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20XX年・クエスチャン (-8-)

2010-06-02 23:46:16 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-8-)

陽に焼けた堤防にタオルを敷いて腰を下ろし、足元の海面をじいっと見詰めていた。
名も知れぬ稚魚が群れを成し、海面から口を出してパクパクしていた。
そのまま視線を水平線へ向けた。大きなコンテナを山と積んだ貨物船が東へ航行している何処まで行くんだろう、この暑さでは海上も暑いだろうに、そんな思いで眺めていた。
ゴロっと堤防に横になった。雲一つ無い真っ青な空。
岸壁に打ち寄せる波の音、そんな音に混じって遠くの潮騒が届いて居た。
フッと沖の貨物船に視線を向けた。・・・・何処だ、こんなに早く横切る筈は・・・
腰を上げ、西から東を見回した。しかし、何処にも貨物船の姿は無かった。
そんな馬鹿な、目を離したのはほんの20~30秒足らずだぞ。・・・北へ進路を変えたのかも知れないな。
そう思い直し、腰を下ろした。間も無く漁に出て居た2~3tクラスの漁船が一斉に帰港してきた。知り合いの船長もいた。思わず立ち上がって手を振っていた。 
    
「オ~イッ先生、今日は駄目だったよ。魚一匹掛りゃしねえ、駄目だ駄目だ」。 そう言いながら波立たせながら港の奥へ入って行く。 
竿を出さなくて良かった。そんな思いに空を見上げた。
「ンッ?・・・何だあれは・・・」。
真っ青な東の空高く、ギラギラ反射しながら向かって来る物があった。
「鳥か・・・まさか、鳥なら可なりでかい・・・ち・違う、あれは飛行機だ」。  
 佐伯は車に飛び乗り、一目散に港へ突っ走った。
パパパパパパッ~思い切りクラクションを鳴らしながら市川丸の前に着けた。
「皆ッ~逃げろッ~!ジェット機が墜ちて来るぞッ~!」佐伯の蒼白した顔に市川丸の船長は陸へ上がった。

空を見た、振り替える市川丸「皆の衆ッ~逃げろッ~!港から逃げろ~ッ」。その叫びは港内に響き渡る。
漁師達は悲壮な叫びに訳も分からない儘丘へ上がるが、既に目前に大きな機体が迫っていた。漁師達は市場がある西へ走る。
「違うッ~!東だッ~!東ッ~!東へ逃げろッ~!」。 
佐伯は市川丸の船長の腕を掴み、網小屋がある東へ一目散に駆け出す。
ドドドドド~ン,ズズズズズ~ッバリバリバリッ~どう表現していいのか。地響きと共に大きな波に飲まれて居た。どれぐらい流されたのか、気が付くと体中に痛みが走った。両手足からは血が滲み、擦り傷だらけだった。
一瞬何が起きたのか分からなかった。辺りは水浸し、道路に何匹もの魚が跳ねている。
「・・・そうだ、ジェト機」。
漸く我に返った。びしょ濡れの体を起こし、周りを見ると船長はかなり離れた道路まで流されていた。ムクッと体を起こし、佐伯を見付けると手を振っていた。
どちらともなく歩み寄った。船長の額や頬が擦り剥けて血が滲んでいる。
先生のお陰で助かったよ・・・こりゃ酷でえ。まさかジェット機が墜ちて来るとはな。これじゃ乗客は全滅ずら。船も墜落の高波で丘へ打ち上げられて燃えてら。 それにしてもどうして分かったんかね」。

佐伯は逃げ込もうとした網小屋を見た、背筋が凍る思いであった。東側に係留されていた漁船の全てが打ち上げられ、大破して燃えていた。
小走りに港へ歩きながら、見た事を話して聞かせた。
港内はジェット燃料の鼻を突く匂い、濛々と燃え上がる黒煙。目を開けて居られなかった。間もなくサイレンの音が遠くに聞こえ、港は野次馬と消防車で埋め尽くされた。
あまりの目の痛さに体を低く屈み込んだ。
・・・・」思わず後退りした。屈んだ足元にはジェット機の乗客らしい女性の顔だけが血だらけの肉片となって転がっていた。

「先生って貴方ですか」。背後からいきなり呼ばれ、尻餅を着いた。
「・・・は、はい、それよりこれ・・・・」、地面を指差した。
「うわッこれは酷い、自分が処理しますから。向こうで警察が探していましたよ。墜落するのを知らせに来た訳を聞きたいそうです」。
佐伯は両手を合わせ、その場から逃げる様にパトカーに向かって走った。そこには救急車が、パトカーが、消防車が乱雑に止まっていた。
警察も相当慌てて居た様子が手に取る様に分かった。
「先生ッここだに、怪我してるに治療してもらいな。刑事さん、あの作家の先生が教えてくれただに。知らせたくれなかったらワシ等は皆巻き込まれて今頃バラバラだったずらな。なあ皆」。「本当だ、全員生きてるでな。これぐれいの怪我で済んだの先生のお陰づら、後一分でも遅れてりゃ自分の命だってや 危ばいのによ。ありがとうよ先生」。
NO-8-16