介護というには大袈裟ですが。

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寒くなると思い出す あの人 (20)

2023-02-18 14:12:50 | 日記

中華料理を食べ勤労意欲が著しく低下していた私達は、午後2時を少しまわった頃、ダラダラと会社に戻り、午前中のやりかけの業務をマッタリとしていた。そんな中ツネ師匠は少し遅れて2時半頃に戻ってきた。ツネ師匠は定時より早い4時前に弟さんが迎えに来て帰宅することになっていた。彼と一緒いられるのは1時間半しかない。私は何か接触したいと思い手元にある書類を持って彼に声をかけた。
『ツネ師匠、これどうするんですか?』
彼は少し、びっくりしたような表情をしたが、すぐに何か感じてくれたらしく、私が出した書類を手に取り丹念に見てくれた。
『ここは少し直した方が良いな、今直して持ってきなさい。』
私はツネ師匠から最後の指導を受けた。それから10分後、訂正をした書類をツネ師匠に手渡すと。
『まぁ、良いだろう、後欲を言えば、ここの部分は少し直したほうがわかりやすいな、それは次回までの宿題だ。』
と言って私に書類をバシッと返し。
『これからも頼むぞ、頑張れ。』
大きな声を私に投げかけた。
『はい、ありがとうございます。』
この時私は彼とこれからも会える気がした。さっきの社長の言葉ではないが、ツネ師匠はひょっこり会社に戻ってくる。そんな気がした、私は彼との挨拶を、あえて進行形でいった。過去形にしたくなかったのだ。
しかし彼とのやり取りは、これが結果的には最後になってしまう。
そして午後3時40分位に50代前半位の、少し若く見える爽やかな方がユックリとそして静かに入ってきた。
ツネ師匠の弟さんが彼を迎えに来たのだ。彼との、お別れの時間が迫っていた。


寒くなると思い出す あの人 (19)

2023-02-17 21:14:14 | 日記
お昼のツネ師匠の送別会及び年度末の慰労会はワイワイ楽しく中華料理を堪能した。社長も上機嫌で小林旭を数曲歌い、お偉いさんも、自らの贔屓にしているプロ野球チームの応援歌を歌った。
一定の盛り上がりを見せ、予定の1時間を20 分程度オーバーした時だった。社長はツネ師匠に話しを振った。
『ツネ、一曲いけ。』
ツネ師匠は断ったが、社長は、この前歌った あれ聞かせてくれよ、とおねだりし、一曲だけならとマイクを握った。
彼は静かに美空ひばりの愛燦燦を歌った。
とても静かな歌い方でサビの部分も抑揚はつけず、最初から終わりまで一定のトーンで歌い上げた。
派手さを好まない彼らしい歌い方だった。
ツネ師匠が歌い終わると大きな拍手がおこった。
そして社長が言った。
『良いねツネ、お前の歌良いよ。』
そしてひと呼吸おいて社長は続けて言った。
『皆んな盛り上がっているところ悪いが、予定を30分オーバーしていて、店員さんに怒られちゃうんで、今日はとりあえずお開き。又近いうちにやろうな。では解散。ツネは話しあるから残れ。』
私達はお腹いっぱいで、すっかりリラックスムードでゾロゾロと会社に向かった。
そんな中、社長とツネ師匠は最後の別れを惜しむかのように話していた。ツネ師匠の瞳に光るものが見えた。

寒くなると思い出す あの人 (18)

2023-02-17 12:08:10 | 日記
お昼の12時を少しまわり、宴会会場に他の部署の方々も、ほぼ集まった頃、社長は声をあげた。
『みんな集まったかな?、とりあえず皆さんご苦労さんな、今日は短い時間だが昼を沢山食べてくれ。後知っての通りツネが今日で巣立つ。だがツネはいつまでも我が社の人間だから、ふらっと戻るかもしれないよ、その時は又宜しくな、とりあえず一旦ツネとは、お別れするから、区切りだな。ツネひと言言え。』
社長に託されツネ師匠は、少し照れくさそうに挨拶をした。
『短い間でしたが、お世話になりました。』
言葉少なくシンプルな挨拶だったが、実直な彼らしい最後の言葉だった。その後、各自手元にあるジュースや、お茶の類を持ち、社長の音頭で乾杯となり、ワイワイガヤガヤ楽しいお昼となった。
社長は時間がたっと少しだけとビールを飲み始め、カラオケを始めた。
アルコールに手をつけたのは彼だけだったが。
それでも食事は美味しく私は満足だった。

来世があるならば

2023-02-16 05:45:38 | 日記
私は競馬が好きで馬券を購入しなくても必ず競馬中継は見ていて、予想も重賞と関東圏のレースたけだがおこなう。又競馬週刊誌も購入し、レース回顧もしている。そんな中、日曜の東京競馬のレース結果を何気なく眺めていたら、ふと2レースのシンフォニーという馬が目が止まった。
レース開始から何故かずっと後方のままで競争を中止している。私はシンフォニーが気になり日曜の競馬新聞を引っ張り出してシンフォニーを調べてみた。すると最近走もやはり大差て負けている。中央競馬のホームページを見ると、予後不良になったらしい。詳しい経緯は知らないので何とも言えないが、私はシンフォニーが不憫でならなかった。シンフォニーは、さぞ辛かっただろう、そして彼は結果は出なかったが、他に長所は必ずあったに違いない。競争することのみで評価されるサラブレッドは本当に気の毒でならない。
シンフォニー、次生まれてくるときは幸せになってください。願わくば、地主の息子になって人生を謳歌してください。競馬週刊誌を見て、私はふと思った。




寒くなると思い出す あの人 (17)

2023-02-14 11:09:32 | 日記
会社から徒歩数分の宴会場に着くと少し早かったのか他の部の従業員はチラホラとしかいなかった。
しかし上座を見ると三波伸介似の二代目社長を始め、お偉いさんの方々は早くも勢揃いをし、上機嫌であった。
そして、二代目社長は私達の事を見つけると大きな声を張り上げて叫んだ。
『おぉ、来たか来たか、遅いよ、待ってた待ってた、こっちだよ、おいでおいで。』
満面の笑みで手招きをする彼は何とも言えずにチャーミングであり、我が社の従業員は、ついつい自分達は社長に気にかけてくれているという錯覚を持たせてくれた。
彼は、とてつもない人たらしの一面があったのだ。我々は指定されたテーブルに別れ着席をした。
ツネ師匠は社長の隣を座るように言われ、社長の隣に少し恐縮しながら座った。
そして時間と共に他の部署の方々もゾロゾロと、お見えになり、その度に社長は皆に声をかけた。
そして12時を少し回った頃、会は始まった。