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刻塚-(NO-33)

2010-01-17 13:02:47 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-33)

「そうなの・・・じゃあ帰る?・・・」
「うん、レポートも書きたいしさ。だからって家に帰れなんて言わないよ」。
「うんッ!だったら帰る」。麻代は嬉しそうにキスすると部屋を片付けていた。
「麻代、おれは支払いを済ませて来るから」。猿渡はそう言うと手荷物を持って部屋を出た。そして事務所をノックした。そして帰る事を告げた。
「エッ・・・お帰りですか。分かりました。では此れをお持ち下さい」主は金庫を開けると和紙だろうか、包んだ薄平たい包みを差し出した。
何だろうと受け取るとズシッと重かった、大判だ、直ぐに分かった、包みを開けた。大判と小判、二朱銀が数枚包んであった。猿渡は呆然と主を見た。

「これは貰えませんよ、この村の宝ですから」
「いいえ、まだ沢山あります。此れも猿渡さんの助言がなければ分からなかった事です、記念と言っては変ですが。どうぞ受け取って下さい。それから、宿泊費は警察の方へ回してくれと聞いていますので」。
そこへ麻代が降りて来た。そして部屋の鍵を差し出した。そして小判を見た。
「凄いね、私も欲しくなっちゃった。なんか犯人の気持ち分かるな」。
「麻代、これ頂いたよ」
「エッ!・・・ほんとに頂いたの。おじさん、ほんと!」と、キョトンと主を見た。

「はい、ちゃんと奥さんのもありますよ」と、金庫から同じ包みを出して渡した。
「奥さんのご両親にどうぞ」。麻代は驚きながら両手で受け取った。
「有り難うございます、でも本当に頂いていいのかな」。
「せっかくだから頂こう。それから宿の支払いは警察が払ってくれるそうだ」「エッ・・・なんかこんな凄いお土産まで頂いた上に。困っちゃう」。
そこへ後藤公子が手提げ袋を二つ下げてやって来た。

「お父さん此れでいいですか」。と手提げ袋を二つ抱え来た。
「うん、猿渡さん、此れは信州の土産です。奥さんのご実家にもどうぞ」二人は戸惑いながら受け取った。
「猿渡さん、いろいろ有り難うございました。お陰様で山田の家の娘になれました。落ち着いたら静岡へ遊びに行っても良いですか」後藤公子は嬉しそうに二人を見た。「ええ。ぜひ来て下さい。その時は山田刑事と一緒にね」

公子は真っ赤になって頷いた。そしてタクシーを呼ぶと上田市に向かった。
赤田村から一時間三十分、上田駅18時18分発長野新幹線あさまに乗り、東京へは僅か1時間足らずで着いた。
そして待ち時間も差ほど無く、20時17分発名古屋行きひかり291号に乗り込んだ。車内は混み合う事もなく、空々だった。窓際に向かい合って座った。
二人は早速きよすくで買った幕の内弁当で夕食を済ませた。麻代は満腹になったのか疲れたのか、幾分シートを倒すと眠ってしまった。
そんな麻代の膝が開き、ミニの隙間から真っ白な下着が露になった。こん盛りとした股間が覗いていた。猿渡はジャケットを脱ぐとそっと掛けた。
そして、静岡へ着く直前に計った様に麻代は目を覚ました。
21時27分、遅れる事もなく定刻通りに静岡に着いた。静岡は長野と違って蒸せ返る程暑く感じた。

「ワア~ッ静岡は暑いわね。こうしてみると長野は涼しいんだね」。
「うん、日中はそうでもないけど朝夕は涼しいよな」
猿渡は麻代の荷物を持ち、改札を出た。ムッとする暑さに額と体にジワッと汗が吹き出た。そしてタクシーに飛び乗ると安東のアパートへ帰った。
部屋はたった三日留守にしただけなのに、ムッとするカビ臭い空気が二人を迎えた。

「暑いわね」、麻代は窓を全開にエアコンのスイッチを入れた。
「ねえ啓太さん、家のお土産どうしようか?・・・」
「今から届けに行こう、歩いても10分だろ」。
「うん、じゃあ歩いて行こう」二人は窓を閉めてエアコンを付けたまま部屋を出た。そして土産と麻代が貰った小判を持つと歩いて実家に向かった。
パッパッ、とクラクショクが鳴って真横に車が停まった。「もうっ危ないわ・・・」麻代は驚いた様に言葉を飲み込んだ。窓がス~ッと下りた。
「麻代。啓太君、長野じゃなかったのか」。それは麻代の父親の車だった。
「お父さん、ビッリするじゃない。用事が出来ていま帰ったばかりなの。ちょうど良かった。これお土産、届けようと思っていたの」。

「そうか、じゃあ乗りなさい」と、父はドアロックを解除した。
「いいよ、行くと長くなるからさ。洗濯しなくちゃならないから、この中に大変なお宝が入っているから楽しみに見てね。じゃあお母さんに宜しく」
「おいおい、仕方ないな。じゃあ頂いて行くよ、あまり銀行休むんじゃないぞ」。
と、父親はクラクションを鳴らして走り去った。
NO-33-63