トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

トルコのデモ拡大の背景は その一

2013-06-26 20:56:59 | 世相(外国)

 始まりがイスタンブルでの再開発反対運動だったトルコのデモが全土に拡大、今の所収まる気配もなさそうだ。このデモの原因を日本のメディアでは、現エルドアン首相の強権性や経済発展に伴う格差の拡大に求めるのが殆ど。しかし、2013年6月5日付けのブログ記事トルコの反政府デモ。シリアの混乱がトルコに飛び火している」の見解は実に興味深い。拙ブログでも「シリア系クルド人」という題で『ブルガリア研究室』さんからコメントを頂いたことがあり、書込みはこう始まっている。

シリアにもクルド人が存在しますね。そのシリア系クルド人(キリスト教系)で、ブルの混乱期に活躍した人物として、Fatik Shabanが有名です。以下に、このFatikと言う人物に関し、02--05年、小生がブルガリアに滞在していた頃の、ブル紙の報道をとりまとめたデータ・ファイルがあるので、ご紹介します。

 私がコメントで関心を持ったのは、Fatikの父の方であり、室長さんのコメントを再び引用する。

2.父親、及び父親の武器、麻薬密輸出業者としての活動
 父親=Ismet Rashid Tyurkmen Shabanは、1941/04/01シリアのHomos町生まれクルド人、キリスト教徒だった。あだ名ではGolemiya Fatik、或いはStariya Shaban、と呼ばれた人物。60年代初頭トルコに移住、この頃63年IstanbulでFatikが誕生。その後60年代半ば、「ブ(ルガリア)」に亡命。
 ジフコフ時代にブル秘密警察(DS)が中東への武器、合成麻薬密輸に利用した人物。 父親は元来「ブ」共産党シンパとして、DSの中東諜報機関網設立に協力していたので、トルコの秘密機関に逮捕されないようにDSが身柄を引き取った(政治亡命、「ブ」市民権付与)と言われる。
 その後「ブ」国内で父親はDS系のKinteks社(武器、麻薬を扱ったDS傘下の商社)に協力して中東への密輸網を樹立した。父親は、ジフコフ家に直接外貨を献金していたと言われる。

3.自由化直後の父親の活動
「変革」後、父親は、「ブ」銀行から特別に5千万ドル相当の融資(4.8億Lv)を得て、Sunimeksというガチョウ養鳥農場(フォア・グラ製造のため)を設立した。Yambol商業銀行、Bobovdol銀行は、ディミータル・ポポフ(Dimitqr Popov)首相の命令で同社に融資したが、返済が無く倒産の憂き目を見た。94年Sunimeks社も倒産。なお、同社の債権は、露・ユダヤ・マフィアのマイケル・チョールニ(Maykql Chorni)が買い取ったという。

 Fatik父親が、トルコ滞在中にしていたことは、上記記述にあるように、ブルDSに協力して、中東地域におけるクルド人の人脈を駆使した、DS諜報網を築き上げることらしい。やがて、トルコの諜報機関に活動がばれ始め、DSがShaban家の安全保障のために、身柄を引き取り、ブル国籍を与えた、ということ。
 Shaban家は、クルド人諜報網を、合成麻薬、武器を中東地域に密輸出する経路としても使用して、ブル国に外貨収入をもたらすと同時に、自分たちも外貨収入を得て、これら収入の一部をベイルートの銀行口座などに隠匿していたと思う…

 今回のトルコのデモ騒動にブルガリアやその秘密機関、協力者クルド人は無関係のはずだが、室長さんのコメントにある中東諸国とバルカンの関係は、宗教や民族が入り乱れる地域に相応しい。ブルガリア諜報機関がシリア系クルド人を活用したように、トルコやシリアのそれにもクルド人が確実にいるはずだ。Fatik父の名に“Tyurkmen”とあってもクルド人というのも面白いが、国を持たない民族は各国の諜報活動にもってこいなのだ。室長さんのコメントだけで、日本のメディアでは報じられない国際政治の複雑さが知れよう。
その二に続く

よろしかったら、クリックお願いします
人気ブログランキングへ   にほんブログ村 歴史ブログへ



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
内向きのアメリカ (室長)
2013-06-27 15:32:53
こんにちは、
 小生の過去記事を扱っていただきありがとうございます。今回のトルコのデモ、小生にも必ずしもわかりませんが、一つ気になっているコメントをどこかで読みました。
 いわく・・・今のオバマ政権は、ブッシュ政権が過剰に世界で介入を広げたための、軍事費の膨張から手を引いて、米国経済を復興する方向に舵を取り、このため、世界情勢では、「世界の警官役」を放棄しているという。

 実は、シリアのアサド政権は、ゴラン高原を侵略し、抑えているイスラエルに対して、寛容で、・・・つまりこれまでは米国にとっても、それなりに中東における「隠れユダヤ・シンパ」として、役に立つ政権だったし、今後も、アサド政権崩壊後のスンニ派躍進、アルカーイダの躍進、などを考えると、米国としては、シリアにおける反政府勢力勝利は、必ずしも米国にとって有利な情勢とはならない、という。

 トルコのデモは、ブルでは、トルコ国内の反イスラム主義、世俗派による「反抗」の動きとの見方、「民主主義擁護派」の戦いという称賛の声、などがあると思う。しかし勝利する展望は小さいように見える。

 また、今のブルにおけるデモは、「反マフィア」「マフィア支配の政治への抗議」という側面が強いものの、総選挙を繰り返しても、事態の改善見通しは無いと見られていて、将来展望は明るくない。

 いずれにせよ、世界各地での動きに、将来展望とか、先行きの目標が見えない動きが多すぎるという特徴が見られる。結局、米国が介入していないし、米国が前向きの方向を示していない、そういう各地のデモも、方向性が乏しく、事態改善方向が見えない。
 混迷のみのような気がする。
返信する
RE:内向きのアメリカ (mugi)
2013-06-28 22:20:26
>こんばんは、室長さん。

 私の方こそ興味深い情報を有難うございました!おかげ様でネタにできましたし、改めてバルカンとの繋がりの濃さに驚きました。国政政治の舞台裏の諜報活動、殊にバルカンについては一般に知られませんが、ブルも相当強かで感心させられます。

 私もオバマ政権が、「世界の警官役」を放棄しているという話を聞きました。表向き欧米のメディアはシリアを「ならず者国家」と叩きますが、アサド政権崩壊後のシリアに安定政権が築けるとは思えません。イスラム主義政権になれば困るのは欧米諸国てはないでしょうか。イラクや「アラブの春」の国々も混迷が続いていますよね。

 トルコのデモにブルでも、「民主主義擁護派」の戦いという称賛の声があるとは面白いですね。確かに民主主義ではトルコが先輩。しかし、エルドアンに代わる指導者も出にくいし、欧米諸国の支持もありデモは最終的に尻すぼみになりそうな気配です。同じくブルのデモも展望は明るくないとは考えさせられます。

 世界各国でデモが起きており、控え目ながら日本でも「愛国デモ」が起きています。例によって他国のデモは讃えても自国のそれは貶しつけるのがマスコミですが、他国でも事態改善方向が見えないのも確かですね。超大国の失墜は群雄割拠の時代にもなり、紛争が増えそうな気配です。
返信する