■マーケット
トランプ氏 メキシコ訪問
米国の共和党大統領候補のトランプ氏が先月31日、メキシコを訪問しペニャニエト大統領と会談しました。不法移民対策として両国の国境に壁を建設すると発言してきたトランプ氏。ニューヨークから新形さんの報告です。
《中継担当:みずほ総研NY/新形敦氏》
トランプ氏は会談後の記者会見で不法移民対策などで国境管理を強化することで一致したと強調しました。ただ、かねてから主張している国境の壁の建設費をメキシコ側に負担させることについて、トランプ氏は話し合わなかったとしていますが、メキシコのペニャニエト大統領は払わないと明確に伝えたとツイッターで表明しました。その後、米国に帰国したトランプ氏はアリゾナ州で演説し、メキシコが壁の費用を100%払うと述べるなど従来の主張を繰り返しました。今回の訪問は、単に敵視していたメキシコ大統領との会談という実績づくりだったと言えます。事前の予想では、トランプ氏はメキシコ訪問後、より現実的な移民政策を打ち出すと期待されていましたが、移民政策に変化はありませんでした。
■特集 中国 副業が当たり前?仕事をかけもつワケ
景気減速が鮮明となっている中国で、働き方に異変が起きている。中国の大手人材派遣の調査では、「副業を行っている」と答えた人が4割を超えた。多いのがネットショップの経営。そして、ウーバーのようなアプリを使った配車サービスなどのドライバーだ。犬の散歩のような普通のものからIT企業で働く人を応援するという風変わりなものまで登場。宅配業者のなかには副業の人材を活用して低コストでスピード配送のビジネスモデルを構築する企業も登場。働く人のなかには空き時間を利用して本業と同じ額を稼ぐ例も。日本と違い中国では副業を禁止する規定はほとんどないため、専門家は今後も副業する人が増えると予想。その背景には物価上昇で厳しくなる生活を少しでも楽にしたいという働く側の事情に加え、スマホなどの発達によって仕事を細かく発注、請け負うことができる技術革新がある。中国でブームになっている「副業」の実態と背景を取材。
中国ではデリバリーサービスが盛んで、市場規模は少なくとも4兆円と世界一だ。弁当一つから届けてくれる。ただ競争は激しく人では不足しがちで、至る所で配送スタッフを募集している。
その人手不足を思わぬ手段で解決している業者がある。
ビルの内装を手掛ける周敏輝さん(30歳)はこの道10年以上のベテラン職人だ。3ヵ月前から副業で配送スタッフの仕事をやっている。昼休みの食事の時間にスマートフォンで受注したのは弁当のデリバリーだ。報酬は配達一回につき約135円(近距離)、多い時には1日20件請け負うため、周さんは月に約12万円稼いでいる。今や本業と変わらない稼ぎとなっている。家賃や日々の食費は値上がりする一方で、副業の稼ぎは欠かせないという。
宅配会社の『上海隣趣網絡科技』では、配送スタッフは現在6万人、全て登録制で社員はいない。人件費を最大30%削減できるだけでなく、スタッフを数多く抱えることで、配送スピードのアップにつながっているという。
中国では今ネットを利用し仕事を受ける副業が広がっていて、犬の散歩(1時間300円)やIT系の会社員をただ励ますという一風変わった副業(エンジニア応援師、1時間3000円)などもある。ある人材派遣会社の調査では44.7%が副業を持っているとの結果になった(対象3000人、前程無憂調べ、15年6月)。中国では多くの場合、副業を禁止する規定がないという。多いのはネットショップの経営(61.1%)やウーバーのような配車―ビスを使ったドライバー(16.8%)だ。専門家は今後も副業をする人が増えるという。
《北京大学中国職業研究所/陳宇所長》
「ネットが副業の広がりに大きな役割を果たしている。今後ますます様々な副業が出てくるだろう。」
■ニュース特集
麻生大臣が怒る企業の“行動”
麻生財務大臣は企業が長年ため込んできた利益、内部留保が増え続けていることに怒りをあらわにしました。財務省が発表した法人企業統計では2015年度の内部留保は377兆円を超え、過去最高となりました。経済を活性化させるためには内部留保を設備投資にまわしたり、従業員の給料を上げたりすることが必要ですが、企業の消極的な投資姿勢が続いています。政府与党内でまとめた税制改正大綱では企業の意識や行動を変革していくための方策なども検討するとされ、内部留保が多い企業に対し課税の議論もあり得るかのような記述があります。ただ内部留保は企業がすべて現金で保有しているわけではなく、株や不動産などに投資して運用しています。経済界からは大企業が現金として社内に持っているのは内部留保の3分の1程度で、ほとんど使っているとしています。
【麻生大臣「経営者がダメ」・“塩漬け”377兆円に怒り】
麻生財務大臣は「経営者として恥ずかしいと思わないのか」と、一昨日の講演で日本企業を批判した。その怒りの矛先は企業が出した利益から税金や株主への配当金を引いた内部留保。今日、財務省が発表した法人企業統計では2015年度の内部留保は377兆円を超え過去最高となった。第2次安倍内閣が発足して以降、企業が貯めた額は73兆円。経済活性化の為には企業がこの資金を積極的に設備投資に回したり賃金を上げる事が必要だが、消極的な企業の投資姿勢に麻生大臣ももはや呆れ気味。しかし内部留保は企業が全て現金で保有しているわけではなく、株などの金融商品や不動産に投資して運用している。そのため大企業が現金で持っている内部留保は3分の1にすぎないという。日本商工会議所・三村明夫会頭は「企業は買収や緊急時に備えた資金にまで文句を言われる筋合いはない」と反論した。
《大浜キャスター解説》
【「人」「設備」への投資は低調・企業が二の足踏む理由は!?】
1980年代の後半までは内部留保や給与、設備投資額はほぼ同じ動きをしていたが、1990年代前半のバブル崩壊以降(ITバブル、いざなみ景気、アベノミクス)は内部留保は増える一方、給与と設備投資額はほぼ横ばいという状態に。ですから企業はお金をあまり国内の人や設備に回さず、溜め込み続けている。どうしてこの様な事が起きているのか、専門家に聞いた。
《第一生命経済研究所/星野卓也副主任エコノミスト》
「社会保険料が将来も上がると予想され、さらに賃金は1回上げると下げにくいという構図なので、社会保険料の負担も1回賃金を上げてしまうとどんどん増えると考えているのではないか。投資先も日本から海外へという動きが進んでいる。海外の方が物が売れるので、海外で工場や支店をつくって、そこで稼ごうという流れができている。」
【「ため込んだ利益」に課税!?“劇薬”ちらつかせる真意は】
企業に400兆円近い内部留保を使ってもらうにはどうしたらいいのかが大きな問題で、政府与党の一部では「内部留保に課税すればいいのではないか」との声まで上がっている。仮に現金を含めた内部留保全てが課税対象になれば、企業は利益を出しているだけで税金を取られかねない事態になる。財務省の幹部は内部留保課税について「現実的ではないが、ちらつかせる事が重要。決して抜かない伝家の宝刀」と述べた。企業の財布のひもを緩める方策はあるのか。
ジビエ料理人気のワケ
狩猟捕獲された鳥獣の食肉・ジビエを扱う飲食店の数が2年で3倍以上増えています。東京・渋谷に去年オープンしたジビエ専門店ではアナグマの肉を使ったすき焼きが食べられます。取り扱う店がなかなかないアナグマの料理は人気を集め、売り上げは去年より3割増えました。他店のとの差別化を狙いジビエの取り扱いを始めましたが、牛や豚に比べ、個体差が大きくにおいや色味をひとつひとつ確認して調理の行程に反映しています。日々安定した在庫を確保できるかという不安が残る中、大分県に今年4月ジビエ専門の加工センターが日本で初めてオープンしました。冷凍庫の中にはジビエが常時5トン保管されていて、最長1年間保管できます。この時期はカラスがよく入荷し、飲食店でも人気を集めています。ジビエは残弾など異常な金属が入っていないか、金属探知機を使ったチェックや専門機関で菌が繁殖していないかの検査も行っています。
【ジビエ料理人気のワケ】
今日、グルメ情報サイトを運営する、ぐるなびが主催したセミナーが東京都内で開かれた。テーマは「ジビエ」。今、ジビエを取り扱う飲食店の数が2年で3倍以上になっていて、当面このペースで急増すると予想されている。こうした人気を下支えするある取り組みを取材した。
【なぜ増える!?“獣肉”専門店・アナグマをすき焼きで】
東京・渋谷区にあるジビエ専門店「むじなや」は、ジビエを取り扱う店でも珍しいアナグマ(イタチの仲間で本州から九州にかけて広く生息する哺乳類)の料理が人気を集め、売り上げは去年より3割伸びた。店の開業を決めた背景には珍しい肉を扱う事で他の飲食店との差別化を図る狙いがあったとのこと。しかし計画的に生産される牛や豚などに対し野生肉は個体差が大きく、においや色を一つ一つ確認して調理の工程に反映している。むじなや女将・河上綺加は「日々安定した在庫を確保しておかないといけないという不安は常にある」と話した。
【イノシシからカラスまで・日本初!“獣肉”加工センター】
在庫の確保に対する不安を解消するカギが大分県湯布院町にあった。
今年4月にオープンした日本初ジビエ専門の加工センター・九州狩猟肉加工センター。安定供給のカギは巨大冷凍庫で、禁漁の時でもジビエの在庫を切らさないよう最長1年間保管できる。ここでは取引先の飲食店などの注文に合わせてジビエを調理加工している。「鹿肉のミートボール」に「猪肉のソーセージ」まで、その種類は約10種類。そして残弾などが入っていないか金属探知機を使ったチェックを行っている。さらにジビエに菌が繁殖していないか専門機関で定期的に検査している。また一過性のブームで終わらせないため自社商品の開発も進めている。
サウジアラビアの王子来日
サウジアラビアのムハンマド副皇太子が来日しました。ムハンマド副皇太子は、「将来の国王」とも目されており、国防や石油政策、経済政策、外交の実権を握っている重要人物です。これまで潤沢なオイルマネーで安定的に発展してきたサウジアラビアですが、原油価格の下落でその仕組みは、崩壊寸前。そこで、ムハンマド副皇太子は、「ビジョン2030」という国家戦略を掲げ「脱・石油依存」を図ろうとしています。ムハンマド副皇太子は、産業の多角化を目指し、日本や中国、アメリカなどを訪れ、協力を要請していました。日本企業も新たな市場として注目しています。サウジアラビアが掲げる「脱・石油依存」ですが、実現にはさまざまな課題があります。シリアやイエメンなど政治的に不安定な国に囲まれていることや国内では、若年層の失業率が高いという課題があります。中東の専門家によるとブルーワーカー的な仕事を好まないため失業率が高いのだといいます。
【サウジアラビアの王子来日】
今日未明、サウジアラビアの将来の国王とも目されているムハンマド副皇太子が500人もの関係者を従えて来日した。ムハンマド副皇太子の名前はムハンマドビンサルマーンアール=サウード、年齢は31歳。サルマン国王の七男で王位継承順位は第2位。また親日家で温泉や漫画が大好きという。ムハンマド副皇太子は国防省兼最高経済評議会議長で政治の中枢人物だが今回、サウジアラビアの将来を左右するような大きな目的を持って来日した。
【サウジが“脱石油”?キーパーソン“王子”来日のワケ】
サウジアラビア・ムハンマド副皇太子は総理官邸を訪れ、安倍総理大臣と会談した。これまで潤沢なオイルマネーで医療や教育の無償化など社会保障の充実を図り、安定的に発展してきたサウジアラビア。しかし原油価格の下落でその仕組みは崩壊寸前で、社会保障の見直しも検討されている。そこでムハンマド副皇太子は脱石油依存を掲げ、産業の多角化に大きく舵を切ろうとしている(ビジョン2030)。これに日本政府も支持を表明。今日、両国の閣僚が参加する定期的な会議を新設する事で一致した。ムハンマド副皇太子は親日家としても知られるが、昨日は中国・習近平国家主席と会談しサウジアラビアへの投資を要請。日本でもムハンマド副皇太子と共に来日した閣僚らが300人以上の企業関係者らを前にエネルギー分野以外での協力を強調した。これに対し日揮・川名浩一社長は「巨大なマーケットでもあり、他の地域へのゲートウェイにもなる」と話した。
【サウジアラビアの“王子”が直面する課題とは!?】
脱石油という大胆なビジョンを掲げたサウジアラビア・ムハンマド副皇太子だが、実現には色々な課題が指摘されている。1つは地政学的なリスクだが、サウジアラビア国内でも問題を抱えている。サウジアラビアは人口の44%が25歳未満だが、その若年層の失業率が40%と高い。これは一体なぜなのか、中東の専門家・畑中美樹に話を聞いた。サウジアラビアの若者は働く先があるにも関わらず政府機関などで働く事を好んでいるため失業率が高くなっていた。畑中は「サウジアラビアの若者の失業問題は勤労観を変えられるかどうか、ムハンマド副皇太子が説得できるか。経済メリットが縮小されると若者から『政治的参加や発言権が欲しい』と声が出る。そこをイスラム国の様なイスラム過激派が『おかしい』と言い始めると同調する若者が出てくる」と話した。ムハンマド副皇太子の取り組みは単に経済政策の変更だけでなく、国全体を変えるようなとても難しい挑戦なんだというのがよく分かる。
■ニュース
小池改革始動
就任1ヵ月を迎える東京都の小池知事。自らが本部長を務め、肝いりの「都政改革本部」の1日、動き始めました。都庁で初会合が開かれ、小池知事は居並ぶ幹部たちを前に「私や外部の有識者メンバーはリットン調査団や、戦後のGHQではない」と述べ、改革が職員と敵対するものではないことを強調しました。改革の重点テーマとして「情報公開」と「東京五輪・パラリンピック」が選ばれ、それぞれ調査チームが立ち上げられました。有識者メンバーには、元検察官や債権回収の経験者など多彩な人材が。その中でもキーマンとされているのが、慶応義塾大学の上山信一教授です。上山教授は、橋下徹・前大阪市長のブレーンとして行政改革を推進してきました。会合で上山教授は、都が大部分を出資する東京五輪組織委員会のあり方について疑問を投げかけ、「(組織委は)97.5%の資本を東京都が出資している外郭団体である。そのわりには情報公開されない。お金の使い方に関わる説明がない」と述べました。その上で、国や組織委委員会を含めた運営の全体像や、予算の妥当性を検討していくことを表明しました。都政改革本部では9月中に1回目の報告をする予定です。
ファミマとユニーが経営統合
大手コンビニチェーンのファミリーマートとサークルKサンクスなどを運営するユニーグループホールディングスが経営統合しました。今後3年ほどかけてサークルKとサンクスの店舗を全てファミリーマートに変更します。店舗数はおよそ1万8,000店舗と首位のセブンイレブンに迫りますがコンビニ事業の売上高は2,000億円以上の差があり今後の巻き返しを図ります。
KDDI×ジェットスター スマホ決済で航空券購入
KDDIとジェットスター・ジャパンが航空券の代金をスマートフォンで決済できる日本初のサービスを始めました。ジェットスターのサイトやアプリで航空券を購入するとき「auかんたん決済」を選ぶとその代金は、auの月々の電話代と一緒に払うことができます。クレジットカードを持っていない若い客などの利用をみこんでいます。一方、KDDI側は、決済代行サービスの拡大で、通信費以外の売り上げ増加を狙います。
ブラジル ルセフ大統領罷免
ブラジルの上院議会は31日、国家会計を粉飾した疑いでルセフ大統領に対し、弾劾裁判で罷免を決めました。これによって5月から大統領代行を務めていたテメル氏が正式に新大統領に就任しました。一方、罷免されたルセフ氏は、「選挙ではなく、クーデターで権力を得た」と厳しく批判したほか各地でルセフ氏支持者による抗議デモが勃発するなど、今後も政治対立が続く可能性があります。
世耕経産大臣が兼務 「ロシア経済協力大臣」新設
政府はロシア経済分野協力担当大臣を新たに設置し、世耕経済産業大臣に兼務させることを発表しました。特定の国の協力に関する担当大臣の設置は異例です。2日にロシアのウラジオストクで行われる日露首脳会談を前に、経済協力に向けた日本の前向きな姿勢を示すことで、北方領土問題などの進展を図る狙いです。
楽天 インテリアのトレンドは?
1,000万点を超えるインテリア商品を扱う楽天が、今年と来年の、インテリアに関するトレンドを発表しました。「楽天市場」の購買データなどをもとに、選んだ今年のトレンドは、塩味のようなあっさりとした印象が特徴の「塩系インテリア」など5つです。来年、流行が予想されるのは、柄に柄を重ねたスタイルで、「悪趣味な」という意味がある、「タッキー」などの5つ。楽天では、これらの、トレンドを楽天市場で取り扱っている商品で実現した家具付き賃貸物件などで展開するほか、AR、拡張現実の技術を使い、家に居ながらインテリアを配置できる技術なども提供していく予定です。
■【トレたま】スマート皿
専用アプリをダウンロードして、スマートフォンと皿をBluetoothで接続する。その後、炭水化物、肉、野菜を指定の場所に盛りつける。皿の内部にセンサーがあり、同じ食べものが減っていくとバランスよく食べるようマーク(三角食べのマーク)が出る。さらに早食いしすぎると、早食いのマークで知らせる。また、どれくらいの量を食べたかアプリ上で確認出来る。
【商品名】「PLAY‐TE」
【商品の特徴】毎日の食事の管理ができる皿
【企業名】電通
【住所】東京都港区東新橋1-8-1
【価格】未定
【発売日】来年春発売予定
【トレたまキャスター】片渕茜
■【コメンテーター】伊藤元重氏(学習院大学教授)
・企業の“利益”377兆円・財布のヒモを緩めるには
--本当に麻生大臣も苛立っていましたけれども、企業の中に眠っているお金を動かす方法はありますか。
「方法がないから麻生財務大臣も苛立っているのでしょうね。
内部留保に課税するというのは、ちょうど日本銀行がマイナス金利を付けたのと似たようなことになって、政策としては難しいと思う。ただ麻生大臣の仰っていることも分からないではないので、例えば、企業にどうしてもっと日本に投資をしないのか聞くと、『やっぱり人口が減っているから、なかなか将来、ビジネスが難しい。そういう中で投資できない』と言うんですね。しかし、それはよく考えてみたら自分達が将来の展望を描けていないということだ。」
--自分たちの将来を否定することになる・・・
「『そえならもう内部留保あるんだったら、賃金でも投資でもいいから、いま出してしまいなさい。』というと、それは嫌だという。だからこのままの状態ではなかなか回らないんだろうと思う。」
--マインドは変わりますか。
「内部留保がたまっているのに投資がないということ自身が、日本の経済低迷の縮図みたいなところがあって、みんな一緒に縮こまっていて将来に向けて投資しようとしないわけですから、結果的にはそれを気持ちを変えていけるような成長戦略にしていかなければいけないので、こじ開けて使わせたいという気持ちは分かるんですけど、なかなか難しい。課税して出させる事はできるが、ただそれは逆のマイナス要素の方が非常に大きい。ですから賃金とかのほうにもっと積極的になるべきです。将来が描けないのであれば、今の中でもたらしていくのも企業の責任だと思いますけどね。」
・米国大統領選、勢い衰えないトランプ節・大統領になったら…
--トランプ氏はいつものトランプ氏のままだったということなんですが、政策もこのまま突き進むということになるんでしょうか。
「1つのポイントは大統領候補として選挙を戦っている時の顔と、もし仮にトランプ氏でもクリントン氏でも、大統領になった後の姿勢というのは当然違うんだろうと思う。やはり大統領になるためには、自分の主張を先鋭化してやらないとなりませんから、メキシコの話も今この段階で前言を撤回するということはありえないと思う。ただ実際に大統領になれば、それはやはり国益を優先するということがいい大統領ということになります。」
--これまでの大統領もそうだったんですか。
「過去は2つ面白い例がある。1つはレーガン大統領、これはトランプ氏と非常に似ていて、民主党の白人票を結構取ったと言われているんですけど、いろいろ非常にユニークな大統領で、大統領になってしばらくレーガノミクスという非常に極端な形でいろんな問題を引き起こしたんです。たださすがに周りのブレーンとかスタッフがいるんでしょうね。少しずつ修正して行って、非常に共和党らしい大統領になりました。それから今のヒラリー・クリントンのご主人のビル・クリントンは1992年の大統領選挙で、TPPに似たNAFTAに反対して候補になったんですね。それはやはり労働組合とかが支援しているからです。でも大統領になったら、やっぱり北米自由貿易協定NAFTAというのは、アメリカの国益になるということで、簡単に前言をひっくり返したんです。」
--じゃあもしトランプさんが大統領になれば、現実的路線になるかもしれない・・・
「まあそう願いたいですね。」
・サウジとの付き合い方
--サウジアラビアの副皇太子が来日しましたが、日本は脱石油依存を進めようとしているサウジとどう付き合っていけばいいでしょう。
「まず2つぐらい重要なことがあって、1つは普段はあまり意識しないんですけど、サウジというのは日本にとって大事な国。シェールとかで石油が安くなってはいるが、結局、量(が多いの)はあっちから来るわけですから、ここは非常に大事です。もう1つ、非常にやっかいなことに、サウジが非常に困っているんですね。やっぱり石油の価格がこれだけ低迷しているということは、今まで高い石油の中でやってきた財政や社会だとかが全部できなくなる。それだけではなくて、ご存知のように、いろんな周辺国も含めて政治的に難しい問題を抱えている。そういう中でこれからどうやって日本とサウジの関係を作っていくかというのは、非常にいい機会だと思うんですね。当面はやっぱりこういう中で次のリーダーである皇太子のプロジェクトに乗っかっていくということで、投資を(企業でどこまでやれるかというのは難しいですけど)やっぱりいろんなことを考えていかなくてはいけない。脱石油は難しいにしても、石油の周りの色んな産業は日本も協力できると思う」。