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お盆の入りに~「盆土産」

2020-08-13 | 2022夏まで ~本~
お盆の入りを迎え、今日からお盆です。

先月だったか・・・
三浦哲郎『盆土産と十七の短編』(中公文庫)を買いました。

三浦哲郎の「盆土産」・・・
ご存じの方も多いのではないでしょうか・・・
中学校の国語の教科書に載っていました。

まずは、ざっくりとあらすじを。


(表紙には、作中に登場する、河鹿がいます!)

まだ昭和の頃・・・
主人公は、上野から夜行で8時間、さらにバスで1時間の村に住む、少年。

出稼ぎに出ている父が、思いがけず、お盆に「海老フライ」を土産に
帰省してくるという・・・けれども、「えびフライ」と言われたところで想像できない・・・
はてさて・・・という短編です。

「盆土産」が気になってならない少年が、
何度も何度も「えんびフライ」と発音する姿が、ほほえましく・・・

何より、えびフライを口に入れるときの「しゃおっ」の擬音が
いかにも揚げたてで、おいしそうで・・・
当時の先生は、授業で扱っている間、3回も海老フライを夕飯になさったほどw

翌日、出稼ぎから戻った父と共に、少年、姉、そして祖母の家族全員で、
亡くなった母の墓参りに出かけます。
母の好きだった、コスモスとキキョウを摘んで・・・

「早死にした母親は、あんなに旨いものはいちども食わずに
死んだのではなかろうかーーそんなことを考えているうちに、
なんとなく墓を上目でしか見られなくなった。」

「父親は、すこし離れた崖縁に腰を下ろして、黙ってタバコをふかしていた」(21頁)

夜行で帰ったばかりの父親は、翌日、墓参りを済ませると、
再び東京へ夜行で向かいます。

その父との別れの場面が、ウルウルなのに、ふっと笑わせてくれて・・・
ユーモアとあたたかさ、ほろ苦さをあわせもつ・・・
名作ですっ!

今回も、読んでいて、何度も、目頭を熱くした、アタクシです。



若かりし頃、この小説を読んだ後、
三浦氏の小説を劇団四季がミュージカル化した「ユタとふしぎな仲間たち」に
夢中になりました。

しげしげと劇場へ通いながら、常に、「盆土産」を意識していた気がします。


都会育ちのユタは、村の暮らしになじめず、いじめられる日々。
やがて座敷童と出会い成長・・・いつしか村の中に溶け込んでいきますが・・・
というお話。

そんなユタを観ながら、
少年や村の暮らしに、「盆土産」の世界を重ねていたのでしょう・・・

「ユタ」を、ママになったばかりの友人と観たこともありました。
「うちのイッちゃんが大きくなったら、絶対に観せてあげたい」と
つぶやいていた彼女・・・あれから、はや何年、何十年?

そのイッちゃんも、今では立派な社会人、
自立して、親元から離れて暮らしているそうです。
(イッちゃん、「ユタ」を観たのかな・・・?)



『盆土産と十七の短編」は、中学・高校の国語教科書に収録された作品を
中心に選んだ短編集だとか・・・
これから、懐かしい三浦哲郎・作品を、ゆっくり読むつもりです。

さて、お盆。

実家では、母が亡き父のために、盆飾りを済ませたとか・・・

週末には、わたしも、実家へ戻り、母と二人で過ごすつもりです。
同じ市内に暮らすとは言え、このコロナ禍。
母とは会うのは、あわただしく出かける、歯医者さんへの通院くらいでした。

久しぶりに、亡き父の写真を前に、母とおしゃべりすることでしょうw
(マスク、マスク!?w)



八月がくるたびに、いつも思うのですが・・・

お盆に、ご先祖様をお迎えし、命のつながりに感謝し、
手を合わせる・・・

一方で、広島、長崎の原爆忌を経て、
15日、お盆のさなかには終戦の日を迎えます。
戦争とお盆・・・生きること、命の重さを考える日が続く・・

このめぐりあわせに、毎年、不思議な想いに駆られてなりません・・・


今年は戦後75年と言うことで、テレビや新聞でも、
「戦争」を取り上げる機会が多いような気がします。

そちらについては、またいずれ・・・


◆書影は、版元ドットコムより使わせていただいております。
「ユタとふしぎな仲間たち」は新潮文庫版を愛読してきましたが、
書影がなかったので、講談社・青い鳥文庫版を使いました。

◆「盆土産」で墓に供えられた桔梗とコスモスの画像は、
2018年夏に撮影したものです。

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