藤本ひとみさんの小説『ハプスブルクの宝剣』の冒頭、ユダヤ教のラビ(祭司)は信者にこう語りかける。
-キリスト教徒たちがキリストと呼んでいる男の腰巻をまくって見るがよい。そこにはまがう方なき割礼の痕が、ユダヤ人としての証があるはず…
昔読んだユダヤジョーク集でも、ユダヤの少年が「キリストはユダヤ人」とクリスチャンに誇らしげに言っているものがある。キリスト教徒が人口の1%足らずの日本なら、「キリスト=ユダヤ人」説はすんなり受け入れられるだろう。しかし、欧米人キリスト教徒はこの事実を認めたがらないようだ。
題は失念したが、ナチス宣伝大臣ゲッベルスの青年時代の手記が載っている本を読んだことがある。彼の両親は敬虔なカトリックだったというが、教祖への解釈が特異で歪んでいると感じた。ゲッベルスは「鞭を持ったキリスト」のイメージを当てはめ、「キリストは峻厳にして仮借ない…キリストはユダヤ人ではない、ユダヤ人であるはずがない!」と書いていた。
非クリスチャンで不信仰な私だが、「鞭を持ったキリスト」の解釈は不可解であり、そんな人物ではなかったのは聖書からも明らかだ。これがハイデルベルク大学で文学博士号を取得したインテリのキリスト像か、と皮肉な感想を抱いた。
正確に言えば、キリストは元ユダヤ人と言った方が相応しいだろう。ユダヤ人として生を受けたが長じて新興宗教を説き、それが正統派ユダヤ教への冒涜と見なされ、処刑される元になる。自らをユダヤ人の王と名乗り、「神の子」またはメシアであると自称したこと自体、この上ない重罪であり、死をもって償うべき大罪に当たる。生き神様や聖者を信仰する多神教世界なら自称「神の子」でも問題ないが、一神教なら絶対に許されない。ただ、ユダヤ教へのアンチテーゼとして成立したキリスト教ゆえ、聖典の一部も共有しており、ユダヤ文明とは離れられない運命となったのだ。
私は西欧史に関しては世界史の教科書以上の知識はない上、西欧におけるユダヤ人とキリスト教徒との関係には全く浅学だ。しかし、最近ある疑問を感じている。ユダヤ人が常に西欧で迫害されていたというのは、誇張され、歪曲された伝説ではないか、と。迫害があったことは史実だし、間違いでもない。だが、常に迫害対象なら人口も激減せず、キリスト教圏からさして亡命しなかったことへの説得力に欠けるのではないか。何もユダヤ人ばかりが亡国の民ではない。一昨年8月にも書いたが、ローマに滅ぼされる以前からユダヤ人は海外移住が盛んだったのだ。むしろ、繁栄する異民族、異教徒の都市に積極的に居住していたのがユダヤ人。
世界に分散したとされるユダヤ人だが、奇妙なことに多神教圏にはあまり来ないのだ。インド、中国では迫害などせず、絶好の居住地となるにも係らず、この2大文化圏でのユダヤ人ほど影の薄い移民もない。異教徒にはよく言えば寛容、別の見方では無関心ゆえに、共に反ユダヤ主義など存在しなかった。富は都市にあるため、印中両国のユダヤ人も都市を中心に住むが、西欧、中東のような一神教圏と異なり、商売も振るわない。インド最大の商都ムンバイ(旧ボンベイ)にもユダヤ人はいるが、彼らよりずっと後に移民してきたパールシー(インドのゾロアスター教徒)最大の居住地でもあり、対抗も出来ない始末。インドの大半のユダヤ人はイスエラル建国の際、この国に移住したという。中国のユダヤ人は現地人と同化した。
イスラムの成立もまたユダヤ教ならびキリスト教なしではありえなかった。教祖はアラブ人にせよ、より大きな影響があるのはユダヤ教であるのが、コーランからも伺える。この聖典もまたユダヤ教のそれと重なる。イスラムでも真の預言者として認められるのはムハンマドを除き、イブラヒーム(アブラハム)、ヌーフ(ノア)、ムーサー(モーセ)、イーサー(イエス)など、全てユダヤ人である。イスラム圏でもユダヤ人は差別と制限は受けるも、西欧より地位は高かった。
ホロコーストへの拭い難いトラウマから、イスラエルに居住しているユダヤ人の間でも未だに「反ユダヤ主義」が世界で蔓延していると信じたい心理があり、メディアであらゆる手段を駆使し「反ユダヤ主義」キャンペーンを行う。逆にそれが本物の反ユダヤ主義を煽っているのだが、興味深いことにイスラエルより欧米に移住するユダヤ人の方が比較にならないほど多いのが実態なのだ。これが意味することは、“反ユダヤ主義”が蔓延る欧米がより住み心地がよいとなる。しかも最も人気のある国はドイツ。
キリストがユダヤ人だったことで、得をしたのはむしろユダヤ人かもしれない。まず国を滅ぼしたローマに復讐が出来、その後の歴史観も大きく変わる。聖典も共有しているため、ユダヤの教義に共感を持つ者も少なくなかったのだ。宗教的基盤を共有しなかった多神教圏での振るわなさと好対照である。イエスは意図しなかっただろうが、非ユダヤ人に容易く絡める宗教を創設したのは確かだ。
◆関連記事:「ディアスポラ-離散」
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-キリスト教徒たちがキリストと呼んでいる男の腰巻をまくって見るがよい。そこにはまがう方なき割礼の痕が、ユダヤ人としての証があるはず…
昔読んだユダヤジョーク集でも、ユダヤの少年が「キリストはユダヤ人」とクリスチャンに誇らしげに言っているものがある。キリスト教徒が人口の1%足らずの日本なら、「キリスト=ユダヤ人」説はすんなり受け入れられるだろう。しかし、欧米人キリスト教徒はこの事実を認めたがらないようだ。
題は失念したが、ナチス宣伝大臣ゲッベルスの青年時代の手記が載っている本を読んだことがある。彼の両親は敬虔なカトリックだったというが、教祖への解釈が特異で歪んでいると感じた。ゲッベルスは「鞭を持ったキリスト」のイメージを当てはめ、「キリストは峻厳にして仮借ない…キリストはユダヤ人ではない、ユダヤ人であるはずがない!」と書いていた。
非クリスチャンで不信仰な私だが、「鞭を持ったキリスト」の解釈は不可解であり、そんな人物ではなかったのは聖書からも明らかだ。これがハイデルベルク大学で文学博士号を取得したインテリのキリスト像か、と皮肉な感想を抱いた。
正確に言えば、キリストは元ユダヤ人と言った方が相応しいだろう。ユダヤ人として生を受けたが長じて新興宗教を説き、それが正統派ユダヤ教への冒涜と見なされ、処刑される元になる。自らをユダヤ人の王と名乗り、「神の子」またはメシアであると自称したこと自体、この上ない重罪であり、死をもって償うべき大罪に当たる。生き神様や聖者を信仰する多神教世界なら自称「神の子」でも問題ないが、一神教なら絶対に許されない。ただ、ユダヤ教へのアンチテーゼとして成立したキリスト教ゆえ、聖典の一部も共有しており、ユダヤ文明とは離れられない運命となったのだ。
私は西欧史に関しては世界史の教科書以上の知識はない上、西欧におけるユダヤ人とキリスト教徒との関係には全く浅学だ。しかし、最近ある疑問を感じている。ユダヤ人が常に西欧で迫害されていたというのは、誇張され、歪曲された伝説ではないか、と。迫害があったことは史実だし、間違いでもない。だが、常に迫害対象なら人口も激減せず、キリスト教圏からさして亡命しなかったことへの説得力に欠けるのではないか。何もユダヤ人ばかりが亡国の民ではない。一昨年8月にも書いたが、ローマに滅ぼされる以前からユダヤ人は海外移住が盛んだったのだ。むしろ、繁栄する異民族、異教徒の都市に積極的に居住していたのがユダヤ人。
世界に分散したとされるユダヤ人だが、奇妙なことに多神教圏にはあまり来ないのだ。インド、中国では迫害などせず、絶好の居住地となるにも係らず、この2大文化圏でのユダヤ人ほど影の薄い移民もない。異教徒にはよく言えば寛容、別の見方では無関心ゆえに、共に反ユダヤ主義など存在しなかった。富は都市にあるため、印中両国のユダヤ人も都市を中心に住むが、西欧、中東のような一神教圏と異なり、商売も振るわない。インド最大の商都ムンバイ(旧ボンベイ)にもユダヤ人はいるが、彼らよりずっと後に移民してきたパールシー(インドのゾロアスター教徒)最大の居住地でもあり、対抗も出来ない始末。インドの大半のユダヤ人はイスエラル建国の際、この国に移住したという。中国のユダヤ人は現地人と同化した。
イスラムの成立もまたユダヤ教ならびキリスト教なしではありえなかった。教祖はアラブ人にせよ、より大きな影響があるのはユダヤ教であるのが、コーランからも伺える。この聖典もまたユダヤ教のそれと重なる。イスラムでも真の預言者として認められるのはムハンマドを除き、イブラヒーム(アブラハム)、ヌーフ(ノア)、ムーサー(モーセ)、イーサー(イエス)など、全てユダヤ人である。イスラム圏でもユダヤ人は差別と制限は受けるも、西欧より地位は高かった。
ホロコーストへの拭い難いトラウマから、イスラエルに居住しているユダヤ人の間でも未だに「反ユダヤ主義」が世界で蔓延していると信じたい心理があり、メディアであらゆる手段を駆使し「反ユダヤ主義」キャンペーンを行う。逆にそれが本物の反ユダヤ主義を煽っているのだが、興味深いことにイスラエルより欧米に移住するユダヤ人の方が比較にならないほど多いのが実態なのだ。これが意味することは、“反ユダヤ主義”が蔓延る欧米がより住み心地がよいとなる。しかも最も人気のある国はドイツ。
キリストがユダヤ人だったことで、得をしたのはむしろユダヤ人かもしれない。まず国を滅ぼしたローマに復讐が出来、その後の歴史観も大きく変わる。聖典も共有しているため、ユダヤの教義に共感を持つ者も少なくなかったのだ。宗教的基盤を共有しなかった多神教圏での振るわなさと好対照である。イエスは意図しなかっただろうが、非ユダヤ人に容易く絡める宗教を創設したのは確かだ。
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>しかし、欧米人キリスト教徒はこの事実を認めたがらないようだ。
2つ前のエントリーにもコメントしたとおり、キリストの父祖はアブラハム(イブラヒーム)に辿れることが、新約聖書巻頭のマタイ伝には第1章第1節から延々と書き連ねられています。mugiさんのご記入のとおりゲッベルスが思考していたとすれば、彼は新約聖書のマタイ伝(ルカ伝も)を否定しなければならなくなる。しかしローマカトリックは、いわゆる戦前戦中、ナチドイツと「提携」していたことは、相互にいがみ合っている複数のプロテスタントから指摘されており、ゲッベルスの思考に賛同していたか、少なくとも黙認していたことになる。となれば、ローマカトリック自体もキリスト教の聖典新約聖書を表向きは「聖典」として尊重しながら、ホンネでは「虚構」としてさげすんでいたということだろうか。ならば、16世紀の宗教改革で聖書が広く庶民に頒布されるのを狂気といえるまでに弾圧したのも、「情報公開」を恐れたからだと理解はできる(納得はしないし、もちろん支持も与えないが)。
>世界に分散したとされるユダヤ人だが、奇妙なことに多神教圏にはあまり来ないのだ。
>興味深いことにイスラエルより欧米に移住するユダヤ人の方が比較にならないほど多いのが実態なのだ。これが意味することは、“反ユダヤ主義”が蔓延る欧米がより住み心地がよいとなる。
中世ヨーロッパでは、ユダヤ人はゲットーに押し込められていて、不自由な生活を強いられたというが、なぜその程度で済んだのかは興味深いところ。今でも共産支那のチベットやウィグルは、確実に民族として「絶滅」するように支那共産党が仕掛けているというのに、その程度で「迫害」とは随分と「ヌルい」気がする。ヨーロッパの当時の権力者は、ユダヤ人を「生かさず殺さず」搾取するノウハウを身に着けていたとも考えられる。その中世封建社会を「市民革命」で覆し、ユダヤが欧州史の前面に出てきたのが「近代化」の過程だったとすれば、今の南北問題はユダヤが作ったといえるかもしれない。
「ビバリーヒルズ90210」の初期の頃(すなわち邦題では「ビバリーヒルズ高校白書」のシーズン)、主人公たちの所属する高校で、黒人とユダヤ人(その子孫が主人公たちの一人で成績優秀なアンドレア)が激しく対立するという一話があるが、黒人の子孫には、正しく自らの「ルーツ」が子孫に語り継がれていて、ヨーロッパ近代化の過程でのアフリカ植民地化と奴隷貿易の根本原因はユダヤにありと「叩き込まれて」成長してきたとも考えられる。
ところで、ユダヤ人やもちろん日本人よりもアメリカで社会の底辺をなす黒人たちから嫌われたのは、実は朝鮮人。ユダヤ人や日本人はもちろん「ワスプ」ではないので、黒人居住区で商売をしながら経済力をつけ、やがて黒人居住区を去っていったが、黒人たちは寂しがってもユダヤ人や日本人を迫害したりはしなかった。しかし「ロス暴動」の際の朝鮮人は、姿かたちは日本人と見分けがつかないはずなのに、黒人の略奪暴力の標的にされた。それは、朝鮮人の黒人に対する差別意識があまりにも露骨だったからとされる。彼らに朝鮮の字はふさわしくない。正しい字を授けるべきである、「超賎」と。
仰るとおり聖書をちゃんと読めば、キリストはアブラハムの子孫でユダヤなのに、ゲッベルスが何故上記のように結論付けたのか、不可解です。しかも、秀才のはず。自分の満たされない願望が投影されたのかも。
英国人作家フレデリック・フォーサイスの小説『オデッサ・ファイル』にも、戦後、ナチ将校の海外逃亡を手助けしたカトリック聖職者「紅はこべ」のことが記されています。フォーサイスはおそらく英国国教会(プロテスタント)信徒だと思いますが、カトリックはナチと「提携」していたのは有名ですね。ムッソリーニのイタリア・ファシストとも友好的でした。
あるイタリアに詳しい女性のHPを見たことがありますが、インノケンティウス何世だったか、「キリストは自分自身も救えなかった無力な男だ」と言った法皇もいるとか。ただ、庶民には聖書を「知らしむべからず」に徹しましたね。
中世ヨーロッパに限らず、イスラム圏も異教徒毎の居住区があり、ゲットーは特異なものではありませんでした。
私は欧州の権力者は金儲けの上手いユダヤを必要としており、一方的な搾取より互いに利用しあっていた関係だと想像しています。ユダヤ側も金の力で権力者を操ることも出来たはず。共産圏はまさにジェノサイトであり、アメリカのインディアン保護区もそれに近いと思います。
古くから商才に長けたユダヤは奴隷商人としても敏腕でした。英国の小説やイランの伝説にも奴隷商人として活躍するユダヤ人が登場します。そのくせ、旧約聖書でエジプトで自分たちは奴隷としてひどい扱いを受けていたと記載する。イスラム圏でも奴隷商人として活躍したのは確かでしょう。植民地でユダヤは買弁として白人に協力したのは華僑と酷似している。
ユダヤも'65年のワッツ暴動で襲撃対象になりました。日系人も戦争中に収容所送りにされる前後、家を襲撃されたり掠奪を受けたりしています。黒人対白人で括られがちですが、実はマイノリティがさらに弱そうなマイノリティを襲撃する傾向があるようです。最近急増しているヒスパニックと黒人も不仲とか。前者は白人より黒人の方が威張ると言っています。
ただ、朝鮮系移民はアメリカに限らず何処でも悪評高く、移民を制限されてますね。東南アジアでの振舞いといい、黄色い“ユダヤ人”ではないでしょうか。
ワッツ暴動 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%83%E3%83%84%E6%9A%B4%E5%8B%95
キリストがユダヤ人かはどうかはさておき、多神教の国にはユダヤ人が少ない、という考察、とっても勉強になりました!というより、ユダヤ人が勢力を拡大できるのは、キリスト教文化圏だからこそということですか?
専らキリストがユダヤ人だということで、キリスト教徒に対して彼らの選民思想を満足させ、心理的支配を強めることから、実際的な支配を獲得しているのかも。
読みながら、隣国を思い出してしまいました。黄色いユダヤ人。納得です。幸い頭脳やスケールが比べ物にならないくらい小さいですが。彼らの特徴は、ユースタス・マリンズが指摘する、悪魔性と寄生性ですよね。繁栄する都市や国に潜り込む、被害者利権を永遠に主張する、奴隷貿易やヤクザで富を得る。ホントよく似てる・
近代、ユダヤ人が勢力を拡大できるのは、やはりキリスト教圏若しくは欧米の植民地でした。聖書を見ると古代社会でも世界方々で影響力があったようです。ただ、聖書はユダヤ人のご都合主義的神話の面もありますので、針小棒大気味の粉飾があると私は思います。
ユースタス・マリンズの名は知りませんでしたが、検索してみたら興味深いサイトがヒットしました。かなりキリスト教優位思想も感じられますけど。
http://www.h2.dion.ne.jp/~apo.2012/EustaceMullins.html
隣国の件ですが、“ニダヤ”と揶揄されるように、ネットではユダヤは“ニダヤ”を使い、日本を関節支配させているという話が見られますね。“ニダヤ”にもキリスト教徒が多く(俗にウリスト教)、現に日本のマスコミの状況から陰謀論と一蹴できません。