リヒャルト・シュトラウス - Richard Strauss (1864-1949)
歌劇「エレクトラ」 Op. 58, TrV 223 (抜粋)
Elektra, Op. 58, TrV 223 (excerpts)
作詞 : フーゴ・フォン・ホーフマンスタール - Hugo von Hofmannsthal
» Wo bleibt Elektra? (Magde)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 - Vienna Philharmonic Orchestra
ジュゼッペ・シノーポリ - Giuseppe Sinopoli (指揮)
録音: September 1995, Grosser Saal, Musikverein, Wien, Austria
〘 …【シノーポリのライフワーク】
シュターツカペレ・ドレスデンを中心に、リヒャルト・シュトラウスのオペラや管弦楽曲をドイツ・グラモフォンとワーナーに継続的にレコーディングして高い評価を得ていたシノーポリが、ウィーン・フィルを指揮して取り組んだのがこの『エレクトラ』。オペラは全作品をレコーディングする予定でしたが、シノーポリの急死により計画は頓挫してしまいます。しかし、残された『サロメ』、『ナクソス島のアリアドネ』、『影のない女』、『平和の日』(廃盤)の録音と、『サロメ』の映像はどれも高水準なもので、シノーポリとシュトラウスの相性の良さを証明するものとなりました。
【シュトラウスの意欲作『エレクトラ』】
『エレクトラ』といえば、大成功した『サロメ』の3年後に書かれた、より過激な作風のオペラとして有名です。巨大編成オーケストラが大活躍するこの作品では、劇的な歌唱を要求される歌手と並んで、指揮者とオケのコンビネーションが非常に重要になります。 『エレクトラ』は、“実母とその愛人によって実父を殺された兄弟たちによる残忍な復讐劇”という様相を呈する、血の匂いに満ちた残忍なオペラではありますが、ワーグナーの『指環』を上回る編成のオーケストラは、凶暴一辺倒ではない音楽の魅力を多彩な表現で浮かび上がらせています。なにしろ弦楽セクションだけで、ヴァイオリン3部、ヴィオラ4部、チェロ2部、コントラバス1部の計10声部という凝った編成になっており、その精妙をきわめた音楽は、大音響だけがこの作品の持ち味でないことを如実に示していますし、不思議な官能美と高揚感、そして陶酔の果ての歓喜の死という表現も大いに注目されるところです。
【ウィーン・フィルと『エレクトラ』】
そうした事情もあってか、これまでウィーン・フィルによる『エレクトラ』の演奏には話題になったものが多く存在します。
古くはミトロプーロスのライヴ盤(1957)や、カラヤンのライヴ盤(1964)、そしてセッション録音では、強烈なショルティのデッカ録音(1966-67)と、映像用のセッションであったベーム最晩年の録音(1980)も見事でした。ウィーン国立歌劇場管弦楽団を指揮したアバドの映像(1989)も印象深い仕上がりで、それらはどれもウィーン・フィルの並外れた表現力がよく生かされているのがポイントになっています。
【シノーポリの『エレクトラ』】
シノーポリとウィーン・フィルによる演奏は、作品のオーケストレーションを徹底的に追求し、混沌とした響きから繊細な音楽まで鮮やかに示すことによってドラマ構築をおこなったもので、歌手と一体になったトータルな表現の魅力に富んでいます。…
…【収録情報】
・R.シュトラウス:『エレクトラ』Op.58
エレクトラ:アレッサンドラ・マーク(ソプラノ)
クリソテミス:デボラ・ヴォイト(ソプラノ)
クリテムネストラ:ハンナ・シュヴァルツ(メゾ・ソプラノ)
エギスト:ジークフリート・イェルザレム(テノール)
オレスト:サミュエル・レイミー(バス)
オレストの扶養者:ゴラン・シミッチ(バス)
クリテムネストラの腹心の女:クリスティアーネ・ホスフェルト(メゾ・ソプラノ)
クリテムネストラの裾持ちの女:カリン・ヴィーザー(ソプラノ)
若い下僕:マイケル・ハワード(テノール)
年老いた下僕:ヴァルター・ツェー(バリトン)
監視の女:ヘルガ・テルマー(ソプラノ)
第1の下女:アネッテ・ヤーンス(メゾ・ソプラノ)
第2の下女:ガブリエレ・シーマ(ソプラノ)
第3の下女:エリーザベト・ヴィルケ(アルト)
第4の下女:アンネ・シュヴァネヴィルムス(ソプラノ)
第5の下女:カテリーナ・ベラノワ(アルト)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ディートリヒ・D・ゲルファイデ(合唱指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)
録音時期:1995年9月
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインサール
録音方式:デジタル(セッション)
原盤:ドイツ・グラモフォン… 〙
〘 日本最大級のクラシックの祭典「東京・春・音楽祭2024」が15日に開幕する。…
… 同音楽祭は4月21日まで、東京・上野の東京文化会館を中心に東京芸術大学奏楽堂、ホールだけでなく東京国立博物館、国立西洋美術館などでもミュージアム・コンサートが行われる。昨年の公演数は138(内有料公演74)、入場者は約3万3000人。今年は約40日の会期で有料公演は約80に上る。…
… 世界的な歌手が招へいされるオペラは演奏会形式で4演目が行われる。「エレクトラ」のタイトルロールはエレーナ・パンクラトバ、セバスティアン・バイグレ指揮読売日本交響楽団(4月18、21日)。…
… 詳しくは公式サイト( https://www.tokyo-harusai.com )。(江原和雄)〙
〘 …女優・高畑充希のスゴさ
'16年に楳図かずお原作の舞台『わたしは真悟』で演出協力した白井晃氏も、こう語る。
「映像の高畑さんは“ピュア”というイメージですが、舞台ではとてもパワフル。舞台に大切な身体能力も高く、気持ちのうえでもエネルギッシュな方。常に全力で、稽古のときからフルパワーでやってくれていた印象です」
'17年に主演したギリシャ悲劇『エレクトラ』の演出を担当した鵜山仁さんは、
「エレクトラは父親を殺した自分の母親を、弟と一緒になって惨殺するという、恐ろしいキャラクターなのですが、高畑さんは“隣のお姉ちゃん役”みたいな感覚でやれてしまうのがすごい。お隣さんの身近さも、エレクトラのとんでもなさも、シレっと演じてしまうんです」
演劇評論家の河野孝さんも、今後の高畑に期待する。
「“舞台に命をかけている”という意気込みは、見ていても感じます。雰囲気や目線、たたずまいが締まっているというか。役についても研究熱心。3年たって2度目のアニー役をどんな形で見せてくれるか楽しみですね」
こうした絶賛される才能があれば、どんな“ムチャブリ”でも、素晴らしい作品にしてくれそうだ。〙
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