柳川と聞いて思い浮かぶのは、川下り舟がのんびりとお堀を巡る風景だろう。
御花のすぐ前に乗船場がある。
受付で待ち時間を聞いてみた。
「全然混んどらんです。次の船にすぐ乗れます。」
観光名所の柳川。
ゴールデンウィークとくれば大混雑!
そう信じて疑わなかったのに、
「連休中はツアー客が減るとですよ。川下りは逆に暇でして。」
大声で喚き散らす何処かの大陸の人間と同席 ( ´༎ຶㅂ༎ຶ`) 、
なんて悲劇は、今なら起こらないとの事。
「それは素晴らしい。大人三人ね。」
思いもかけず、久しぶりの川下りとなった。
この栄養が行き届いた彼が、私らが乗る船の船頭である。
「船べりの腰掛けに、お仲間ごとに向かい合って座って下さい。顔も見たくないって人もいるかも知れんバッテン。我慢してね。ハハ」
うん、大丈夫。
「川下り」と呼称してはいるが、実際は川ではなく柳川城のお堀。
流れも波もなく、鏡面の水面があるだけだ。
船頭が持つのは細竿一本。
右に左に竿を操り、舟を滑らせていく。
御花を一周し、舟は沖端へとやって来た。
この辺は、どこもかしこも鰻屋だらけ。
空気の成分の7割は、蒲焼きの揮発したものに違いない。
この日、沖端水天宮のお祭りらしく、通りは沢山の人出となっている。
何故か彼らは、私達の舟にスマホを向けている。
「あー、皆さん。あん橋ばこれからくぐるけん、腰掛けから降りて、船底に座って下さい。そんで、頭を思いっきり下げといてね。」
ガッテンだ。
橋と頭のクリアランスはすれすれ。
下げ方が足りないと、ただでさえ薄くなった頭頂部に、更に悲惨な状況が訪れるだろう。
流石にスマホを構える余裕はなく、この間の画像は無い。
ス━━━
舟は音も立てずに橋の下へ。
乗船客は思いっきり伏せた姿勢でいるしかない。
すると何やら後ろで、見物客の歓声と拍手が湧き上がった。
(? 何かが起きている)
髪が擦り切れることもなく、無事に橋を通過した。
急いで後ろを振り返ると・・・
船頭の巨躯が宙を舞った。
な、何だあ!!
ドシーン!!
「キャー!!」(一同)
事の顛末はこうだ。
私らを橋の下にくぐらせた船頭は、すぐさま舟から離れ橋上へ。
舟が通過するタイミングで、欄干から飛び降りると言うパフォーマンスだ。
今時の川下りって、こんな事やるんだ。
それでみんな、橋の上からスマホを構えていたのか。
だけどさ、
やるなら、少しダイエットしようぜ。
どんこ舟、大揺れだったぜ。
これは別の橋くぐりの様子。
先ほどの橋に比べたら、余裕のよっちゃんである。
舟から下りて、水天宮で賑わう沖端を歩いてみた。
大した賑わいである。
集めた舟の上に、特設ステージが作られている。
落語なんかやっちゃってるよ。
沖端水天宮
本家本元の久留米水天宮に比べたら、箱庭ほどの大きさだ。
なのに、祭りの賑わいは、遙かにこちらが上である。
我が家のゴールデンウィークは、これにて終了だ。