前稿で、
『ゴールデンウィークも生活に変りはない』
と書いたものの、
帰省している長女から、
「鰻ば食べたい!」
と言うリクエスト。
ふむ、
さもありなん。
どこにも出かけてないしな。
鰻と言えば柳川である。
折角なら、
「立花藩の別邸『御花』に行こうか。」
「いいね!」
御花と言えば・・・
40数年前に遡る。
一つ違いの従姉が、ここの大広間で結婚式を挙げた時の事だ。
親戚一同は川下りの船を降りて、ホテルのロビーへ。
そこには、立派な鼻髭を貯えた老紳士が立っていた。
何故か柳川の親戚は、その人物の前を通る時、皆が頭を下げている。
叔父の一人などは、老紳士に向かい深々と最敬礼。
目線をそのまま下に置き、
「これは殿様!ご機嫌麗しゅうございます。」
時代劇でしか聞いた事がないセリフを吐いた。
ここでやっとこの人物が、柳川藩の藩主の末裔である事を知った。
「今日はお祝い事ですか。」
「はっ、本日は姪が結婚式を挙げさせて貰ってます。」
叔父は益々頭が低くなり、両足の間にめり込みそうである。
立花家の当主と叔父に、何らかの面識があった訳ではない。
ここ柳川では、殿様を見かけたら、これは極々普通の挨拶であるらしい。
その時の光景は、強烈な印象として今も残っている。
前置きが長くなった。
そんな訳で(←どんな訳だ!)、40数年ぶりの『御花』での食事である。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ。」
付記しておく。
今日は娘の運転である。
脇に置かれた泡の出る飲み物は、いたって合法的なのだ。
さすがは殿様直営のホテルである。
蓋には、立花藩の紋『祇園守紋 』が施されている。
謂わばこれは、殿様の鰻なのだ。
40年前の叔父ならずとも、江島家一同、テーブルに手をつき、深々とお辞儀をするべきである。
肝吸い
茄子が浮かぶのは、珍しかろう。
鰻ざく
そしてせいろ蒸しだ。
そこはかとなく気品が漂うのは、決して気のせいではない。
では、
頂戴つかまつるで、ござるで、そうろうで・・・
敬語が渋滞している。
舌を噛む前に、
モグ
大変美味しゅうございました。
食事が済んだら、少し館内を見学。
3連アーチの玄関
柳川ではひな祭りの際、この『さげもん』が盛大に吊される。
一番左の障子が並んでいる建物が、従姉が挙式を挙げた大広間。
さて、
柳川と言えば川下りも有名だ。
御花のすぐ前に、その乗場があるのだが、
意外にも待たずに乗れそうだ。
「乗る?」(私)
「乗る!」(家内・娘)
続く