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小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(91)

2009-02-08 22:07:34 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(91)

「真田、じゃあ元気でな。暇があったら遊びに来てくれ」。
「はい、是非行かせていただきます。色々と有り難うございました」。そして京平は家の少し手前で車を止めると降りた。
真田は京平に手を振ると帰って行った。京平はブリーフケースを手に玄関を開けると美保が立っていた。
「お帰りなさい、もう父と母は眠っているからそっとね」。
「ただいま」。
美保は京平の手からブリーフケースを受け取ると玄関に鍵を掛け、玄関の明かりを消して二階に上がった。
そして部屋に入るとそっと京平の首に腕を回して抱き着いた。
「見逃してやったのね、きっとそうすると思った。大丈夫なの?・・・」。
「うん、まだ十九才の子供だ。車のローンが払えなくて計画したと言っていたよ。だからローンの分と二百万渡して帰した」。

「そう、じゃあ三河さん反対したでしょ」。
「少しね、でも分かってくれたよ。それから真田が美保に有り難うって伝えてくれって。全部話したんだ」。
「そう、此れで真田さんも幸子の位牌にお参り出来るわね。さあ、今夜はもう遅いからお風呂入ろう」。
二人でそおっと風呂に入ると、ベッドに入った。
そして美保は腕の中に身体を預けるように眠った。
翌日、京平と美保は一日中家で留守番をしながらゆっくり身体を休めていた。そして夕方、母が帰宅する時間にはリビングに降り、テレビのスイッチを入れてを見ていた。すると思いもしないニュースが流れた。
それは交通事故のニュースだった。始めは聞き流していた。
「ねえ、この事故死したって山下辰彦って人、夕べの男の子じゃないの」?
京平はテレビに身を乗り出して見入っていた。

すると顔写真が出た。間違いなくあの山下辰彦だった。
彼は昼過ぎに嵯峨野にある嵐山高雄パークウェイの鳥居本に近い大きなカーブを曲がり切れず、ガードレールに激突し、その反動で対向車線に入り、大型トラックと衝突して即死状態だったと言うのだった。すると、京平の携帯が鳴った。美保が出ると真田だった。
「真田です。奥さん、旦那さんから聞きました。色々有り難うございました。ご主人はいますか」。
「うん、良かったね。待って」。そして京平に代わった。
「紺野さん、夕べは有り難うございました。それで、ニュース見ましたか。山下が嵯峨野で事故って死にました」。
「うん、俺もいま見て驚いていたんだ。バカな奴だ、せっかく助けてやったのに事故って死ぬなんてな」。

「ええ。今日午前中山下から電話があって、借金払ったと知らせて来たんです。それに仕事も見付かったからって。なんか気の毒な気がしてなりません」。
「そうだったのか、まあ、此れも彼の運命だったんだ。仕方ないな」。
「はい、呆気ないですね。それをお知らせしたくて電話しました。いつまで京都とにいられるんですか」。
「うん、もう一日ゆっくりして十七日に帰ろうと思う。色々大変だったな、お前も車の運転には気を付けろよ」。
「はい、有り難うございます。じゃあ失礼します」。
京平は何とも言えない空しさを感じながら電話を切った。そして真田から聞いた事を美保に伝えた。
「なんか気の毒ね、真田さんも他人事に思えなかったでしょうね。借金も払って仕事も見付かって、此れからって時に死んでしまうなんて、私会わなくて良かった」。

「うん、悪い男には思えなかったからね。こんな事言うと不謹慎だけど、此れで心配事が消えた事は確かだな」。
「そうね」。するとまた携帯が鳴った。「きっと三河さんよ」。
と言いながら美保は携帯に出た。
「いま噂していたんです、真田さんからも電話があったばりです」。
「そうですか、山下もつまらん死に方しました。なんか気の毒でね。それで電話したんです。奥さん達はいつ戻られます」。
「はい、京平さんは十七日に戻ると言っています。代わりますね」。
「もしもし、夕べはお疲れ様でした。山下も気の毒でしたね」。
「まったくです。しかし我々の存在は闇の中です」。
「まあそう言う事ですかね、それで三河さんはもう東京ですか?・・・」。
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