あ、いや。人妻を・・・」

「プリンですね。そちらにメニューがあります。」



壁に、外と同じメニューが貼ってある。

真由美に、よしえに、慶子に、いずみに、陽子に、美穂・・・


「あのー、これって全部実在の人妻?」

思わず、プリンの中身と全く関係の無い質問をする私。

『そんなこと聞いてどうする!』

そう言いたかったに違いないが、こんな愚かな客にも、丁寧に答えてくれる店員だった。


「ええ。ここのおかみさんや、仕入れ業者さんとかですね。」

「ははあ。」


結局、おのれの質問の無意味さに気づいただけである。



プリンの取り出しはセルフサービス。

「お気に入りのものをお取りになって、カウンターまでお持ち下さい。」



顔も知らない人妻の誘惑は、

普段プリンなど食べない私をして、4個も買わせてしまう。



「店の思惑に、まんまと嵌められとるやん。」(家内)

「プ、プリンが食べたくなったんじゃ!」(私)


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