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『王女物語ーエリザベスとマーガレット』~衝撃!

2021-05-02 | 2022夏まで ~本~
マリオン・クロフォード『王女物語ーエリザベスとマーガレット』
(みすず書房)を読み終えました。
読み終えてから気づいた記述に、衝撃を受けています。

どうぞ、聞いてやって下さいませ。



著者のマリオン・クロフォードは、英国のエリザベス女王2世と
マーガレット王女姉妹の家庭教師(ガヴアネス)でした。

当時、上流階級の令嬢は、学校へは行かず、
家庭教師から教養を学んだのだとか。

「メアリー・ポピンズ」のようなナニー(乳母)とは違いまして、
お二人には、お母様の代からのナニーが別にいたそうで・・・

ガヴァネスのクローフィーことクロフォードは、
ご姉妹に文学、歴史の他、ダンスや音楽を教え、遊び相手も務めていました。
ほぼ一日中、ご一緒に過ごしていたのです。

クローフィーの引退は、
リリペットと呼ばれた幼女が、正式な王位継承者エリザベス王女となり、
結婚をなさって、しばらくしてからのこと。

この間17年!



この本は、その回想記、1950年に出版されています。

エリザベス女王の半生記とも言えるわけなので、
内容は、波瀾万丈です。

王位とは無縁だった幼女の頃、
「王冠を賭けた恋」のため父上・ジョージ6世の思いがけぬ即位、
そして第二次世界大戦の開戦。

戦争が始まり、クローフィーは、ご姉妹と共にウィンザー城へ疎開します。
その筆は、切実。
王室メンバーといえど、命の危険があったことがうかがえました。

そんな折も、リリペットは、ご両親を案じつつ、周囲に気を配り
落ち着いて、ご自身の責務を果たそうとなさったとか。

戦争が終わると、19歳のリリペットは、真剣な恋に落ちます。
お相手のフィリップ王子との出会いは13歳。
以来、王女は、一途に彼への想いを募らせておいでだったのです。

自制しつつも、恋を貫こうとするリリペットの想いを、
家庭教師クローフィーは、あたたかく見守ります。

恋愛問題に限らず、エリザベス女王陛下が、お若い頃から思慮深く、
内省的な方だとわかるエピソードが満載です。
几帳面で、整理整頓がお好きで、身の回りは、いつも片付いていたとか・・・

対して妹のマーガレット王女は、才能にあふれた、明るいご性格で、
しょっちゅう周りの者を笑わせていたと・・・
仲の良い姉妹ながら、ご性格は違っていたそうです。

そういえば・・・
その昔、マーガレット王女をめぐるゴシップを聞いたような・・・と、
50年も前の少女の頃が思い出されましたw

女王は、かつてのダイアナ妃とチャールズ皇太子など、
現在でも王室の方々に対し、厳しい発言もおありとうかがいます。
ご自身を厳しく律する方ならではのことと、何やら納得してしまいました。


(マーガレット)


第二次世界大戦終了後、価値観が激変するなか・・・
リリペットはマミー(チャールズ皇太子「チャーリー」の母)となられ、
マーガレットは「チャーリーの叔母さま」と呼ばれるようになったと・・・。

回想記は、ここで終わります。

最後の頁は、ケンジントン宮殿内、ノッティンガム・コテージに
たたずむクロフォードの写真です。

ノッティンガム・コテージは、
最近では、ハリー王子ご夫妻が、ご成婚後、お住まいになった家・・・

クローフィーは、そんな王室所有の由緒ある家(屋敷)の、
生涯にわたる居住権を与えられていました。
それは長年の家庭教師職の功績が認められてのこと。

リリペットより少し早く結婚したクローフィーは、
ここで新婚生活を送ることになったのでした。


『王女物語』は、クローフィーという家庭教師の眼差しを通し、
王室の厳しさと優雅さ、それでいて一貫したご一家の暖かみに触れ、
何やら、英国の児童文学を味わったようです。

それは、それは、幸せな気持ちで、読み終えました。



読み終えてから・・・著者クローフィーの略歴を読んだところ・・・
えっ?!

あわてて裏表紙に書かれていた本書の概略を読みました。
(今頃っ!)

ええっ!

「本書の刊行直後、王室は、17年間家族同様に遇し、
ともに暮らしたクローフィーとの関係を、
静かに、永久に、絶った。」

なんと、この回想記が「暴露本」と見なされ、
クローフィーはノッティンガム・コテージの居住権を失い、
生涯、お二人の姉妹とも関係が絶たれてしまったのです!


英語版Wikipediaには、以下のように書かれていました。

”As the first servant to cash in on the private lives of the royals, Crawford was ostracised by the royal family, and they never spoke to her again.”

(王室の私生活を(売って)金に換えた、最初の召使いとして、
王室はクロフォードを追放し、二度と話しかけることはなかった。)

ひゃああっ!こわいよ~~

さらには、クローフィーは引退後、故郷のスコットランドに暮らします。
自宅はローヤルファミリーが夏を過ごす城のすぐ近くなのに・・・
リリペットもマーガレットも、毎回、その家を素通りなさったとか・・・

クローフィーが夫亡き後、うつ病になったのも当然かと・・・。
(クロフォードの情報は英語版Wikipediaによる)




21世紀の現在、クローフィーの回想記は、節度を保った内容で、
王室への敬意と愛情を読み取ることができますが・・・

70年以上前のことですものね。
当時は、王室を話題にすることすらタブーだったのでしょう・・・

また、当時、クローフィーの中に、王室との17年にわたる関係に、
慢心があったのかもしれません。
そういう目で読み返してみると、確かに、引っかかる部分もありました。

う~ん・・・
読了直後の、あの幸せな気持ちから一転。
人生の落とし穴を見せつけられたような、ちょっと複雑な気持ちです。

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4月、エディンバラ公爵フィリップ 殿下が薨去なさいました。
本書を読み、女王のお嘆きいかばかりかと、お気の毒でなりません。
哀悼の意を込めて・・・

画像は英国王室に敬意を表し、最近、撮った薔薇の花を・・・

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拙ブログでは、読んだ本の一部だけをアップしていますが、
ブクログ「由々と本棚」は、読み終わった本を収めています。
本のお好きな方、どうぞ、遊びにいらして下さいませ。

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