■マーケット
アメリカ発で市場が動揺?
きょうの日経平均株価の終値は前の週末に比べて292円安い、1万6,672円でした。大幅な下落を招いた背景は、アメリカの利上げへの警戒感が高まったことがあります。これまで利上げに慎重な立場をとっていたアメリカ・ボストン連銀のローゼングレン総裁が9日の講演で「雇用の伸びは強く、緩やかに金融政策を引き締めていくのが適切」と主張し、市場では近い時期の利上げが警戒されました。この発言を受けた9日のニューヨーク株式市場ではダウ平均株価が400ドル近く急落して2ヵ月ぶりの安値となり、きょうの東京市場でも株価の下落を招きました。同じく利上げには消極的とされるFRB=連邦準備制度理事会のブレイナード理事の講演に注目があつまります。
米政府 民間企業との連携を強化
--米国では政府と民間企業の連携を模索する動きが強まっています。ニューヨークから前中さんに伝えてもらいます。
《中継:米国ニューヨーク/ジェトロNY/前中康志氏》
先日、米政府は武田薬品に対してジカ熱のワクチン開発のため資金提供することを発表しました。今回の決定を行った保健福祉省は2001年の炭疽菌テロなどをきっかけに、「テロ」や感染症の世界的大流行「パンデミック」に備え、医薬品メーカーとの連携を強化してきました。例えば、研究開発のために企業へ積極的に資金提供をしています。またコンテストを通じて採用したツイッターを分析して病気の広がりを監視するツールを公表するなど、民間の技術を積極的に取り入れる場面が増えています。
--こうした政府と民間企業との連携、ほかにも多いのでしょうか。
民間企業との連携を強める動きは他の政府機関でも見られます。例えば、NASA、米航空宇宙局は有人飛行などを自前で行う計画をとりやめ、民間企業への委託を進める方向に舵をきりました。国家プロジェクトを民間企業に委ねることには批判はありますが、こうした動きが起業家のイーロンマスク氏が率いるベンチャー「スペースX」をはじめとした宇宙ビジネスに関するベンチャーの活況を作り出しています。日本やドイツに比べて3倍以上にのぼる米政府の研究開発支出に加え、民間企業との新たな連携が様々な問題の解決だけでなく、新しいビジネスを生み出すことにつながっていると言えます。以上ニューヨークでした。
■特集 好調レクサス 品質世界一の工場は“感覚頼み”!?
トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」の販売が好調です。今年上半期の世界における販売台数は約31万9,000台と3年連続で過去最高を更新しました。その好調を支えているのが「品質」への信頼。都内の販売店では、海外の高級車ブランドを迷っている客に「品質」をアピールしています。世界で販売される「レクサス」の半数以上を生産する「トヨタ自動車九州宮田工場」は、アメリカの調査会社から製造品質で世界最高の評価を獲得しました。不具合の発生を防ぐ最大の特徴が、人の感覚を使った「官能検査」です。検査工程では触覚・視覚・聴覚などを駆使し、機械の検査では限界のある、わずかな不具合がないか探していきます。こうして出荷される「レクサス」ですが、世界の販売台数ではドイツの高級車ブランドに大きく差をつけられています。レクサスの担当者は「品質をベースにスタイリングやデザインで世の中にアピールしたい」としています。取材先・トヨタ自動車九州宮田工場・トヨタ自動車レクサス国内営業部・レクサス高輪・J.D.パワーアジア・パシフィック
【好調レクサス・品質世界一の工場は“感覚頼み”!?】
トヨタ自動車の高級車ブランド・レクサスの販売が好調。今年上半期の全世界における販売台数は約31万9000台で、3年連続で過去最高を更新した。その好調を支えているのが品質への信頼。製造品質で世界一の評価を得た工場で目撃したのは人の感覚頼みの品質検査だった。
【SUV人気でレクサス好調・知られざる“世界一の工場”】
レクサスの国内販売の約6割を占めるSUV(多目的スポーツ車)。SUVの市場は世界的に好調で、今年の販売台数は2010年と比べて約2.5倍の約2510万台に成長する見通し(IHSオートモーティブ調べ)。このブームに乗ってレクサスもSUVモデルを相次いで投入。コンパクトタイプの「NX」やミドルタイプの「RX」、最上級モデルの「LX」と3種類揃え、好調の原動力となっている。レクサス高輪・茂木祐ゼネラルマネージャーは「客に品質がなぜそういう品質になっていくのか、モノを作っている現場の事から話して理解してもらう事が大事」と話した。
【米国・品質調査で世界一・レクサス工場・職人のすごい技】
世界で販売されるレクサスの半数以上を作っているトヨタ自動車九州宮田工場を訪ねた。宮田工場は今年、米国の調査会社から製造品質で世界最高の評価を獲得した。今回で4度目。評価の根拠は、米国市場で宮田工場が生産した車両は購入後90日間における不具合の指摘件数が最少だったこと。宮田工場の最大の特徴が官能検査。出荷前の検査工程では、手で触る事により人の手でしか分からないわずかなズレを探していく。作業員は毎日、ラインに入る前に建付官能訓練機でテストを受け、0.3ミリ以上の間違いがあれば検査ラインに立てない。塗装工程では視覚により色むらを見分ける。静穏ドームでは聴覚により、ドアを閉める事で部品の緩みによる振動音など不快な音がしないかをチェックする。こうした人の感覚を最大限活用した検査でレクサスは世界最高と言われる品質を実現している。
【レクサスvsドイツ高級車・魅力で対抗できるか?】
製造品質では世界一と評価されたレクサス(トヨタ自動車)だが、その他の調査を見てみると、魅力品質という客の評価の中では5番目。JDパワー自動車商品魅力度調査(2016年/米国):1位・ポルシェ、2位・BMW、3位・メルセデスベンツほか、5位・レクサスほか。ブランド別世界販売台数(1~6月):メルセデスベンツ・約100万6600台、BMW・約98万6600台、アウディ・約95万3200台、レクサス・約31万9000台。トヨタ自動車レクサス国内営業部・渡瀬修部長は「1番の競合はヨーロッパの高級車メーカー。それらのメーカには歴史がある。レクサスは開業して日本では11年目で歴史がない。歴史がない分、新しいことにトライできる。スタイリングやデザインで世の中にレクサスという車をアピールしていきたい。」と話す。
■ニュース
豊洲新市場 問題続出 小池都知事 都幹部に調査を指示
築地市場の移転先となる豊洲市場で、東京都がこれまで説明してきた土壌汚染対策が事実と異なっていたと明らかになりました。経緯の調査、検証を前に次々と問題が続出しています。小池都知事は今日、都庁の幹部職員13人を前に「重大な局面」と話し、正しい情報公開を徹底するよう指示しました。かつては東京ガスの工場だった豊洲市場の地中からは、基準値の4万倍を超える有害物質が検出され、東京都は858億円を投じて土壌の改善に取り組んできました。その対策は、敷地全体で汚染された土壌を除去し、きれいな土を4.5メートル盛る、「盛り土(もりど)」をしたと説明していましたが、実際に主要な水産卸売り場の建物の下にあったのは、空洞でした。さらにコンクリート上に深さ約1cmの水があり、どこから流れて来たのかは不明。東京都は改めて専門家による安全性の検証をするほか、問題が起きた経緯についても調査する方針です。
政府「未来投資会議」を創設
【成長戦略の“新司令塔”が発足】
安倍総理大臣が掲げる「アベノミクス」の成功の鍵を握る成長戦略。その新たな司令塔となる、政府の「未来投資会議」の初会合が開かれました。未来投資会議は安倍政権が成長戦略の具体策をまとめる為に新たに作った官民合同の会議です。1回目の今日は、情報通信技術(ICT)を活用して建設現場の生産性を2025年までに20%高める、人手不足に対応するという方針を早速決めました。
金融政策、財政出動に次ぐアベノミクス第3の矢、成長戦略。これまで政府には、経済政策や成長戦略を議論するための会議が乱立していましたが、今回、「産業競争力会議」や「官民対話」など複数の会議を未来投資会議に集約、司令塔を一本化してスピードアップを図ります。新たな成長戦略は来年半ばに取りまとめる計画です。経済界代表として民間議員を務める経団連の榊原会長も「今度こそは」と意気込みます。
「今までいろいろやってきたが、それが経済成長や投資拡大につながらないのはなぜか、しっかり検証しようというところから始める。成長戦略を加速させるために、積極的に参画していきたい。」
【地方活性化「成果を数字に!」】《大浜キャスター解説》
これまで政府の中には経済政策や成長戦略を話し合う為に色々な会議が存在していました。これに対し「会議が乱立しすぎ」、「成長戦略が進んでいない」などの批判がありました。そこで経済財政諮問会議と一億総活躍国民会議は存続させ、規制改革会議は衣替えをする事になりました。その他の産業競争力会議や官民対話、第4次産業革命官民会議を集約して未来投資会議を作りました。成長戦略の実現を急いでいく為の会議という位置づけです。未来投資会議のテーマは「AI(人工知能)やロボット活用」「企業の制度改革」「医療・介護」「地方活性化(ローカルアベノミクス)」です。そんな成長戦略の1つ、アベノミクスの恩恵を地方に波及させるローカルアベノミクスを進めている現場を取材しました。
ローカルアベノミクスの柱の1つが観光です。貨物船やコンテナ船が行き交う熊本県の八代港が今、注目されています。その理由は中国などからの観光客を乗せたクルーズ船の急増です。政府は2020年に500万人のクルーズ客を受け入れる目標を掲げています。それを受けて熊本県は八代港でクルーズ船の受け入れ体制を強化する工事を進めています。クルーズ船が使える停留場所は現在1か所しかありませんが、これを2か所に増やし、現在年10隻程のクルーズ船を来年には一気に70隻に増やす目標です。
一方で、旅行客の使い勝手を良くする為に、港湾のクルーズ船受け入れ体制を強化する設備増強、専用ターミナルの建設などが必要との声があるものの、費用負担が発生する地元自治体は「うまく乗れるものなら乗る」と、やや慎重な姿勢です。国が旗を振る観光による地方の活性化にはまだ半信半疑の側面もあるようです。
《熊本県港湾課/弓削真也さん》
「4月の大震災を受けて、阿蘇や熊本城など有名なところが被災した。クルーズ船というのは1つの復興のシンボルになる。どういう内容なのか注視していく。勉強していくというところ。(設備投資については)施策にうまく乗れるものであれば乗らせていただいて、国と協業できれば問うふうに考えている。」
未来投資会議の下でローカルアベノミクスの検討を担う金丸恭文民間議員は「提言だけに終わらず成果が数字で表れるような政策を実現したい。アベノミクスの成果を問われる最後のチャレンジではないか。」と話しました。
デフレの足音 ここにも?
会社員がランチに使う値段の平均が今年4年ぶりに下がりました。町で話を聞くと、500円の予算を定めたり、弁当を持参したりするなどしてランチ代を抑える人も。こうした中、日本マクドナルドは12日から400円の「バリューランチ」を始めました。ハンバーガーの「ビッグマック」もしくは「チキンフィレオ」にSサイズのドリンクが付いたセットです。単品で購入するより50円から80円安くしました。平日の午前10時半~午後2時までの時間限定です。消費者の節約志向が高まる中、外食業界では低価格メニューで対応するなど、デフレの傾向が強まっています。
【「ランチ代は増えたか」、実は株価に連動!?】
アベノミクスの効果もあり、日経平均株価は値上がり傾向が続いてきた。しかし今年に入り「曲がり角に来たのではないか」との指摘もある。そんな日経平均株価の動きに似た動きをするある指標がある。それは男性会社員の昼食代で、これまで景気回復の影響か上昇傾向だったが今年4年ぶりに減少に転じた(出典・新生銀行)。特に20代の落ち込みが大きいという。
【マクドナルドが“ランチ値下げ”、外食で燃える低価格メニュー】
日本マクドナルドが今日から平日のランチ限定で「バリューランチ」(400円)の販売を始めた。「ビックマック」か「チキンフィレオ」にSサイズのドリンクがついたセットで、単品で購入するより50~80円安くした。去年の12月以降、既存店の増収が続く日本マクドナルド。要因の1つがグランドビックマックの様な高価格の期間限定商品が好調だった事だが、今回はランチの値下げに踏み切った。こうした動きはマクドナルドだけではない。回転ずし大手のかっぱ寿司は、今日まで一部の店舗で一皿108円の寿司などを平日は97円で提供。吉野家も4月に牛丼より50円安い豚丼を復活させた。消費者の節約志向が高まる中、低価格メニューで対応する外食業界。今、デフレの傾向が強まっている。
クリントン氏 肺炎と診断
ニューヨークで開かれた同時多発テロの追悼式典を途中で退席した、アメリカ大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン氏が肺炎と診断されていたことがわかりました。主治医によりますと、クリントン氏は肺炎を患っているうえに、式典中は暑さのために脱水症状を起こしていたということです。今後クリントン氏は健康問題を焦点に、共和党の追求を受けるとみられ、大統領選の行方に影響を与えそうです。
韓国国防省 「北朝鮮 新たな核実験の準備」
韓国国防省は5回目の核実験を強行した北朝鮮が、北東部・豊渓里(プンゲリ)にある核実験場の2つの坑道で、新たな核実験を行う準備を整えていると発表しました。こうした中、韓国のアメリカ軍は、きょう、天候を理由に延期したB1戦略爆撃機の韓国上空での展開を明日午前に実施予定であることを明らかにしました。
テスラ 日本でSUV発売へ
アメリカの電気自動車メーカー、テスラモーターズは、日本国内で初となる電気自動車タイプのSUV=スポーツ用多目的車「モデルX」を公開しました。この車の特徴は、後部座席のドアが鳥が羽ばたくように上下に可動し、狭い場所でも簡単に開閉できます。さらに、最上級モデルでは、1回の充電で542キロ走ることができます。今月16日に発売する予定で、日本でも人気のSUVで市場の開拓を図ります。
経団連が決定 来年の“就活”今年と同じ日程に
経団連は、2018年春に卒業する大学生らの就職活動について、企業が会社説明会などを始める時期を「3年生の3月から」とすると決定しました。また、面接の解禁は4年生の6月から、内定は10月からとそれぞれ今年と同じ日程に据え置きました。経団連の榊原会長は、会見で「2017年卒業の就職活動で学生に大きな混乱はなかったため総合的に判断した」と説明しました。
伊藤忠商事が出資する企業 カナダ産豚肉の店を開業へ
伊藤忠商事が49%出資する、カナダ最大の養豚企業が手がけた豚肉を提供する店が東京都内に16日にオープンします。この豚肉「ハイライフポーク」は、開発・生産から流通まで一貫して管理されており、冷めても固くなりにくい柔らかさが特徴です。日本の豚肉の年間消費量は増加傾向にあります。伊藤忠商事は、近年のエネルギー価格の下落などを受け、食糧などの「非資源分野」に力を入れており、今回の出店で日本の消費者にPRする考えです。
スパ&ウエルネスジャパン 国内トップのスパ施設を決定
国内で唯一開催されている、スパ関連の展示会、「スパ&ウエルネスジャパン」がきょうから始まりました。展示会では全国に数あるスパ施設のなかから、一般ユーザーの投票による日本一のスパが発表されました。1位に選ばれたのは、フランス発祥の高級スパ「レスパスヨンカ表参道」です。植物療法を取り入れた、80種類以上の製品を客1人1人の肌質などに合わせて調合。リラクゼーション効果の高い風呂「ハイドロバス」で、代謝を促した上で施術します。価格はマッサージと併せて90分で2万円前後。こうした高級スパを代表とするスパ市場は、現在、7,000億円規模とも言われています。最近では、手軽に利用できる施設も増えてきていて、右肩上がりの成長を続けています。また、訪日観光客の増加で、更なる拡大が見込まれています。
《スパ&ウエルネスウィーク/岡田友悟代表理事》
「これから(訪日観光客数が)3000万人~4000万人となる中で、東京オリンピックまでには、現状の1割から1割5分くらい増えてくると思います。」
■【トレたま】漢字時計
小柳健一さんの本業はタクシードライバーで時計作りは副業。完成までには約10年かかり、100万円を費やした。好きな文字をオーダーメイド出来る。主にインターネットで販売。海外からのオーダーが多いという。
【商品名】漢字時計
【商品の特徴】1時間に1度、漢字が現れる
【企業名】アトリエ自由人
【住所】東京都目黒区中目黒1-1-72
【価格】18万円~
【トレたまキャスター】北村まあさ
■【コメンテーター】梅澤高明氏(A.T.カーニー日本法人会長)
・『AI×医療』、『AI×観光』・・・、ポイントは「掛け合わせ」
--今までもいろいろな会議で試行錯誤してきたわけなんですが、今度こそ(未来投資会議の発足により)成長戦略は前に進みことになるのでしょうか。
「少なくともミクロ分野の司令塔が1つになったというのは大きな前進だと思います。イノベーションを進めようとすると大事なのは、掛け合わせの視点だと思う。メディカルツールイズムという言葉がありますけれども、ここで言っている『医療・介護×地方活性化』、まさに掛け合わせです。それから最近医療分野の大事なイノベーションもAIが大きな役割を担っていて、例えば最近のニュースだと、IBMが作ったワトソンが急性白血病のタイプを10分で診断する事に成功したというニュースがありました。あるいは最近やっぱりこの分野で、細胞の画像から細胞の正常、異常をディープラーニングの技術を使って判定するという研究も進んでいます。これが完成するとファイバースコープで撮った画像で、その場でがん細胞を特定するようなことも、たぶん可能になってくる。そうすると生検をしなくても、あるいは切り開かなくても、ガンが特定できて、治療も大きく進む。というような掛け合わせをどれだけやっていけるか、いうことに本当に注力をしていきたいので、この1つの(未来投資)会議で分科会も4つできますけど、分科会も縦割りではなくて、それぞれから上がってきたテーマを掛け合わせるとどういうことができるか、という議論をする場になって欲しいと思う。」
--掛け合わせというのは、つまりは技術開発というのをどう社会に実装させていくか、ということでもあると思うんですけど、そのためにまず会議で決めるべき、必要なことは何ですか。
「おそらく国がバックアップしている会議ということなので、会議の出口は2つだと思います。1つは特に基礎研究の分野でどういう所に大きな投資を国としてするか。それから、もう1つは民間の投資を促進する為に、どういう規制緩和、規制改革をしていくか。この2つが結局、成果物になってくると思うので、そこに向けた議論をして欲しいと思う。」
・特集 好調レクサス 品質世界一の工場は“感覚頼み”!?
--最終的に人の間隔で品質検査をするわけですけど、それでもまだまだ魅力品質という部分では、何かが足りないのですか。
「感応検査という言葉がありましたけど、お客さんの感応に働きかけるような車作りというのが、特に高級車の場合は大事ですよね。」
--外は何が必要なんでしょうか。
《大浜キャスター》「日本流の高級車の魅力というのをずっと探してらっしゃて、1つはおそらく品質に辿り着いて、これから先のプラスアルファというのをどうやって日本独自というのを考えるんでしょうね。」
・アメリカ、官の役割大きく、基礎技術の発展をリード
--この米企業と民間の連携を強めているというのは、かなり戦略的なものなんですか。
「そうですね。アメリカは本当に民間修道で成長してきたというイメージが強いですが、実は官も相当大きな役割を担ってきているんです。例えば、国防総省にDARPAという組織があります。国防省賞の研究開発を後押しする組織なんですけど、ここは1960年代から70年代にやった研究が実はアーパネットと言われて、インターネットの元々の母体になったものがあります。あるいは2000年代にはこのDARPAが主催したグランドチャレンジというコンテストがあって、これは自動走行車の流れを作り出したコンテストです。2013年からはDARPAロボティクス・チャレンジということで、災害用のロボットのコンテストをやっています。ここから出てきた会社がグーグルに買収されて、グーグルのロボット部門になったりとか、そんなような流れができてきている。官が投資をする、そして民間企業の事業開発を後押しするという連携は、実は昔からあったのかなというふうに思います。」
--日本はそうした官の投資という部分でアメリカに学ぶべきところはありますか。
「日本も相当多くの分野で官が投資をしているのは事実、それから官民ファンドのようなものも、いろいろ作ってきています。ただちょっと戦線が広がり過ぎていて、一個一個が小粒かなという気がします。例えば、AI分野、あるいは医療分野と、もう明らかにこれから伸びていくというところであれば、アメリカだと1000億単位のお金がドーンと付くということがあるんですけど、日本だと100億円単位のものがいくつか付くみたいなことになりがちですね。」
--縦割りの弊害みたいなことがあるんでしょうか。
「例えば、人工知能の分野でいえば、経産省、文科省、総務省、それぞれが人工知能をどう後押しするかという政策を一生懸命に作っていたりする。やっぱり放っておくと縦割りになりがちなので、それをどう束ねて大きな投資にするか、というのが多分課題だと思います。」
・「スパ」はキラーコンテンツ
--日本のスパ市場はいま伸びているということなんですが、この先どうかというところですよね。
「インバウンドで高価格帯のところを伸ばそうというのは、狙いはいいと思いますね。私が1つ着目したいのは、旅館市場の再活性化にどれだけスパを使えるか。旅館市場は1.4兆円くらいなんですけど、横ばいです。スパは7000億円です。旅館はかなり長い時間を過ごしてもらうわけだし、おいしい食事とオモテナシだけではなくて、スパを併設しているところも結構出てきていますけど、これをもっともっとリッチなもの、より素晴らしい体験のものにしていくということができると、旅館の単価も上げていくことができる。これがひいては富裕層の客を東京や京都だけでなくて、地方に連れていってローカルアベノミクスにつなげる事も出来る。」
--さらにリピーターになるかもしれませんしね。
「そうですね。石川県の山代温泉にべにや無何有(ベニヤ ムカユウ)という老舗の旅館があります。かなりモダンなデザインに作り変えて、デザイン自体もとても素敵な温泉旅館なんですけど、ここの東洋医学のフェイシャルとかボディトリートメントとかを組み合わせたようなスパがあって、こんなところって外国人にすごく人気があって、リピーターの方がたくさん来られているようなんですね。温泉があり、東洋医学もありますから、西洋にはなかなか無いようなスパを作っていく。そうすると、もっと実は値段も上げられるんじゃないのかなと思います。今の例で90分2万円ですが、ニューヨークで同じようなものがあったら、たぶん5万円ぐらいします。そのくらい市場があるということです。」