
ベアテ・シロタ・・・ご存知でしょうか?
この方がいらしたから、
まがりなりにも、男女平等をうたう現在の日本国憲法がある・・・
そう知ったのは、去年だったか・・・
ベアテ・シロタ・ゴードン著
『1945年のクリスマスー日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝』
(朝日新聞出版)を読んでからです。
いやいや・・・「読んだ」ではなく、「斜め読み」でしたが・・・w
そもそも、ベアテや憲法に興味があって読んだのではなく・・・
彼女がピアニストのレオ・シロタの
愛娘であることに惹かれて読み始めたもので・・・

谷崎潤一郎の長編「細雪」は、姉妹が外出の支度をする場面から始まります。
これがレオ・シロタのピアノを聴くため・・・
阪神地方の名家で、シロタのピアノを聴く集まりがあったのです。
レオ・シロタは「リストの再来」と称されたピアニストで
日本でも、絶大な人気を誇っていました。
内気な三女・雪子ですら、出かけずにはいられないほどですから・・・
シロタは、1928(昭和3)年、東京音楽学校(現・東京芸術大学)の
教師として招かれます。
その後、ウクライナ出身のユダヤ人だったこともあり、
ナチスが各地を占領する、ヨーロッパには戻らず、
終戦後までの15年間を日本で過ごしました。
両親に連れられた娘のベアテは、来日当時5歳・・・
たちまち、日本に慣れ親しみ、流ちょうな日本語を身につけます。
やがて、大学入学のため、アメリカへ渡り、
真珠湾攻撃以後は、日本にいる両親と音信不通となってしまいました。
終戦後、彼女は両親と会うため、GHQの民政局員の一人となって来日。
不思議な偶然が重なり、両親と再会を果たした後・・・
22歳の若さで、「日本国憲法」草案作成のメンバーに選ばれました。
ベアテは「人権に関する委員会」に所属し、女性の人権パートを担当します。
日本では、1946(昭和21)年4月に総選挙が行われました。
これが、初めて女性に参政権を認めた選挙で、
女性議員が39名も誕生しています。
半年後、10月7日に、憲法の草案が国会を通過すると・・・
女性議員の圧倒的な支持を得たのが、
ベアテら「人権に関する委員会」が起草した、
ベアテは、後年、
「もしわたしが、日本に住んだことのある女性でなかったとしたら、
日本の女性についてあれだけの努力をしたとは思えない」と語っています。
・・・してみると・・・
わたしが大学へ進学できたのも(戦前は女性は大学・入学を認められず)、
夫に対し「名もなき家事」をするよう主張できるwのも・・・
(→「名もなき家事」のゆくえ)
さかのぼってみれば、ベアテ・シロタのおかげだったということです!
感謝・・・

さて、日本女性の恩人とも言うべき、ベアテさんの生涯を
マンガ化した『冬の蕾ーベアテ・シロタと女性の権利』(岩波文庫)。
やはり、マンガだと、頭に入ってくるらしく、サクサク読めました。
実は、これも、ベアテさんのためというのではなくて・・・
樹村みのり先生の作品だから読んだのですw
アタクシが少女マンガを一番夢中で読んでいたのが、
1970年代、花の24年組と呼ばれる、萩尾望都、竹宮恵子、大島弓子諸先生が
活躍する「別コミ」こと「別冊少女コミック」(小学館)でした。
同じく昭和24年生まれの樹村みのり先生も、
三先生から少し遅れて、「別コミ」に登場されています。
あたたかな絵柄、恋物語でないことも新鮮で、楽しみに読んでいました。
今でも忘れられない作品が「クォ・ヴァディス」(タイトル不明)。
樹村先生ご自身と思われる、若い女性が、単身ローマを旅し、
クォ・ヴァディス聖堂を訪ねるという・・・。
それから二十数年後・・・
私もクォ・ヴァディス聖堂の前に立っていました!
ローマでバスを探し歩き、たどりついたアッピア街道の石畳を歩き・・
ようやく樹村先生の描いた、カタコンベを前にしたときは感無量。
結局、ずっとこのマンガが、心に残っていたのですね。
・・・おそるべし、小学生の読書体験!
いやいや、それだけ樹村みのり先生のお力が強かったということです。
「別コミ」卒業後、ほとんど樹村作品とは縁が無かったので・・・
今回、久しぶりに、御作品を読みました。
「冬の蕾」も良かったのですが、
収録されている「今日の一日の幸」が、とりわけ好きでした。
専業主婦→パート主婦となった40代と思しき女性が、
資格取得を目指し、通信制大学の入学を決めるという・・・
その姿が、やわらかな眼差しで描かれ、
迷う女性の背中を、そっと押してくれるような作品です。
かくいう私自身はヒロインとは逆。
定年までフルタイムで働ける仕事を、別の夢を追いたいがため、途中退職。
その志半ばで、大病の告知を受け、結果、そちらも頓挫しています。
でも、ちょうど、「今日の一日の幸」のヒロインより
少し遅れた頃、病気も一段落。
再び、新しい道に挑戦し、今の仕事への就職につながりました。
そういった、人生の選択が可能になったのも・・・
そうか、ベアテ・シロタのおかげだったのか・・・!
繰り返しになりますが、彼女が
女性の権利を守ってくれたからですものね。
樹村みのり先生とベアテと出会えた、この一冊。
心の中が、ほんわりした想いでいっぱいになりました。
願わくは・・・
収録された作品「花子さんの見た未来?」のような・・・
同性カップルが当たり前に認められ、
働き方の変化や労働時間の短縮により、豊かな暮らしができる
穏やかな社会が、実現しますように。
◆書影は、版元ドットコムより使わせていただきました。
*******************************
「秋の我慢の三連休」・・・コロナ禍、お互いに気をつけて・・・
何とか乗り切ってまいりましょう!