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小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(83)CG&コチョウラン

2008-12-02 20:27:27 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(83)コチョウラン&CG

京平も三河も声を掛けるのを遠慮した。
美保は花束を抱えて思い出したのか、涙ぐんでいたのだった。
「ごめんなさい貴方、三河さん。友世の事を思い出しちゃった。あの子このコチョウランが好きで、自分でも家で栽培していたの。将来は蘭の栽培を本格的にやりたいって言っていたのに、殺されちゃった」。
「そう、でもちゃんと敵討ちもしたし、きっと喜んでくれているさ」。
「うん、その事も結婚した事も赤ちゃんの事も報告しなくちゃ」。そして上京区の石像寺の先にある浄光寺の駐車場に車を入れた。
京平達は美保の後に続いて墓に歩いた。途中にある墓参用の小屋にある桶を取ると水を汲んでひしゃくを持った。そして人気のない墓の中を歩いた。
すると美保は止まった。「エッ・・・誰も来てないみたいね」。
美保は裏に廻った。すると目付きが変わった。京平は裏に廻ると墓石の裏には新しい名前が掘り込まれていたのだった。
「京平さん、見て・・・小母さんついこの間亡くなっている。どうして、どうして死んじゃったのよ」。
美保は両手で顔を覆うと泣き出した。京平は美保の身体を支えると日付を見た。
すると、二月十五日、「娘の命日じゃないか」。美保は泣きながら頷いた。京平も三河もその先言葉がなかった。
そして美保は暫くの間、座って呆然としていた。
「なんで死んじゃったんだろ。おばさん友世の分まで長生きするんだって言っていたのに。辛い・・・私辛い」。
すると、砂利を踏む足音がした。見るとドクターの診察カバンに似た黒いバックを下げた真田貴明だった。そして美保に気付いた。
「立花さん、立花美保さんですよね。友世さんとお付き合いしていた真田です。済みませんでした。自分が殺したようなものです」。
京平も美保も驚いた。真田はそう言うと、鞄を置いて墓の前に土下座して詫びているのだった。
そして、済みませんを繰り返しているのだった。
「それに今度はおばさんまで自殺して、それも友世さんの命日に。あの日、命日だからお宅に訪ねたら、小父さんと二人で座敷で首を吊っていたんです。
直ぐに救急車を呼んだんです。小父さんは何とか助けましたけど、小母さんだけが手遅れでした。小父さんはその後遺症で今は寝たきりです」。
「真田さん、有り難う。貴方やっぱり友世の事を?・・・」。
「はい、好きでした。結婚も考えていました。でも父が許してくれませんでした。本当に済みませんでした」。と涙をポロポロ流していた。
「真田さん、幸子の事はどうだったの。私には分からない、幸子何も私には話してくれなかったから」。
「幸子さんは父に騙されていたんです。父は僕と結婚させるからって、僕は友世さんの事が忘れられなくて、一度も関係を持った事はありません。父が幸子さんを・・・・・」
美保はその真田の姿を見て、本当に愛し合っていたんだと感じた。美保は涙を拭くと京平の目を見て頷いた。京平もまた頷いて三河を見た。そして真田の前に立った。
「真田、俺だ。分かるか」。
すると、真田は退け反るように驚いて顔を上げた。その目は恐怖に満ちていた。
「まさか!・・・立花さん」。
美保は黙って頷いた。真田は京平を見た。
「お前の親父を始末したのは俺だ。美保も最初から知っている。俺がユキワリ草さ、それにピース同盟・鉄槌の輩。安心しろ、仲間だ」。
「はい、本当に有り難うございました。立花さんの御主人ですか」。
「美保は俺の妻だよ。悪かったな、今まで苦しい思いをさせて。どうだ、これで安心したか」。
「はい。それから立花さん、友世さんのお父さんは自分の病院で一生面倒を見させて頂きますから安心して下さい。こうなったのも僕の責任ですから」。
「お願いします。貴方の事、誤解していました。それを主人が見抜いてくれたんです。もう少しで貴方を殺してしまう所でした。それを主人が貴方の父親の茂が陰で糸を引いているって」。
「そうですか、僕に少しだけ勇気があれば知世を死なせなくて良かったんです、本当に情けなくて・・・」。と嗚咽していた。
「真田、お前も辛かったろ。これからこの墓はお前が守れ、でもまだ若いんだ、やり直せ」。
「はい、その積もりでいます。頑張ります。それで、こちらにいる方は?・・・」
NO-83-6