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銃後の妻たち

2012-08-15 21:10:17 | 歴史諸随想

 2010-08-21 23:00付で拙ブログに、戦時中の「捕獲搭乗員殺害事件」や『能崎事件』(佐原事件)を紹介した後、「竹槍で攻撃した逞しい銃後の妻たちに乾杯!」というコメントがあった。このような出来事を挙げ、日本人の全体主義や銃後の妻たちも含めた冷酷さを非難する者も少なくない。そこで私なりに銃後の妻たちについて述べてみたい。

 歴女でもインド・中東史に関心を持つ変わり種の私の結論から言えば、日本の銃後の妻たちの竹槍攻撃など大したことではない。戦争という非常時では女といえども逞しくなるのは当たり前だし、自分たちの住む町を空襲され、敵の搭乗兵を攻撃しない方が不可解ではないか?これがインド・中東ならば確実に惨殺しているし、欧米諸国も似た様な行動をとると私は見ている。日本では竹槍攻撃だったのは鉄を供給させられたためで、もしそれがなければ女でも鎌や鋤のような鉄器で攻撃したかもしれない。
 インド女性といえばサリーを着て淑やか…というのは日本や欧米の男たちの幻想であり(一部いるが)、山の神ぶりでは日本など及ばない。独立運動家に既婚者も珍しくなかったし、英国人官僚を狙撃したテロリストさえいたのだ。

 ドゥルガーはヒンドゥー教の代表的な女神だが、美しくとも戦いと復讐の神でもあり夫もいる。ドゥルガーは絵画や彫刻では獅子(又は虎)に乗り、微笑みながら敵の悪魔を串刺しにする姿で描かれることが多い。21世紀でもこのような怖い女神を崇めているのだから、一般女性も平時でも遥かに日本人より逞しい。
 これに対しギリシア神話の戦いの女神アテナ同様処女神で、一応日本神話の最高神でもあるアマテラスなど何と大人しいことか。乱暴者の弟スサノオを止めることもできず、天岩戸(あまのいわと)に引き籠もる不甲斐なさ。日本ではどうも最高神からして弱弱しい。

 中東世界となれば女でも苛烈である。神学者も神の敵を殺害することは善行が増すと金曜礼拝などで説教したり、聖職者などに煽られた女たちが“異端”を包丁や斧で攻め立てたこともあった。それがムスリムとしての正しい行為なのだから。コーランにも殺人を正当化する文句が見られる。
あなたがたがかれらを殺したのではない。アッラーが殺したのである。あなたが射った時、あなたが当てたのではなく、アッラーが当てたのである(8-17)。

 以上の文章で、インド・中東のような民度の低い野蛮な地域の極例を挙げていると思った方もいるだろう。しかし、西欧諸国も戦時には果たして“文明的”だったのか?2012-06-19付で記事にしたが、伊映画『マレーナ』には終盤ヒロインが町の女たちから集団リンチを受けるシーンがある。殴る蹴るに加え、髪を切り落とされ、ヒロインは町を追われる。
 これはフィクションだが、実際に他国でもドイツ兵と関係した女たちは髪を刈られただけでなく、見世物よろしく町を行進させられた例も少なくなかったのだ。1970年代の北アイルランドでも英国と通じたと疑われた女は、やはり同じような憂き目に遭い、時には裸での行進を強いられることもあったという。

 大日本婦人会も含め戦時中の全体主義体制は戦後一貫して非難され続けたが、戦時中でも“非国民”呼ばわりされた人々へのリンチがあったのだろうか?寡聞にして私は聞いたことがない。ましてインド、中東のように“非国民”は頭から油をかけられ火をつけられた?家族が中にいることを確認したのち家が焼打ちされた?“非国民”の喉笛を切り裂いた?加害者には女もいたが、日本では考えられないやり口だろう。欧米も“非国民”なら身体生命は保障されない。

 日本の場合、せいぜい非国民のレッテルを貼って陰口を叩くか、村八分するのが殆どだったのではないか?やはり日本の銃後の妻たちは諸外国に比べればやはりぬるい。職場の上司の祖母は国防婦人会員だったそうで、戦後その時の活動で様々言われ精神的に落ち込んだという。精神的な安らぎを求め、彼女は創価学会に入信する。戦時は「非常時に!」が口癖だったのが、入信後息子には「信仰が足りない!」と説教するようになったという。

◆関連記事:「日本以外の村八分
21世紀の国防婦人会的現象

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15 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
竹槍訓練 (motton)
2012-08-20 14:08:53
鋤や鎌のような農耕具は供出させられていないのでは。
それらが無いと本当に全く食料生産できなくなりますから。

それに、農耕具より竹槍の方が有効的かもしれません。
農耕具は切れ味は悪いですしクサビの部分が弱く正しく使わないとすぐ壊れます。
反面、竹槍は当たれば出血多量で即死させられますし、いくらでも代りがあります。
森林でゲリラ戦をするならベストの選択かもしれません。

まあ実際は女性に戦わせることは考えていなかったと思いますが、こうした姿勢や特攻隊、硫黄島や沖縄の激戦がポツダム宣言という“降伏条件”を出させ早期の終戦に繋がったと思います。
先日、NHK がまた『なぜもっと早く終戦できなかったのか』とやってましたが、首都が落ちたわけでもなく 100万の陸軍が健在であった国が降伏する方が世界史的には異常だと思いませんか。
(それを望んだアメリカも異常で、その結果ベトナムやらイラクで痛い目に合っています。地続きで強大な敵国のない日米はお花畑な(=幸せな)国家ということです。)

あと忘れてならないのは、こうした『銃後の妻ち』こそが女性参政権を勝ち取ったことです。
WWI 後のイギリスに希土戦争後のトルコなどよ同じです。
女性の参加なくして戦争ができないと認識したからこそ、徴兵の義務のない女性にも参政権を与えています。
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RE:竹槍訓練 (mugi)
2012-08-20 21:50:58
>mottonさん、

>>鋤や鎌のような農耕具は供出させられていないのでは

仰る通りですね。お恥ずかしい限りです(汗)。

>>農耕具より竹槍の方が有効的かもしれません

 この指摘にもハッとさせられました。鉄器の方が切れ味がよいというイメージでしたが、竹槍の方が殺傷力があるとは意外でした。日本なら何処にでも竹林があるし、それがない中東ならば斧や包丁で切り付ける他ない。

 NHKの『なぜもっと早く終戦できなかったのか』は未見ですが、確かに首都が陥落していないにも拘らず、降伏したのは世界史上でも稀かもしれません。貴方のコメントがあるまで、それにも気づきませんでした!ドイツはベルリン陥落で降伏している。WWIのトルコも首都陥落はしていませんでしたが、イスタンブルの特殊性もあるのかもしれません。
 さらに地続きで強大な敵国のない米国も、お花畑国家というのは苦笑させられました。以前にも貴方は米国の“平和ボケ”を指摘していたはず。

 日本の場合、女性参政権は戦後米国によって押し付けられたというイメージがあって、『銃後の妻たち』の貢献も大だったというのは、女である私には思いもよりませんでした。これも『銃後の妻たち』を否定的に描くメディアの影響?
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女性参政権 (motton)
2012-08-21 00:07:26
古代ローマの時代から国防の義務(兵役の義務)に対するたった一つの権利が自分の命を預ける最高司令官を選ぶ権利すなわち参政権だったのですから、その義務を負わない人(女性・子ども・外国人)にその権利を与えるわけにはいかない、というのがWWIまでの一般的な認識です。

しかし、WWIでは女性が国防に参加しないと戦争を遂行できないことが分かって、欧州では女性参政権が自然に認められました。
日本の場合、GHQの関与はありましたが『銃後の妻たち』のおかげで戦前と異なり正当なものとして自然に受け入れられたのだと思います。
(国民皆兵のスイスなんか女性参政権は 1971 ですから。)

徴兵制がなくなり、『代表なくして納税の義務なし』などというお花畑なアメリカの考え方が入ってきて怪しくなっていますが、国防の義務以外には一人一票の普通選挙は正当化できないと思います。(アメリカの考え方だと制限選挙になってしまう。)

また、民主主義(国民主権)というのが参政権だけではなくてそれと表裏一体の国防の権利(自ら身を守る権利)だということや、それはフランス革命の「徴兵制+普通選挙」による国民国家の成立と、名誉革命を受け継ぐイギリスの保守主義の二つの潮流があることなど、義務教育で教えるべきと思いませんか。
(理解するまで、フランス革命で「皇帝」が生まれた意味が全く分かりませんでした。ナポレオンは「皇帝」じゃなくて Emperor の語源 Imperator (最高司令官) なんですね。)
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RE:女性参政権 (mugi)
2012-08-21 21:45:05
>mottonさん、

 仰る通り欧州では、古代ローマから兵役の義務への権利が参政権でした。ローマ皇帝はプリンケプス、ラテン語で「指導者」もしくは「第一人者」であり、他にインペラトール、最高司令官の称号を持っていました。だから「皇帝」の文字を当てはめるのは本来は相応しくない。皇帝とは宇宙の最高神の意味もあり、中国皇帝は文字通り最高神なのです。

 中国以外のアジア諸国も、兵役の義務への権利として参政権が与えられなかったのは共和制でなかったためでしょうか。王の軍隊といったもので私兵にちかいような…

 イスラエルでは女性にも兵役がありますね。これは特殊なケースですが今の所日本では、義務教育で国防のことを教えるのは望めそうもありません。未だに軍事面を考えるだけで、右翼か軍事主義者のレッテルを貼られてしまいます。フェミニスト連中には自衛隊の存在さえ認めない者もいるし、こんな姿勢では将来女性参政権を剥奪されるかも。
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暴れた原因 (トオニ)
2012-08-22 21:50:36
スサノオとアマテラスのウケヒが原因ではなかったかな?
スサノオが姉のアマテラスに挨拶に行ったら高天原で自身とか起こり、侵略と勘違いしたアマテラスが完全武装で迎える。
侵略の意図は無いとウケヒを行ったものの、アマテラスが詐欺みないなことしたのでスサノオが怒って暴れたと。
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RE:暴れた原因 (mugi)
2012-08-23 22:08:12
>トオニさん、

 仰る通りウケヒでアマテラスは詭弁を弄し、スサノオをやり込めています。それでも格上なのだから、暴れる弟を力で封じることもせず、引き籠るのは姉の方。やはり戦いの神ではないんですよね。これがギリシア神話のアテナなら知恵の女神でもあるので、策略を用いて神々を欺く、戦いの男神アレスとも争う…やはり頭も腕もたつ女神です。
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Unknown (トオニ)
2012-08-25 21:51:06
暴れる気の無いスサノオを暴れさせたのでそれを恥じて、もしくは皆にばれるのを恐れて引きこもったというのは自分の思い違いかな?

でなきゃこの引き篭もり女神、現代ニートに祀られそうだ。
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NHK番組 (室長)
2012-08-26 11:18:18
こんにちは、
 NHKの番組を小生は見ました。自分が代表する組織(例えば陸軍参謀本部)という「たこつぼ」の論理、利害、言い分にばかり忠実で、御前会議の場でも、結局「本音での議論をしない、真の統治者としての決断力を示さないい」といった、陸軍、海軍の首脳達の情けなさ。また、彼らの頭の中に「国民の生存、生命への配慮の無さ」とか、「個々の司の範囲で、それぞれが個別に天皇を補佐し、全体的統治者の立場で判断できない高官達」という、明治憲法制度の弱点という視点などで、全体構図が描かれていました。

 現在のCIAに当たる職務のダレスがスイスで日本外交官に接触してきたのに、「謀略かも知れないから」として、この経路による「話し合い」を拒否し、既定の路線である「ソ連による仲介」という王道の外交(??)に固執した外務省の情報担当者の偏屈で、大局観の薄い「判断ミス」などにも触れていたように思う。

 また、欧州各地の武官達が、「ヤルタ密約」によるソ連の対日参戦を何度も警告打電してきていたのに、陸軍参謀本部は、この「不愉快で、都合の悪い情報」を机の下に隠し、天皇陛下はもちろん、海軍、外務省とも情報共有はしなかったという!

 個人的には、もはや勝ち目はないから、講話しかないと、梅津なども感じ、陛下に個人的会話としては「在シナ陸軍の戦力が枯渇していること」などを嘆いているくせに、御前会議の場では、陸軍の利益を守るため、陛下から、そういう軍事力崩壊の事実に言及するように、誘いの言葉が何度もあったのに、断固沈黙して、陸軍の苦境については口をつぐんだという。

 色々聞いているだけで、統治者、当事者感覚の欠如、責任逃れの小役人根性ばかりで、胸くそが悪くなる番組でした。

 mottonさんが仰有るとおり、「首都陥落していない」段階での降伏が難しい、という側面はあるけど、それは大陸諸国の論理で、海洋国家としての日本国では、海軍がほぼ壊滅状態となった段階で、本土決戦などしても勝ち目がないことは自明。やはり、陛下が「自ら全ての責任を担って、聖断して」降伏を決めたのが、唯一の救いと思う。

 原爆投下という事態、ソ連軍南下による北海道を奪われる危機、などの要素も、やはり大陸国とは違う危機感覚となった、といえると思う。

 ともかく、NHKの番組は、会議しても決断できない日本の統治システム、ひ弱で、矮小な日本のエリート達という病根を明白にしたという意味で、小生は評価します。「政治に一切口出ししない天皇制」となった戦後の今、またもや統治システムにおける「主体」欠如という弱点が露わになっていると思う。リーダーシップを誰が担うのか?やはり今のシステムでは総理大臣のはず。強い総理、頼りになる総理を生み出す努力をしないと、国家がもたない。総理を支えるエリート支配階層も必要だというのが、英米の知恵では?
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トオニさんへ (mugi)
2012-08-27 00:10:46
>>暴れる気の無いスサノオを暴れさせたのでそれを恥じて

 うーん、そうでしたか?元からスサノオは気性が激しく、高天原を奪いに来たものと思い、アマテラスは武装で待ち受けていますよね。ウケヒの後、直ちに乱暴を働いたのではなく、暫く高天原に滞在しているからやはり乱暴者の本性が出たのでは?それを畏れて姉は天岩戸に籠った…と思っていました。

 これならば引き篭もり女神だし、仰る通り現代ニートの元祖です。
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RE:NHK番組 (mugi)
2012-08-27 21:51:31
>こんはんは、室長さん。

 ダレスがスイスで日本外交官に接触してきたり、欧州各地の武官達が、「ヤルタ密約」によるソ連の対日参戦を何度も警告打電してきていたのですか?ならば、陸軍参謀本部はもちろん外務省もどうしようもないですね。
 前に記事にしましたが、終戦時のイタリアは国全体で降伏した日本よりも悲惨になったそうです。これもズルく立ち回ったつもりで得意がる、イタリア人の癖が悪い面に出たとか。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/d4172452403f006c26ecefe51a253eac

 それにしても、NHKが何故このような特集を未だにやっているのでしょうね?さらに会議しても決断できない日本の統治システム、ひ弱で、矮小な日本のエリート達という病根は現代にも通じるものです。偉そうに訓辞を垂れているNHKのような国営放送のシステムこそ、それに当てはまりますね。
「たこつぼ」の論理、利害、言い分にばかり忠実で改革も出来ない。だから犬HKと揶揄される。こんなどうしようもないメディアがどれだけ国益を損ねているか…問題ありと見られた報道関係者を攻撃する隣国の方が、ひょっとして健全かも。
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