2019年02月26日付だが、「【宗教】研究者訪れる中国・福建省の「マニ教村」」という記事を先日見かけた。何と福建省の人口700人ほどの上万村は、マニ教徒の村というのだ。かつては世界宗教だったものの、その後はキリスト教やイスラム教、仏教などの世界宗教から迫害を受け、消滅したと思われていた宗教である。
しかし、研究者が現地を訪れても信仰形態は如何わしく、「肝心のマニ教経典400点は、すべて文化大革命の際に破壊したとのこと」とある。この研究者とは青木健氏だろう。青木氏による「中国・福建省の「マニ教村」を、マニ教研究者が訪ねてみた」というコラムがあり、マニ教を研究する好事家研究者は至って少ないはずだから。
先の記事から、青木氏の著書『ゾロアスター教史』(刀水歴史全書79)を思い出した。この本には揚州の郊外の村には、ゾロアスター教徒の子孫と称する集団が居住していることが載っている(206-7頁)。彼らは確かに善悪二元論を伝承しているし、火を拝む儀式を行っていたと主張するのだが、具体的な物的証拠は文革で全て失われたというのだ。その故、ゾロアスター教起源の教えであるとの明証を欠く、と著者はいう。
先祖からの言い伝えや民謡には魅力的な要素は多々あるらしいが、もしかすると、それらは周辺の村落の儒教の亜流かもしれない、と青木氏は推測する。物的証拠が全て文革で失われたというのは、マニ教村と同じパターンなのだ。
揚州郊外の波斯庄の中央広場には「中波友誼」なる記念碑がある。ある中国人学者によると、ここは唐代または元代に移住してきたゾロアスター教徒の子孫の村という。この説を信じたイラン政府が友好記念碑を建て、中国語サイトにもその画像が載っている。
青木氏は自ら記念碑の写真を撮って著書に載せていたが、「しかし、物証がまったく存在せず、村人の伝承だけに依拠した結論なので、さらなる検証が必要と思う」と注釈をつけていた。
「中波友誼」のような記念碑を建てるのは結構だが、その資金をイラン政府に負担させたのだから、中共政府のしみったれぶりには改めて感心させられる。尤もイランではケチと見られるのは面子に関わるので、中国側がそれに付け込んでいたことも考えられる。何だかイラン政府はコケにされたようにも感じた。「友好」のおだてに弱いのは、日本人だけではないのだろうか?
インドにはパールシーのように正統なゾロアスター教徒の子孫が健在でも、「印波友誼」などの記念碑はない。パールシー自らグジャラート州南部のサンジャーンに上陸記念碑を建設してしまったから。
唐代の中国にはソグディアナ、ペルシア(現イラン)からゾロアスター教徒が多数来ていたが、彼らに関する記述は15世紀以降の文献には見られないそうだ。インドと違いカースト制の無い中国ではすっかり同化、溶解してしまったと考えられている。ユダヤ人さえ中国で同化したと言われる。
揚州の郊外の村に居住する集団が、もし本物のゾロアスター教徒の子孫だったとしても、容貌はかなり漢族化しているはず。ユダヤ人と同じく、基本的に同教徒とのみ結婚するゾロアスター教徒だが、周囲に同胞の異性がいなければ現地人と婚姻するようになるのは当然だろう。
回族は漢族との混血が進み、すっかりモンゴロイド風の「平たい顔族」となってしまったが、彼らは同化せず、現代まで存在しているのは興味深い。文革時には回族のモスクやゴンバイ(聖人の墳墓)が大々的に破壊されたことが、『回教から見た中国-民族・宗教・国家』(張承志著、中公新書)に載っている。
果たして福建省の「マニ教村」や揚州の「ゾロアスター教村」がホンモノなのか、素人には判らないが、あの中国政府のこと、真実か確かめるのではなくプロパガンダに利用するだろう。毛沢東はこう言っている。
「芸術のための芸術、階級を超越した芸術、政治から切り離されたり独立したりした芸術などというものはない」
同じことは学問や教育にも言えよう。捏造はお手の物だし、政治から切り離されたり独立したりした学問など、中国の学界であるはずがない。現地を調査した青木氏の一文は意味深なものがある。
「(イラン学者から見れば)厄介な中国的現実の上に、さらに厄介な共産主義的現実が上塗りされていたようである」
◆関連記事:「ゾロアスター教史」
「ゾロアスター教の興亡」
「マニ教」
「回教から見た中国(中公新書)」
福建省のマニ教村には近年キリスト教の布教が及び、信者を急増させているそうです。英国系のプロテスタント教会が中心にせよ、この分では昔のようにキリスト教に追われかねませんね。
そして、こちらは様々な解釈ができるイラストです。ある意味大阪らしい会社と言うべきでしょうか。 https://twitter.com/ishiimark_sign/status/1134795941746102272
安田峰俊氏の名は初めて知りました。安田氏と在日中国人作家・劉燕子氏との対談サイトがありますが、劉氏はとあるノーベル賞作家を「普段は民主主義を口にして「世界市民」を標榜しているのに、中国の弱者や民主化運動に対する理解も関心はほぼゼロ」と批判しています。他にも彼女は日本のリベラル派に厳しい意見を述べていました。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50479
強権・独裁体制でも中国とロシアは違いますよね。基本的には欧米にコンプレックスと憧憬を隠せないロシアと、中華思想の前者では価値観が違うのでしょう。
株式会社石井マークという会社も初耳ですが、このようなセンスのある大阪は羨ましい。東北人には絶対無理です。
いや普通にどういう経緯で生き残ったのか知りたかったのですが何とも実に中国らしい偽装事件で笑いましたwww。
そういえば90年代に解放軍偽装事件という
詐欺事件があり1個師団(約1万人)全員が
偽物(新設師団との名目で駐屯)で物資を受けとり
利権を貪った事件がありました。
彼の国では数百人数千人の偽装集団なんてわけなく
作り出せるでしょう。
'90年代の解放軍偽装事件は初めて知りました。いかにも彼の国らしいですが、その種の横領は21世紀でも絶えないでしょう。
こちらは今回の香港デモに関するツイッター。なりふり構わず政府はネット攻撃をしているとの事。
ttps://twitter.com/bot99795157/status/1139330386440273920
こちら、中国人の奥方をお持ちの方。いろいろなもどかしさを感じておられるようです。
ttps://twitter.com/KEUMAYA/status/1138409923207843841
ttps://twitter.com/KEUMAYA/status/1139014806273503232
中国では何もかもスマホで決済できて便利ですが、逆に政府に情報がすべて抑えられるため、何かあった場合の行動は非常に制限されるのですね。日本政府にはいろいろ言いたいこともありますが、政府に反対した際の本場物の弾圧はやはり寒気がします。
https://www.afpbb.com/articles/-/3230038
中国政府は二次創作も弾圧しますが、日本のコミケには中○派が出店していますから(極左暴力集団の参加の是非はともかく)、日本は隣国と比較してありがたい環境だと思います。
リンク先のツイートにはネットだけではなく、短波放送も妨害している様子が載っていますね。なりふり構わず韓国や中共を擁護する日本語のツイートやブログも結構ありますが、日本もネット攻撃は無縁ではないのが恐ろしい。
井上純一氏のツイートに意味深なレスがあります。
「安倍独裁とか普段から吠えている知識人やメディアほど何もいわない。なぜなら日本政府の批判はいくらやっても絶対に身の安全は保証されているから」
中国社会のキャッシュレスを称賛、それに対し日本は遅れている…と腐す知識人も多いですよね。しかし、政府の徹底した個人情報管理に好都合という側面は無視している。完全な1984の世界にしか思えません。
AFPサイトで「テクノロジー通の若者たちが「デジタル断ち」」と述べられているのは重いものがあります。テクノロジーが発達した分、全盛期のソ連よりも管理が進んでいる。今のところ日本はマシな環境にありますが、それが何時まで続くのでしょう?アジア諸国で対抗出来そうなのはインドくらい?
とは言うものの、グーグル翻訳が謎の誤訳を起こす現象は不気味で仕方ありません。英語→日本語ならある程度分かりますが、馴染みのない外国語は騙されてしまうでしょう。個人行動の範疇を越えています。
ttps://twitter.com/bot99795157/status/1139778466100830208
>アジア諸国で対抗出来そうなのはインドくらい?
インドはIT大国ですがあれも異質な文化圏ですし、どこまで身を入れて取引できるか、と言う問題が出てきそうです。ただ、国家として外国のネットにまで手は伸ばさないでしょう。
香港の警官も荒っぽいので、デモ隊が警官を襲うケースはあると思います。ただ、本土の官憲が香港の警官を装っているという話もあるし、そのような画像を流してデモ隊=暴徒という宣伝は行うでしょう。天安門事件の時もデモ隊が陰で豪勢な食事をしているという、画質の悪い映像がありました。
リンク先のレスにもありますが、中共ならば人海戦術で事実をねじ曲げるくらいのことは朝飯前でしょう。1984に準えている人もいましたね。
既読かもしれませんが、河野外相のツイートに対する香港人からの反応を取り上げたサイトがあります。中国シンパらしき者のコピペコメントも結構あります。
http://kaigainohannoublog.blog55.fc2.com/blog-entry-3099.html
中国人「どうして世界のみんなは中国のことを嫌うんだ?」もありますが、やはり大朝鮮と呼ばれるに相応しいものです。
http://www.all-nationz.com/archives/1074895651.html
インドも異質な文化圏ですが、核保有と人口は最大の強みでしょう。今のところインドは国家として外国のネットに手を出していないと思いますが、隣国に対してはやりかねません。