歌舞伎役者の二代目・中村吉右衛門丈が亡くなりました。
ご体調を崩しておいでとは聞いておりましたが・・・
まさか、まさか・・・
まだ七十代でいらっしゃるのに・・・
昨夜、いちはやく知った夫から聞かされ、
声を上げて泣きました。
一夜明けて、また、涙が込み上げています。
中村吉右衛門丈は、松本白鸚丈の弟さん。
母方・祖父(初代・中村吉右衛門)の名跡を継ぐため、
4歳でご養子になられました。
幸さまこと、松本幸四郎丈の叔父上にあたります。
歌舞伎界では、年の離れた年長者を「おじさま」とお呼びしますが、
幸さまにとって、吉右衛門丈は、本当に「叔父さま」。
お芝居について、いろいろ教えていただいると、
折に触れて、おっしゃっていました。
娘さんばかりの吉右衛門丈ですから、
お二人にとって、教え教えられることは
どれだけの想いでいらしたか・・・
歌舞伎という伝統の世界で生きる、重圧もおありだったはずです。
吉右衛門丈は当たり役を、たくさんお持ちですが・・・
わたしは、まず「一谷嫩軍記」の熊谷直実。
花道で、僧侶姿となった直実は
「十六年は、ひと昔、ああ夢だ、夢だぁ」と、
つぶやき、ひっこみます・・・
吉右衛門丈の直実を、初めて拝見したは、いつだったか・・・
あのときの感動が、今でも、わたしにとって
「直実=吉右衛門」であり、お役のベースです。
そして、なんといっても北条秀司「大老」の井伊直弼。
桜田門外の変・前夜・・・すべてを覚悟しながら
愛妾と語り合う、お姿が忘れられません。
それから・・・
・・・・・・・
涙が止りません。
歌舞伎は、今、そこにいらっしゃる役者さんが演じるもの。
お元気でいらっしゃればこそだと、
あたりまえのことを、今更ながら、感じています。
コロナ禍、臆病な私が、グズグズしている間にも
時は無情に流れていくのです・・・
ああ、歌舞伎が観たい・・・
もう一度、吉右衛門丈のお芝居を拝見したかった・・・
中村吉右衛門丈は、
わたしの歌舞伎・観劇の基盤を作って下さった、お一人です。
心よりの感謝とともに・・・・
ご冥福をお祈り申し上げます。
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おつきあいいただいた皆様、どうもありがとうございました。