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お酒のお供Y・・・154

2015-05-14 14:05:57 | 日記


寝床

いたって好人物の旦那だが、玉にキズが自分だけ上手だと思いこんでいる義太夫。

ある晩、その義太夫をなんとか皆に聞かせようと、店の者に命じて自分の

持っている長屋や町内の人たちを呼びにやらせ、わくわくしながら開演準備中。

そのうちに町内を回った店の者が帰ってきた。様子を聞くと皆つごうが悪いと言う。

誰それは仕事、別の人は女房が臨月。店の雇い人たちも全員病気。店の連中も長屋の

人たちも、旦那の奇声におそれをなして誰も集まってこないのだ。

旦那はすっかり腹を立て、店の者には暇を出し、長屋の者には追い立てを食わすと

えらい剣幕(この部分までで先に進めず、長屋の連中が一か所に集まって旦那の

義太夫をけなすくだりを加えてオチにする演出もある)。

これはまずいと思った店の番頭がなんとかとりなし、ようやく一同が顔を揃え、

機嫌を直した旦那が義太夫を語りだした。

しかし、やってきた連中は義太夫なんかまったく聞く気がない。酒飲みはふるまわれた

酒や肴、下戸は甘いもののご馳走をたらふく食べて寝てしまった。

旦那は、座が静かになったのでさぞかし聞き惚れているのだろうと考え、様子を

見ようと簾をあげると全員がゴロゴロと横になっている。

ひどいのは他人の足を枕にしてゴーゴーと高いびき。

旦那が怒ったのなんの、頭から湯気を出す勢いで座敷にいるはずの番頭を探した。

「おい、番頭、番頭」

なんのことはない、番頭本人も鼻から堤灯で眠りこけている。ねぼけている番頭を

怒鳴りつけ、他の連中にも「帰れっ」と一喝。

一同がモゾモゾと動きだしたところで、どこからか泣き声が聞こえてきた。

「誰だ、泣いてるのは」

旦那が見回すと、隅っこのほうで店の小僧の定吉が泣いていた。旦那はてっきり

義太夫の悲しい場面に感動して泣いていると一人合点。どうだ、こんな子どもでも

感激するのだと番頭をはじめ周囲の大人を自慢気に見回し、定吉にどこの部分が

よかったのかと聞き始めた。いろいろと悲しい場面の演目を並べても定吉は

泣きながら首を振るばかり。

「そんなもんじゃありません」

「泣いてばかりいないで言ってごらん」

「あそこでございます」

「えっ、あそこ。あそこはあたしが義太夫を語った床じゃないか」

「あそこが、あたしの寝床でございます」

                       立川志の輔   古典落語100席引用

義太夫っていましたね。イシハラグンダンに。

グンダンにも飲ませたいそら・あかね